「プ〜。買い物行きたいんだけど一緒に来てくんない?」

「はぁ?なんでだよ」

「今日近くのスーパーでお一人様一箱限りでお醤油が安売りしてんのよ。重いし一緒に来てくれると助かるんだけどな〜」

「猫撫で声出すなよ気持ち悪い!大好きなお隣さんに車でも出してもらえばいいだろ」

「アーサー今日からニ、三日出張するらしいよ。やっぱりお偉いさんは色々忙しいんだろうね〜」

「へぇ」

「へぇじゃねーよ。買い物付き合えって言ってんだよテメェ」

「今から俺このDVD見なきゃなんないんだよ。早く本田に返さねーと悪いだろ」

「貴様本田さんのDVDをダシにしやがってぇえええ!!」

「ふっ。てめぇが本田には弱いって事よーく知ってんだよ俺様は」

「ちくしょぉおお!!」



本田さんのせいでお醤油一箱損した上に重い荷物を自分で持つ羽目になってしまった

いや…本田さんに責任は無いけど、彼が親指を突き刺して「グッジョブです!!」と言っている姿を思い出して腹が立ったのでこの際本田さんのせいにしておこう。



―――



「えーっと、醤油はどこだー?」


ついでに晩御飯の買い物もしなきゃなぁ。
うーん…一人で持って帰れるだろうか…
いざとなったらギルを電話で呼び出して無理矢理来させるしかないな。


「あの、すみません。今日安売りしてるお醤油って何処にあり余すか?箱買いの奴」

「…あ。」

「あ」


この間の挙動不審な店員さんだ。
吃驚した顔で私を見て固まっている。
相変わらず変な人だなぁ、この人


「あのー」

「へ!?あ、すんません…」

「あははー。こんなやりとり前もしましたよね」

「え?あ、あははー!!俺緊張してもて頭がパニックになってもて…。えっと、お醤油でしたね!!すぐ持ってきますさかい!」

「あぁ、わざわざ持ってきてくださらなくてもー…って行っちゃったよ!!走るの早っ!」


恥ずかしがな店員さんなんだろうか。
ほんのり顔が赤かったな〜
初々しくて可愛いじゃないか


「はい持って来ましたで!!」

「あはは…ありがとうございます」

「えっと、重たいやろうしレジまで運びますわ!!」

「え、迷惑ですしいいですよ!」

「迷惑やなんて!!俺がやりたいんやからやらせて〜!」

「は、はぁ…。それじゃあお願いします」

「よっしゃぁああー!!」


なんか変わった人だな…
でも悪い人では無さそうだ。

レジまでお醤油を運んでくれた店員さんは「あの、良かったらこれ家まで運びましょか?」と、おずおずと尋ねてきた。
流石に面目ないので「いえ、大丈夫ですのでもう持ち場に戻ってください」と丁重に断ったが「あぁ、俺もう上がりやさかい大丈夫やで〜!」と眩しい笑顔で返された。

天然というか、空気読まない人だなこの店員さん…




「へぇ〜。アントーニョさんってスペインの人なんですかー。凄いなぁ」

「まぁこっちに住んでる時間のが多いけどなぁ。でも生粋のスペイン人や!!フルネームはアントーニョ・フェルナンデス・カリエドっちゅー名前や」

「長っ!!長いよ名前!!」

「トニーでええよ〜。なんやったらダーリンとか呼んでくれても全然構わんし」

「こっちが構うってソレ。でもバイト掛け持ちで生活してるって偉いねぇ。忙しくない?」

「貧乏生活が性に合ってるからなぁ。一回ちゃんと職に就いたこともあったけど自分には全然向いてないと思ったわ」

「自由きままに仕事したいんだね。なんか羨ましいなぁ〜そうゆうの」

「名前ちゃんは?今学生さんか何かやってんの?一人でお醤油買いに来るなんて偉いなぁ〜」

「…」


トニーさん、私のこと高校生か何かと勘違いしてませんか…?


「あの…私これでも一端の24歳です…」

「嘘ぉおお!?え!?嘘やろ!?」

「そんなに童顔かな、私…。それとも服装が子供っぽいのか…?化粧しておくんだったなぁ…」

「いや〜ビックリしたけど安心したわ〜!!」

「へ?」

「だって高校生ぐらいやと思ってたから俺ロリコン趣味なんやと自負しててん」

「大丈夫、本物のロリコンはもっと凄いから」


本田さんに比べればこれぐらい可愛いものだ。


「あ、ここが私のマンションです」

「へぇーええとこ住んでるなぁ〜!!俺ん家なんかトイレ共同の四畳半で近くに線路通ってるからめちゃくちゃ揺れるねんで〜。たまにどっからか猫侵入してくるねん!おもろいやろ〜!」


リアルすぎて笑えません。


「良かったら上がってください。お茶とお菓子でも」

「(男を家に上げるって事は彼氏はおらんと思ってええんやろか?)んー、じゃあお言葉に甘えて上がらせてもらうわ〜」

「へいへいどうぞー」

「おじゃましまーす!うひゃー中広いなぁ!!なんやええ匂いするなぁ〜流石女の子の部屋!」

「芳香剤の匂いです」

「流石女の子やな〜」

「いや、意味わかんないですから。その辺で適当にくつろいでてくださいねー。今お茶入れますから」

「ん〜。悪いなぁ〜」


出会ったばっかの人家にあげちゃってまたアーサーに怒られそうだな〜
まぁトニーさんいい人だし大丈夫だよね
それにギルもいるし安心安心…

あ、そういえばトニーさんに居候が居るってこと言ってなかった…!

慌てて伝えようと口を開いたが、私の言葉に覆いかぶさるように大きな声が部屋中に響いた。


「トニーさ「ななななっなんでお前が居るねぇええええーーーーん!!!


ギルベルトを指差して叫ぶトニーさんと、目を丸くしているギル。

え?何?どうなってんのコレ


「なんでギルが…!!!」

「あっアントーニョ!?なんでお前こんなとこに居んだよ!?」



誰か、この状況を説明してください…






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