「名前!!はいこれ、招待状なんだぞ!」

「なにこれ…!!」

「何って、明日の俺達の誕生日パーティさ」


仕事帰りに呼び出されたいつもの某ハンバーガーショップ。
来るなり渡された、これまた高そうなカード。
ていうか、今なんと言いました?


「毎年俺達の誕生日は自宅でパーティーやってるんだよ。ダディーの知り合いも沢山来るんだぞ!!まぁ彼らの目的は俺達じゃなくて、いつもは忙しくて日本に帰ってこないダディーと話をするのが目的なんだけどさ。って、そんな事はどうでもいいんだぞ!!もちろん君も来てくれるよな!?」

「ちょっと待ってアルフレッド君、そんないきなり言われても!!それにそんなお偉いさんの集まりみたいなパーティー恐れ多くて行けないよ!!」

「大丈夫さ!大学の友達も居るんだぞ!だけど何故かいつも入り口まで来て帰っちゃうんだよなぁ皆〜」


それって…そういう事だよね、うん。
こんないきなり…それももの凄いパーティーに誘われて「はい行きます」なんて軽々しく言えるはずが無い
っていうか明日がアルフレッド君とマシュー君の誕生日だなんて事忘れちゃってたよ…


「友達何人でも連れてきてもいいからさ!!君に来てほしいんだ、俺は!!」


行かないわけには、いかなそうだ。




―――



「ああもうどうしよう!!何着ていこう!?ったくもーこんな時に限ってアーサー居ないし!!あの役立たず!!エロ!エロ眉毛!!眉毛ボンバーマン!!」

「ボンバーマン!?ったく何慌ててんだよ…」

「大丈夫や、名前ちゃんはどんな格好でも他のだれよりも可愛いで〜」

「ちょっ、トニーさん素で照れるからその台詞は!!」

「え…あっ、ご、ごめんな…!!なんか自然と口に出てたって言うか、なんちゅーか…」

「い、いいの、大丈夫!!」

「って甘ぁあああい!!何ですかこの空気!!ダメ、ダメですこんな甘々なの!!」

「トニー死ねトニー死ねトニー死ねトニー死ねトニー死ね」

「ギルゥウウウ!!!何呪文みたいに唱えてんの!!ダメでしょ友達の事死ねとか言っちゃぁ!!」

「フランシスさん、ちょっと胸糞悪いのでベランダからバンジージャンプしていただけませんか」

「なんで俺!?ちょっ、菊目が据わってるぅうう!!」


家に帰るとそこに居たのは案の定いつもの馬鹿4人組。
最近やたら仲がいいんだよねぇこの4人は…。
奴らに構ってなどいられない私はパーティーの事を相談しようとアーサーの家に訪れたのだがが返事はなく、着ていく服も決まらず途方に暮れていた。


「アルフレッドとマシューのバースデーパーティーだろ?お兄さんも行くよ〜」

「うそ、フランシスさんも招待されたの?」

「いやぁ、俺は顔パス」

「招待されてないんですね」

「いや、違うの違うの!!アルフレッドはともかくマシューはそんな子じゃないから!!ちょっと忙しくて俺に招待状送るの忘れてただけだから!!」

「へぇ…。あ、そうだ。アルフレッド君が友達つれて来ても良いって言ってくれたんですけど、トニーさんと本田さんも一緒に行きません?」

「ごめんなぁ〜。俺明日スペイン語スクールのバイトやねん。生徒のおばちゃんらがクッキー作ってきてくれるー言うてたからなぁ〜」

「そっかぁ…」


トニーさんはおばさんに人気があるらしく、いつも生徒のおばちゃんやスーパーのパートのおばちゃん達にお菓子やら飴やらをポケットに突っ込まれるらしい。
なんともトニーさんらしいと言うか…


「本田さんはどうです?」

「私は特に用はありませんが…。そのような場所は私向きでは無さそうですね」

「だったら私も同じですよー。本田さんが居てくれれば心強いんだけどなぁ…」

「名前さんにそう言われてしまったら仕方が無いですね…。私もご一緒させていただきます」

「やったー!!」

「おいこら、俺には聞かないのかよ!!」

「聞かずともギルは一緒に行ってくれるんでしょ?」

「行かねーよ。めんどくせぇ!!」

「留守番するの?パーティー夜だから一人で晩ご飯食べてお風呂入って寝なきゃなんないんだよ?」

「小学生じゃあるまいしそれぐらい一人でできるっつーの」

「行こうよ。減るもんじゃあるまいし」

「まぁまぁ名前ちゃん。ギルなんて放っておいてお兄さんと一緒に行こうよ〜。楽しい甘い一夜を約束するよ…?」

「黙ってください髭。その下半身使い物にならなくしますよ?」

「おう…今なんか背筋ゾクゾクした」

「ハァハァ名前さん、私を蔑んでください!!」

「さーて、晩ご飯の準備準備」

「良いです!!良いですよ名前さぁあああん!!!」


ギルのやつ、何か行きたくない理由でもあるのかな…。
まさか文化祭の時の事をまだ根に持ってるとか…?いや、そんなに女々しい奴じゃないか。
ギルが居ないと不安だなぁ…色々と。


「名前ちゃん、携帯鳴ってんで〜!」

「え?誰だろう。ありがとうトニーさん」

「どういたしまして」


トニーさんから携帯を受け取り画面を開いてみると、どうやらアーサーからの着信のようだった。


「もしもし?」

『よぉ。お前今日アルフレッドに招待状貰わなかったか?』

「そうなんだよ〜。行かないわけにもいかないしさぁ…。だけど急すぎて服も決まらないしプレゼントも用意してないし!!助けてよアーサー!!」

『分かったから落ち着け!!俺はまだ帰れそうにないからな…。服は適当なの用意しておいてやるから明日俺の部屋来い。プレゼントはパーティーに行く前に買えばいいだろ』

「了解しました。本当に助かります」

『ったく、俺が居なかったらどうすんだよお前』

「うるせーやい。でもどうして今日はアーサーは帰るの遅くなってんの?」

『あぁー…ほら、あれだ。明日はあいつら二人のパーティーって言ってるけど実際は重役達の集まる貴重な機会だからな。色々と準備があんだよ』

「うわぁ…やっぱりそうなんだ。なんだか私なんかが行ってもいいのか不安になってきた」

『アルフレッドもマシューも楽しみにしてんだから行ってやれよ。明日は俺も色々忙しくて一緒に居てやれないかもしれないけど…。ふらふらしてて変な奴に連れて行かれたりするなよ!!』

「行かねーよ。どんな心配してんだお前は。それじゃあ仕事頑張ってね。張り切りすぎてぶっ倒れんじゃねーぞ」

『そんなヤワじゃねーよ馬鹿。それじゃあな』


ぷつんと電話の切れる音を確認して携帯の画面を閉じる。
相当忙しいのかなぁ、今。
いつものアーサーは相手が電話を切るまで切らないから。
滅多に日本には帰って来ないらしいアルフレッド君とマシュー君のお父さんが帰って来るんだもんね。時期社長候補としては色々とやらなくてはいけない事があるのかもしれない。


「アーティーちゃん何だって?」

「なんですかその呼び方」

「んー?あいつがまだ小さい頃はこうやって呼んで可愛がってやってたんだよ。今この呼び方したら半殺しにされるけどさ」

「そうなんですか。今度呼んでみよう。アーサーは明日の準備で色々と忙しいみたいですね。私が明日の準備できてないって言ったら服は準備しておいてやるって。プレゼントは行く途中で買えとの事らしいです」

「おやまぁ…。それは楽しみですね」


その後もフランシスさんがアルフレッド君の家の凄さを身振り手振りを交えて語っているのを料理をしながら聞き入った。
なんだかよくテレビでやってるセレブの人のお宅みたいなイメージがあるなぁ…
いや、それ以上かもしれない。

缶ビール片手にクレヨンしんちゃんを見ているギルはフランシスさんの話に興味がないようだった。
パーティーも行きたくないって言うし、何かあったのかと思ったけどそうでも無さそうだ。拗ねてるわけでもなさそうだしね。
まぁお土産でも買って帰れば喜んでくれるだろう。
ともかく明日は忙しい一日になりそうだからなぁ…。
早く起きて準備もすませておかないと。

プレゼント、何にしようか…


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