「名前さん、携帯鳴ってますよ!」

「ん?ありがとティノ君。誰からだろう…」


デスクの上に放置されていた携帯をティノ君から受け取り携帯を開いてみると、そこには”サディクさん”の文字が。
あわわわ…!!サディクさんの携帯から…!!


「も、もしもし!!」

『よぉ、嬢ちゃんかい?たった今お前さんに頼まれてたダチのアパートの修理終わったぜぃ』

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

『まぁ話は会ってからって事にするとしようやぃ。今日そのアパートまで来られるかぃ?』

「はい!!あ、でも仕事の後になっちゃうんですけど…」

『構わねーぜ。ダチ連れてアパートまで来いや!腰抜かすほどの出来栄えだからよぉ!!』

「本当ですか〜!!それじゃあトニーさんと一緒に行かせていただきますね!!本当にありがとうございます!」


うわぁ、とうとう修理が終わったんだ!!
色々がたがきてるから改修するのも大変だ〜みたいな事言ってたのにもう終わらせちゃうなんて、さすがサディクさんのとこの職人さんは違うなぁ…!


「あれ、名前さんなんだか嬉しそうですね〜」

「うん!ちょっとね〜」

「ふふふ。名前さんが嬉しそうだとこっちまで嬉しくなっちゃいますよ〜!!ねぇスーさん」

「んだなぃ」

「おめぇらベタベタやってねーで仕事さし〜!!」

「はーい」



――――




「トニーさ〜ん!!」

「あー、名前ちゃんや〜!!仕事お疲れさーん!!」

「トニーさんもバイトお疲れ様でした〜!」


いつもより少し早めに会社を出てトニーさんと駅で待ち合わせをした。
今からトニーさんのアパートに行って…。
うん、充分約束の時間には間に合うよね


「はぁ〜…とうとうアパートの修理も終わってもたかぁー」

「やっぱり寂しくなっちゃうよねぇ。荷物は明日にでも運ぶ?」

「そやなぁ。ちょうど明日やすみやし。なんやかんや買い足すもんもあるから買い物もしてー…。アパートに戻るんは明後日になりそうやな」

「いよいよって感じだよねぇ。トニーさんの晩ご飯が食べられなくなると思ったら悲しいよ…!!」

「名前ちゃん…!!ど、どうせならアパートで二人一緒に暮らそか!?」

「いや、ギル放っておいたら餓えるからね!!それじゃあ私も明日はお休みもらってトニーさんのお引越し手伝おうかなぁ」

「ほんまに〜?名前ちゃんが居てくれたら心強いわぁ」

「本田さんとフランシスさんにも手伝ってもらおうか」

「それええなぁ〜」


二人でのんびり歩いて行くと、次の角を曲がるともうトニーさんのアパートに差し掛かる所だった。
ちょっぴりドキドキしながら恐る恐る角をまがると、屋根だけが目新しいアパートが見えた。


「うっわー!!すごっ、治ってるぅうう!!」

「良かったねぇトニーさん!!頑丈にできてるみたいだしもう嵐が来ても飛んでいかないよ!!」

「そやなぁ!!これで雨の日の雨漏りからもオサラバやーっ!!!」


してたんだ…雨漏り。


「よう嬢ちゃん!」

「サディクさん!!」

「どうでい、出来栄えはよぅ!!屋根の他にも色々がたがきてたから補強しておいてやったぜぃ。内装は変わっちゃいねーが所々修復して、まぁ前よりは住みやすくなってると思うんだがな」

「おおきに仮面のおっちゃーん!!」

「おっちゃんって言うんじゃねぇえ!!」

「ほんま凄いなぁ〜!!中も見てええか!?」

「おうおう入りやがれ!!ちゃーんと使える家電なんかはそのままにしておいてあっからよぉ」

「ゆーでも冷蔵庫と電子レンジしかなかってんけどなぁ〜アハハハ」

「トニーさん…」


以前は錆ついていた階段も補強されていてしっかりとした足場ができていた。
部屋の中は前と変わっていないものの、壁に空いていた穴なんかが塞がっていて床の腐っている部分も板を張替えてった。


「すごいわぁ…ここからな、ここからビューって冷たい風入ってきてほんま寒かってん…」

「良かったねぇトニーさん…!!」

「ほんまええ仕事してくれるなぁ仮面のおっちゃん…!!」

「ったりめーよぉ!!ちぃとばかし手間取ったが丹精込めて修復しておいたからもう風が吹いたぐらいで吹っ飛んでいかねーぜぃ!!」


トニーさん嬉しそうだなぁ。うん、本当に良かった。
こんなに良くしてくれたサディクさん達にも感謝しなくちゃなぁ…。
皆さん凄い職人さんだよ。


「サディクさん、本当にありがとうございました。またおってお礼させていただきますね!」

「よせやい、こちとら仕事でやってんでぃ」

「だけど何からなにまで良くしていただいてますし…。誠意には誠意でお返ししたいです」

「そーかい。じゃあ嬢ちゃんに真心篭った手作り料理でも食わせてもらおーかねぃ」

「え!?」

「女の手作り料理なんざもう何年も食っちゃねーなぁ…。これでももうちっと若い頃はモッテモテで腐るほど女も寄ってきてたんだぜ!!ガハハハハ!!」

「えぇ、えーっと、そんなもので良ければ何時でも家にいらしてください!!はい、いつでも!!」

「おう!!楽しみにしてんぜぃ!!」


うわぁあああ!!う、うわぁああ!!
サディクさんが私の作った料理を食べてくれるって…!?
どどど、どうしよう…!!私の料理なんかが口に合うのかなぁ…
こうなったら練習してサディクさんに食べてもらえるような料理を作れるようにしないと…!!


「あれ、どないしたん名前ちゃん。ごっつ嬉しそうやなぁ〜!」

「え!?あ、アハハハー!!それじゃあそろそろ帰ろうかートニーさん!!それではサディクさんさようならー!!」

「名前ちゃぁああん!!!そっちマンションと逆方向やでぇえええ!?」


トニーさんのアパートにサディクさんの事、今日はとってもいい日だなぁ…!!
家に帰ってルンルン気分で鼻歌を歌いながら夕食を作っていると、不審な目をしたギルに「お前きもい」と呟かれたのでいつもよりビールを1本少なくしておいた。
アーサーの所にトニーさんのアパートの件を報告しに行くと何やらくるりと背を向けてガッツポーズをしていた。
…そんなに嫌いか。

そういえば明日は七夕なのかぁ…。
短冊、まだ書いてなかったっけ。
明日の夜ギル達と一緒に書いてベランダの外に飾っておこう。
天気予報は晴れだって言ってたけど、空が明るい都会じゃ天の川は見られないよなぁ…。
昔はよく見てたんだけど、ここからじゃちょっと無理だよね。
まぁ晴れれば織姫も彦星も会えるんだしそれで良いじゃないか。
明日はトニーさんの引越しもあるし何かと忙しくなりそうだなぁ。
フルに体動かして頑張らないと!!


「よーし!!頑張るぞー!!」

「なんだよ急に。鼻歌歌ったり急に独り言言ったりして…。あぁ、あれだな。お前もう歳だぜ歳!!ケセセセ」

「七夕の夜は笹の葉とギルをベランダの外に出しておかないとねぇ…」

「俺が悪かった」


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