やばい。
どうなってるんだ、この状況は
思い出せ、思い出すんだ俺!!
確か昨日は仕事帰りにばったりあの野郎に出会ってそのまま飲みに行って…
ダメだ、途中からの記憶が曖昧だ


「あー。アーサーおはよ〜」


まだ眠気が残っているのか、呂律が回っていない名前が目をこすっていた

かわいい。
いや、そうじゃなくて


「えっと…なんで俺お前の部屋に…?」

「んー?あぁ、昨日アーサーが酔っ払って私の部屋の前に座り込んでてさ。しょうがないからここに運んだんだよ」

「お前が、か?」

「ううん。ギルが」

「うぇ…。それより、あの…俺、お前に…」

「は?」


眠気が覚めてきたのか目をパチパチさせて俺の顔を覗く。

かわっ、そうじゃなくて!!


「あの…俺、何か変な事やらかさなかったか?」

「変な事って?」

「その、だな…いつもみたいな…」

「あぁ。裸になったりベタベタくっついてきたりその辺で暴れまわるアレ?」


によによと口元を緩ませている名前を見て本気で死にたくなった。
どうして俺はいつも名前の前でヘマをしてしまうんだ…!!

いや、別にあいつに良く思われたいとかそんなんじゃないからな…



「大丈夫。なんともなかったから」

「そうか…。良かった」

「酒に弱いくせしていっぱい飲むからそうなるんだよ。ちょっとは反省しろ」

「わ、悪い…」

「ん。朝ごはんできてるよ。一緒に食べよう?」

「う…あぁ」


ダメだ、頭がクラクラする。いや、二日酔いとかじゃないぞ。
こいつの笑顔だとか、優しさなんかに俺は何時も助けられている
どんなに辛い事があってもこの笑顔を見ただけで和らいでいく感覚に襲われるんだよなぁ…

やばい、今すっげぇ幸せだ。


「あ、そうだ。その辺に転がってるギル起こしといて」


コイツさえ居なけりゃな…!!


「おいコラ。起きろよ馬鹿」

「んぁ…?うげ…眉毛かよ…目覚め悪ぃ…」

「こっちの台詞だ。清々しい朝にテメェの顔拝むなんて胸糞悪いぜ」

「テメー…。昨日ベッドまで運んでやったの誰だと思ってんだ」

「う…」

「つかお前軽すぎだろ。抱えた時あんまり軽いんで女の子かと思ったぜー」

「うっうるさいこの馬鹿ぁ!!」


げしっ


「うお!?蹴るなよ!!」

「黙れこのプー太郎!!ドーバー海峡に沈めんぞ!!」

「口悪いな。流石は元ヤンだぜ!」

「へ…」


ど、どうしてこいつがその事を…!?


「あいつがお前の弟とやらに聞いたらしいぜ。昔手が付けられないほど荒れてたってな!!」

「なっ…!!」

「アルフレッド君が旅行のお土産くれたんだけど、その時に話聞いちゃった。相当なヤンチャぶりだったようで…ふほほほ」


アルフレッドの野郎ぉおお!!!
よりによって一番知られたくない奴に言いやがって…!!!


「まぁ皆人には言えない過去ってあるもんだよアーサー君。少年は過去の汚点をバネにして成長するのさー」

「じゃ、じゃあお前にもあるのか?言いたくない過去とか…」

「ううん。私はいたって平凡な人生しかおくってないから」

「なんだよそれ…」

「ギルは言えない事ばっかしてきてるもんねー」

「人を犯罪者みたいに言ってんじゃねーよ!!」

「えー昔やらなかった?おつかいのおつりでジュース買っちゃったりピンポンダッシュの常習犯だったり。自転車のサドル盗んだりさぁ」

「犯罪のレベルが低すぎんだよ。それに自転車はアレ、サドルよりハンドルの方が性質悪くねぇか?」

「そうだよね。運転できないし。何、ギルもしかしてハンドル盗まれた事あるの?」

「ねーよ」

「おい…話がズレてんぞ」

「ほんとだ!!ダメだなーいつもこうなんだよね私達」

「別に大した話じゃねーしいいんじゃねぇ?」

「そだね」


なんか思ったより仲いいよな、こいつら…

べ、べつに羨ましいとか思ってないんだからな!











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