いったいこいつは何がしたいんだ

昨夜いきなり帰ってきたかと思うったらぐーすか寝てやがるし、おまけにアルフレッドにお姫様抱っこされてやがるし。
「HAHAHA!!ヒーローがヒロインを抱える時はこれじゃないとダメなんだぞぉ!!」とご機嫌なそぶりで笑うメタボ野郎から無理矢理あいつを奪い取って、とっとと追い返してやった。
ソファーまで運ぶとトニーの奴が心配そうにしゃがんで、愛しそうに名前の前髪をかきわけながら「おまじないかけたろな。ふそそそそそ〜」なんて意味の分からない呪文を唱えた。

それから状況のつかめないままその辺で横になってたらいつの間にか寝ちゃってて…

起きたらなんでか名前が横で添い寝してやがった。
ここ床なのに。
こいつ昨日のドレスのままで薄着だし。
なんかドレス肌蹴てるし。顔近いし。


「んー…何、もう朝?」


まじまじと名前の顔を見つめていると、少し眩しそうに顔をしかめて薄っすら目を開けた。
やべぇ…こいつ抱きしめてぇ…


「うお…なんで私床の上で寝てんだ…。おまけに昨日の記憶薄いんですけど…」

「あのメタボが抱えて帰ってきたんだよ。ったく何やってたんだテメェ」

「お酒飲んで眠くなってダディーが…」

「何の事か理解できねーっての。あいつの家泊まればよかったんじゃねーの?」


うるせぇーと小学生のガキみたいに無邪気に笑った後に頬を抓られた。
それから頭ぐりぐりされて、まったく意味がわかんねぇぜ


「あーやっぱ普通が一番。地べた最高」

「なんでお前俺の横で寝てたんだよ」

「さぁ?トニーさんは…もうバイトに行っちゃったのかなぁ。私の体だけタオルケットかけてあるし、きっとそうだよね」

「俺はどうだっていいのかよあのトマト野郎…!!」

「さてと…ベッドで寝なおすかなぁ〜。昨日ずっと緊張してたから疲れちゃったよ」

「俺も床の上だったから寝た気がしねーぜ〜」

「じゃあ一緒に寝るか。ふっかふかのベッドだよ〜」

「寝る。一緒に寝る」

「マジでか。じゃあ着替えるからちょっと待っててね」


冗談で言ったつもりがマジになりやがった。
って、やばくねぇか?俺様ピンチ?
なんかもう体だるくてストッパーいくつか外れてんぜ、今。
”着替えるから待っててね”とか、なんかエロいし。
本当にどうにかなりそうだ


「ギルおいでー。こうなったら夕方まで寝てやろうぜー」

「おう」

「あーふかふかのベッド気持ち良いー…このままベッドの底まで沈みたいよー」

「なんだよそれ」

「ちょっとギル、もう少しそっち行ってよ。狭いじゃん」

「シングルサイズなんだから仕方ねーだろ〜」

「まぁいいか。そんじゃ、おやすみー」


布団も掛けずにベッドの上で俺に背を向けるように丸まった名前は幸せそうに目を閉じた。
俺も眠い…。だけど眠られない…
なんていうか、勿体無い気がするぜ。
もう少しこいつの寝顔見てから眠るとするか



「ギルベルトー」

「んだよ」

「ピヨちゃんはー?」

「まだ寝てると思うぜ」

「そっかー…」

「そう」

「ギルー」

「なんだよ」

「アルフレッド君の家すっごいセレブだったよー。なんかもう、ハリウッドスターの家みたいな」

「へー。やっぱバカね持ちだろあいつ」

「なにそれ」

「プップクプー」

「ばぁーか」

「バカじゃねーし」

「ねぇギル」

「んだよ」

「抱きしめてもいいですか」



返事を返す前に腕が勝手に動いてた。

ぎゅっと名前の体を引き寄せて、バクバク煩い心臓を抑える事なく背中に押し当てて。
くそ、すげぇ可愛い。可愛いすぎんだよアホ。


「いや、抱きしめてほしいんじゃなくて抱きしめたいんだけど」

「空気読めよアホ!!」

「だって今すっごい幸せだし…ギル抱きしめてぇーってなったし」

「お前もう寝るんだろ」

「寝るけどさ。寝るけどさぁ〜」


半分眠りの世界に入りながら喋ってるくせに何言ってんだ。
どうせ目が覚めたとき今の事覚えてないんだろうな、こいつは。
だったら色々してやりたい事は山ほどあるけど

まぁ、今はまだこのままでいいか。



「あーもう寝る。眠り世界まであと5秒前ー」

「無理矢理喋ろうとすんなよ」

「んー…あー…いー…」

「寝ろって」

「んーー…」



寝た、かな。

腹にまわした腕が上下に動く。うん、これもう寝てるぜ。きっと。

俺もそろそろおやすむか…
今日の抱き枕は抱き心地良すぎるぜー
絶対良い夢見られる。
起きた時こいつの笑顔とビールとヴルストとじゃが芋があったらもう他には何も要らねー
うなじにキスを落とすとキュンと胸が痛んだ。
うおお、なんだって俺こんな…


「ギル苦しい…」

「ってまだ起きてたのかよぉおお!?」

「うっさいなぁ耳元で叫ばないでよー…あーうざい。ちょっと離れて。できれば3メートルぐらい」

「三メートルも離れたらベッドじゃねえ、そこは床だ!!」

「うるせぇ…ここは私の城だ。ベッドで寝たいなら私の睡眠を邪魔すんじゃねえ」



ちくしょぉおお!!やっぱさっきの無し!!
可愛くねえこのアホ女ぁああ!!
いつかぎっちょんぎっちょんににて「ギルが居ないとダメなのっ!!」ってすがりつくようにしてやるんだからな!!
ちくしょぉおお!!


「なぁにやってんだか…まぁ放っておいていいか。おやすみーギル」

「ちくしょう!!アホ!!アホ女!!」

「うっぜえ〜」



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