「ねぇギル、本当に行かないの?」

「行かねーっての。今日は一日ゲーム三昧だぜ!!」

「電気代馬鹿になんないから程ほどにしてよね。晩ご飯作っておくからチンして食べるんだよ?いつもの事ならが火は極力使わない事!!使う時はちゃんと注意してよね」

「お前は煩い母親かよ!!あーもううぜぇから早く行け!!」

「殴るよ?」

「ごめんなさい」


本日はアルフレッド君とマシュー君のお誕生日パーティーの日。
誕生日パーティーって言っても私が慣れ親しんでいる庶民染みたものではなく、超セレブなパーティーらしい。
急な事で着ていく服やプレゼントを用意できなかった私だったけど、なんとかアーサーの手助けで乗り切れそうだ。


「さーて。どの服にしようかなぁ…」


朝早く出かける前のアーサーに数着のパーティードレスを渡された。
っていうかこれ全部買ってきたの!?
すっごい有名なブランドのマーク入ってるんだけど…!!
あの金持ち眉毛…!!


「ギル、どの服がいいと思う?」

「んあー?って、なんだよこの露出高いの!!ダメだダメだ、父さんは許しません!!」

「なんでいきなり親父面!?だってあのアーサーが選んできたんだから仕方がないでしょーが」

「あいつに選ばせんなよ!!ったく…」


テロテロとした生地のドレスを持ち上げたギルはじっと私を見つめてから手に取ったドレスを後ろに放り投げた。


「ああああ!!何やってんだテメェエエエ!!これいくらすると思ってんの!?一着ん十万
するよこれ!!」

「知るか!!あの眉毛が買ってきたんだろ!?」

「アホォオオ!!これ一着であんたの欲しいゲーム100本買えるわぁああ!!」

「はぁああ!?ちょっ、ありえねぇええ!!」

「分かったらそんな粗末な扱いすんな!!ああもう、皺になったらどうすんのーこれ…」

「お、これなんか普通で良いんじゃね?こん中じゃ一番ましな方だぜ」

「って聞いてねーし。じゃあそれで良いや〜。さっさと着替えて準備しちゃおう」


ドレスを着ていつもより気合を入れて化粧でもすればそれなりに見えるだろう。
確か3時にアーサーが迎えに来てくれてるって言ってたよね…
それからプレゼントを買って…5時からのパーティーには充分間に合いそうだ。

まれよこれよと準備を済ませて玄関の外へ出るとアーサーとフランシスさんが玄関先で喧嘩をしていた。
こんな日に何やってんだこいつらは…!!
一喝してやると、しゅんとなるアーサーに対して私の肩を抱き今日は一段と可愛いだとか口説き文句を述べるフランシスさん。
ハンドバッグでおもいっきり後頭部を打撃し変態を撃破すると、「お前躊躇いないよな…」とアーサーが顔を青くした。
しばらくして本田さんもやってきて少し時間に余裕をもって出かける事になった。


「ギル一人にして大丈夫かなぁ…」

「夜にはカリエドも帰ってくんだろ?余計な心配してねーでさっさと車に乗れ」

「はいはーい」


まぁ私もあまり遅くならないように帰れば大丈夫かな。

二人へのプレゼントを購入してしばらく車を走らせるとなんとも大きな家が建ち並ぶ住宅街へ差し掛かった。
その中でも一際大きく聳える豪邸。
ご丁寧に表札には”ジョーンズ”の文字。
もしかしなくてもここが彼らの自宅なわけなのだ


「で、でかぁあああ!!」

「でかってなんだよ!!大きいと言え!」

「でかぁああああ!!」

「落ち着いてください名前さん、私も驚いているところです。いや、これは本当に…でかぁああああい!!」

「ん〜もう結構人集まってきてるなぁ〜。おっ素敵なマドモアゼル発見!!」

「ナンパしようとしてんじゃねえ!!ほら、あいつらのとこ行くぞ」

「ちょっ、ちょっと待ってアーサー殿!」

「殿!?」

「なんか緊張してきた…!!私場違いじゃん!!あああもう帰る!!帰ってギルとイチャイチャするぅううう!!」

「何言ってんだよ馬鹿ァアア!!帰らすか、もう一生帰さねえ」

「うおおお!!パーティーよりこっちの方が興味津々ですよぉぉおう!!!!」

「お前らもうちょっと大人しくできないのかよ〜。俺まで同レベルだって勘違いされるだろ」


いや、だってさっきからすれ違う人達どこかで見たことあるような人達が多いしさ…!!
場違いにも程があるよ…!!


「ほら、心配しなくても大丈夫だから行くぞ」


アーサーにエスコートされジョーンズ家に入ると、そこはもう異次元の世界だった。
なんだこれ、どこのお城?


「これはまた…素晴らしい内装ですねぇ…!!名前さんの素敵な姿を納めるために持って来たカメラが役に立ちました。何かのネタにつかえるやもしれませんね…」

「本田さん…あなた本当に図太い根性してますね…」

「ノーノー。ピクチャーダーメダ〜メ〜」

「えぇ!?写真はダメですか!?ダメなんですか!?」


近くに居たサングラスをかけたSPらしき外国人にカメラを取り上げられる本田さん。
うわぁ、あんなに悔しそうな顔の本田さん始めてみたよ…


「あれ、フランシスさんが居ない」

「理由は言わなくても分かるだろ」

「美人なお姉さんの所ね〜。まぁいいや、アルフレッド君とマシュー君どこかなぁ…」

「多分どこかでちやほやされてるはずなんだけどな…。あぁ、あそこにアルフレッド居たぞ」

「ほんとだ。囲まれてるなぁ…。って、あの人たちテレビで見たことある人ばかりなんですけど…」

「あぁ、政界のお偉い方やセレブの連中かな…。俺も挨拶しに行かないとな」

「待ってぇええ!!私を一人にしないでぇええ!!」

「なっ…!!菊が居るだろ!?」

「なんか好きなアイドルが来てたらしくて追っかけに行っちゃったよ!!」

「マジかよ…ったく仕方ねぇな…」

「あー!!名前!!名前〜来てくれてんだな!!とっても嬉しいんだぞぉおおお!!」


人の波を書き分けてこっちに走ってくるアルフレッド君。
って、皆見てるから!!皆こっち見てるから!!
ああもう帰りたい、帰ってギルとトニーさんとお笑いクイズ番組見ながら誰が一番回答できるか競争みたいな庶民染みたことがしたいよぉおおお!!!


「名前?おーい、大丈夫かい?」

「え、あ、うん、大丈夫じゃないです」

「HAHAHA!!大丈夫じゃなくても今夜はとことんつきあってもらうぞ!!」

「いや、もう私帰るから!!こんな場所一般庶民の居る場所じゃないと思うんだよね!?帰ってこたつにみかん食ってる方がお似合いだからさ!」

「もう夏だぞ名前!!あ、それもしかしてプレゼントかい!?」

「がっつくなよアルフレッド」

「煩いなーアーサーは。もう名前の事は俺に任せていいから挨拶にでも行っておいでよ」

「な〜んか癪だが仕方がねえ…。名前、アルフレッドから離れんなよ!!変な奴に声かけられても無視すればいいんだからな!!」

「え、ちょっ、アーサー…!!」


この場に私を置いていかないでよ…!!
周りのお客さん達はこっち見てるし…
もうこうなったら自棄だ。女は度胸。こんな時こそ胸を張っていれば良いんだよ!!


「はい、アルフレッド君誕生日おめでとう!」

「ありがとう名前!!とっても嬉しいんだぞ!!」

「マシュー君はどこ?」

「あの、名前さん…僕さっきからここに居ますけど…」

「え!?あ、ごめんマシューくん…!!あはははー…。はいこれ、プレゼント」

「ありがとうございます…!」


周りの人たちが派手な衣装着てるからマシュー君が目立たなかったよ…
今夜の主役なのになぁ…





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