「起きろアホ女ぁあああ!!」 「んー…」 頭にガンガンと響く馬鹿でかい声に無理矢理叩き起こされた。 なんだ、ギルに起こされるなんて何事だ。 って言うか私昨日はアーサーの車の中で寝ちゃって…それからの記憶が無いのですが…。 「えーっと…。私はいったいどうなってんの?」 「アホ!!このクソあほ女ーっ!!」 「はぁ?なんでギルにそんな事言われなきゃなんないの。むかつくなぁ、久しぶりにベランダに吊るしてやろうかな」 「お前っ、昨日自分がどうやって戻ってきたのか覚えてねーのかよ…!!」 「アーサーの車で寝ちゃったとこまでは覚えてるよ。それからどうしたっけ…」 「車の中で眠りこけてるお前をあの眉毛が連れて帰ってきたんだよ!!しかもお前、あんな眉毛に抱っこされて…!」 マジですか。アーサーが私を抱えてここまで運んでくれたって事? うわぁ、なんか迷惑かけちゃったなぁ…。重かっただろうに…! 私を気遣って起こさなかったんだろうなぁ。アーサーらしいというか… 「今何時?」 「6時!」 「まだ6時かぁ…。シャワー浴びてこよう」 「待て!!お前はまたそうやって…!!」 「あぁお土産ね。えーっと、買い物した物はー…あったあった。はい、ギルにはこのクマさんストラップね!!」 「クマさんじゃなくてパンダが良かったぜーって、うがぁああ!!」 「うわっ!!何!?また反抗期なの!?助けてートニーさぁあん!!」 「トニーはフランシスのとこに泊まるって昨日連絡あったんだよ!!」 「うげっ…」 朝からギルの説教は嫌だなぁ…。 適当にあしらっておくか 「ごめんって。昨日はちょっと疲れててさ…。ほったらかしにしててごめんね?」 「もう知らねー。お前なんか知るか。勝手に動物園でも遊園地でも好きな場所に行ってろよアホ!!」 「もー拗ねないでよ!!じゃあこのクマさんのぬいぐるみもあげるから!ね?」 「要るかよそんなもん!!」 「そんなもんとは何!!せっかく自分用に買ってきた物をあげようって言うのに…!!」 「そんなぬいぐるみが自分用とか笑っちゃうぜー!!いい歳してやってんだよバーカ!!」 「うぜええ!!いい歳とか言われるほど年取ってませんからぁああ!!もう何こいつむかつくぅうう!!」 「いでっ!そこ引っ張んな!!いでえええ!!」 ギルの両頬を指で摘んで横に伸ばす。 こんのプー太郎がぁあああ!! 人が下手に回ってりゃあ調子に乗りやがって…!! 「あんま調子にのんなよコラァ…。食わせてもらってる分際でご主人様にたてつこうなんて100万年早いんだよアーン?」 「ひぃっ…!!」 「ベランダに吊るされるか、耳にビール突っ込まれるのどっちがいい?」 「い、嫌だぁああああ!!どっちも嫌っ!!嫌だぁああ!!」 胸倉を掴んで睨みつける。じわりとギルの目尻に涙が溜っていくのを見て大きな溜息が出てしまった。 「はぁ…ったくこの子は…!!」 「ぶわっ!?」 「良い子にしてたら今晩はギルの好物作ってあげるから。ね?だから機嫌直してよ」 わしゃわしゃとギルの髪を撫でて視線を合わせると、呆気にとられたような顔をしたギルの目から涙が引いた。 早くシャワー浴びて会社に行く準備しないと間に合わないなぁ…。 「い、何時まで撫でてんだよ!!」 「んー?いやぁ、ギルの髪って撫で心地いいからつい」 「うっ…」 顔を赤くして俯くギルを思わず抱きしめそうになったけど、時間も少なくなってきているから抑えておく事にした。 さぁ、早く会社に行く準備しないと…! 「そ、そういや昨日の夕方にサディクから電話がかかってきてたぜ」 「え、サディクさんから!?何の用?」 「さぁな。またかけ直すとか言ってたぜ」 「何か用でもあったのかなぁ…。トニーさんのアパートの修理についてかも…。サディクさんからの電話、かぁ…えへへ」 「厭らしい顔してなよな!!さっさと準備しろよ!!」 「はいはーい」 手早くシャワーを浴びて身支度を整えて玄関を出ると、タイミング良くアーサーが自分の玄関の鍵を閉めているところだった。 挨拶と昨日のお礼を述べると「いや、こっちこそ」と目を逸らしながら返された。 会社に出勤し、休憩中を見計らったようにかかってきた電話の相手はギルだった。 どうやらサディクさんからの電話があったらしく、その内容はトニーさんのアパートの修理について。 どうやらあと数日で修理が終了するらしい。 さっそくトニーさんに電話をかけてその事を伝えると「嘘、やろ…!?そんな殺生なぁあああ!!」と泣き声交じりの言葉が返ってきた。 う、嬉しくないのかなぁ… その日の夜はトニーさんがバイトで居なかったので、私とギルだけで数々の芋料理を食べることになった。 ギルの好物ってこんなのしか思い浮かばなかったんだけど、まぁギルも喜んでたみたいだし良かった良かった。 それにしても昨日の疲れが溜ってか、足や腕がパンパンになってる気がするなぁ… うー、体が痛い…!! . ←|→ |