「こんばんは名前さん。気の抜けたTシャツ姿も素敵ですね。それに加えてうさぎさんプリントのエプロンとはなんたる事でしようか。流石は我等が名前さんです、ウィーアー!!!!」

「帰れ」


何が入っているのは想像もしたくないリュックサックを背負い、よれよれのジーパンにチエックのカッターシャツ。中にはアニメの絵が描かれたTシャツを着た本田さんはいつもの清らかな笑顔で親指を立てた。


「いやぁ、少し秋葉原の方まで行っておりまして。これ名前さんにお土産です」

「わぁ!わざわざお土産なんて…まぁ上がってくださいよ本田さん!今晩ご飯できたところですから食べてってください!」

「ありがとうございます。とても現金な子に育ってくれて爺は嬉しいですよ」


本日一番の笑顔を本田さんに向けると目にもとまらぬ速さで首からぶら下げた一眼レフカメラのシャッターを押された。
まぁお土産に免じて許してやろう。


「こんばんはギルベルトさんにアーサーさん。おや、何を作ってらっしゃるのですか?」

「七夕の飾り。ったく、疲れて帰って来てんのにこんなの作らせやがって…」

「いいじゃん。どうせ今は暇なんでしょ」

「七夕ですか…。風流ですねぇ」

「おい本田!!アキバ行ってきたんだろ!?」

「あぁ、そうでした。ギルベルトさんにもお土産が…」

「マジかよ!!」


あんなに喜んじゃって…
今ならギルの頭に耳とお尻に尻尾が生えてるように見えるよ。
ギルわんこ…。やべっ可愛いかも


「ギルベルトさんにはエヴァ初号機のプラモです」

「マジかよ!!ほ、本田…!!」

「ギルベルトさん…!!」

「お、おい名前。あの二人見詰め合ってるんだが…」

「ほうっておけばいいと思うよ」

「おっと失礼いたしました。アーサーさんにはこれを」

「お、俺にもあるのか…?」

「勿論ですよ」

「わ、悪いな…。ありがとう」

「いえいえ。アーサーさんと名前さんのはお揃いなんですよ」

「おそろっ…!?なんでだよ本田!!」

「お二人に似合いそうなものがありまして、つい…」


似合いそうなもの…?なんだろう、服…?


「開けてもいいですか?」

「あ、俺も…」

「いいですよ!!勿論です!!」

「それじゃあ…」


本田さんが息を荒らしながらカメラを構えた。
ちょっと待て、この展開はもしかして…


「…本田さん」

「さぁ名前さん!!それを装着し”ニャー”と鳴いてください!!さぁ、さぁ今すぐに!!」

「帰れぇええええ!!今すぐ星に帰れぇえええ!!!」

「私の帰る場所はいつも貴方の元ですよ」

「んな告白いらんわ!!んっとに何考えてんですか本田さん!!」

「お、おい名前…似合うか?」

「ってなに装着しちゃってんのアーサァアアア!?」

「だ、だってお前とおそろいで…」


頭につけられた猫耳に肉球の手袋。
いわゆるコスプレという奴だろうか。


「これも何かのアニメですか」

「いえ、ただの衣装です。まず最初はここ辺りから始めるのが良いかと思いまして…。次はみくるちゃんでいきましょう、みくるちゃん」

「ちょっ、やめろよ本田!!目が腐る!!」

「もう!!ならセイラさんで手を打ちますよ!!」

「それならなんとか…」

「何の話だ」

「いえ何も」

「なぁ名前…似合うか?」

「うん。洒落にならないほどね」

「え…」


顔を赤らめるアーサーに不覚にもきゅんとした。
違う。これは違う。ずるいよ本田さん…!!私がアニマルグッズが好きなの知っててやってんだよこれ…!!
だけど私は着ぐるみなの!!上下がつながってがってるフードに耳がついた着ぐるみが好きなの…!!
猫耳なんて、猫耳なんて…


「…可愛いすぎるんだよこのやろぉおおお!!」

「うおおおおお!?」

「うおおおおおおおおお!!!!」

「うひょぉおおおお!!」


猫耳+頬を染め、羞恥からはほんのり目に涙を浮かべているアーサーを思いっきり抱きしめる。
あぁ、いつものエロ眉毛紳士でもこんなに可愛く見えるなんて…!!
猫耳、恐るべし…!!!


「はぁはぁこれはなんという美味しい展開ーっ!!って、あれ?ギルベルトさん?ギルベルトさん!?あぁーっ!!ギルベルトさんが石化したぁああああ!!」

「ぎゃぁああああ!!アーサー鼻血!!大量に鼻血出てるぅううううう!!」

「名前…はぁはぁ…」

「しかも息が荒い!!!気持ち悪ぅうううう!!!」

「ギルベルトさぁん!!しっかりしてくださいギルベルトさぁあああああん!!!」

「うぁっ、名前ーーーっ!!!!」

「ぎゃぁあああああああ!!!」

「アーサーさんが壊れたぁあああ!!」



―――




悪夢の惨劇から1時間後…


「はぁ…」

「アーサーさん、帰られましたか?」

「はい。猫耳を大事そうに胸に抱いて帰りましたよ」

「まさかアーサーさんがあのような事になるとは…。いやはや、猫も一応獣科の生き物ですからねぇ」

「上手い事言ったとか思うなよクソジジイ。もう大丈夫ですから本田さんも帰ってください。これ、晩ご飯のトンカツ持って帰ってくださいね」

「はい。ありがとうございます。そして色々とご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。しかし後悔はしていない!!」

「自重しろ」

「それでは名前さん、バイちゃ!!」


いつになったらあの人は自重という言葉を覚えてくるんだろう。
いや、本田さんがまともになるなんて一生無理なのかもしれない。


「さてと…」


未だ固まったままのギルをどうしたものか…。
困った時のトニーさん…は、まだ帰ってくるまでに少し時間があるしなぁ…。


「ギルー?」


ソファーに座って固まったままのギルの頭を撫でてみる。
あ、今ピクッって体動いた。


「ギルー。起きろー。ビール飲んじゃうよ〜」

「う…」

「まだ目が覚めない?しょうがない、一晩ベランダに干しておけば嫌でも「うがぁああああ!!」


うがぁあーって…
目に涙を浮かべたギルが今にも泣きそうな顔で私を見た。
じわりじわりと涙が溢れて今にも零れ落ちそうだ。


「おまえ、最悪…馬鹿!!アホ!!ペチャパイ貧乳寸胴短足尻でか鼻ぺちゃぁああああ!!」

「そうかそうか。そんなに死にたいって?よーしこっちおいで。苦しまずに逝かせてやる」

「うわぁぁあああ!!」


ぎゅっと目が閉じて涙が零れたかと思うと、お腹の辺りに抱きつかれた。
後によろけてソファーの上に尻餅をついた。
いったい何がしたいんだろう、こいつは…


「ギルー」

「うっせぇ黙れ馬鹿。ちょっとかわいけりゃホイホイホイホイ。アホだろ。アホ。ドアホ。アホアホ」


くぐもった声でアホを連発するギル。
子供か…。
もしかしてあれかなぁ。私がアーサーを可愛がってたからお母さんをとられた、みたいな…
だから甘えてんのか…?


「ギルー?」

「んー」

「んーってなんだよ。ちょっとくすぐったいんですけど」

「んー」

「甘えっこかお前は」

「んー」


何だかよく分からないまま流されるままとなった私はその後もギルの甘えるような仕草に付き合わされる事になった。

テレビ見てても手ぇ触られたり握られたり。
(握り返したらビクッとして離された)
髪の毛触られたり三つ編みにされたり。
(何気に上手かった)

まぁ、ギルが機嫌悪いよりは良いか。
ともかくあの猫耳はしばらく封印しておかないとなぁ…。


「ただいまー名前ちゃん!!あれ?この猫耳どないしたん?」

「おかえりトニーさん!あぁ、それは本田さんのお土産で…」

「へぇー!どう?親分猫耳似合うか〜?ニャーなんてなぁ〜」

「と、トニーさんかわええええええええ!!!」

「えっちょっうひょぉおおおおおお!!!」

「ってお前またぁああ!!離れろドアホォオオオ!!」



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