「名前!!ぞうさんですよー!!」

「本当だ〜!!鼻長いね」

「ん。象の前で写真撮っとくか?」


本日はお日柄もよく、絶好の動物園日和!!
アーサーに頼まれ、ピーター君とアーサーの三人で動物園までやって来ました。
動物園なんて何年ぶりだろー。


「ピーター君楽しんでるみたいで良かったねぇアーサー」

「まぁな。だけどせっかくの休日に悪いな、こんな所につき合わせて…」

「いいよいいよ。私も動物園好きだしね!それにピーター君見てるとこっちまで元気になれるんだよね。子供のパワーって凄い!」

「まぁお前がそう言うなら良いんだけどな…」

「アーサー!!象さんに餌あげたいですよー!餌買えですよ餌!」

「った、くしょうがねーな」

「あ、私も餌あげたーい」

「お前もかよ!」


どうやら檻の傍に設置されている自動販売機で象の餌が買えるらしい。
私もアーサーに一つ買ってもらったんだけど、なんだかこれ人間も食べられそうだなぁ…
モナカの中にドライフルーツのような物が入っている。


「アーサー!!肩車しやがれですよ!!ぞうさんにもっと近づきたいのですよぉ〜!!」

「はぁ?ったくしょうがねーな…」


ひょいとしゃがんでピーター君を肩に乗せたアーサーは少しよろめきながら立ち上がった。


「大丈夫?」

「こ、これしきどうってことねーよ!」

「アーサーフラフラしてて気持ち悪いですよー。名前にやってもらいたいです」

「バカ!!俺で充分だろ!!ほら、象が餌ねだってんぞ」


こうやって見るとまるで親子みたいだなぁ…。
だとすると私がお母さん?うーん、それも悪くないかも。


「よしアーサー!!次は私を肩車するんだ!」

「無理だよバカァ!!いや、できない事はないけどこんな場所で…!!」

「大丈夫大丈夫。アーサーならできる!」

「なんの根拠だ!!」


そういえば一度酔っ払ったアーサーに肩車された事があったなぁ。
持ち上げられた拍子に天井に頭をぶつけた。おまけに太もも撫でられて散々なめにあったっけ…。


「やっぱり肩車はダメだ。ほーら象さん餌だよー」

「どうしたんだよお前」

「ちょっと昔の事を思い出してね…」

「昔…?」


不思議そうな顔をするアーサーに「なんでもないよ」と笑顔を向けると顔をほんのり赤く染めて「そ、そうか…」と顔を背けられた。
そろそろお昼だしお腹空いてきたなぁ…。
実は今日早起きしてお弁当作ってきたんだよね。
今頃家でギルもこれと同じお弁当を食べている頃だろうなぁー…
アーサーとピーター君と動物園に行くって言ったらすっごく拗ねてたもんなぁギルの奴。
まぁお土産でも買って帰れば機嫌も直るだろう。


「そろそろお昼にしようか」

「そうだな」

「お腹すいたですよー」

「今日は私がお弁当作ってきたんだよ〜!!どこか良い場所みつけて皆で食べようか」

「わーいですよー!!シー君良い場所探してくるですよ!!」

「迷子になるなよ!」


嬉しそうにぱたぱたと走って行くピーター君。
ふふふ、無邪気で可愛いなぁ…。
動物園内は公園のようになってるからどこでもお弁当食べられるんだよね。
ピーター君はどんな場所を選ぶんだろう…


「し、しかしあれだよな。こうやってると…でっ、デデデデ!デー、トみたいだよな!!」

「え、何ごめん聞こえなかった。もう一回言って」

「ば、ばかぁああ!!言うか!!二度と言うかかぁ!!」

「なんでバカよばわり!?って、何涙目になってんの…!!」

「うっ…ばか、お前のせいだろ…!!」

「私何もしてないし…!!」


ぐしゅぐしゅと涙を拭うアーサー。
え、私に何かしたの…?
よく分からないけど、とりあえずこんな所で泣かれるのは困るのでアーサーの頭を撫でてあげると「子供扱いすんなよ…」と呟きながら肩に顔を埋められた。
…重い。


「あー!!何やってるですかアーサー!!名前にくっついてるですよー!!」

「邪魔すんなよ…。良い場所みつかったのか?」

「もちろんですよ!!名前、早く行くですよー!!」

「こら、手引っ張って走ると危ないだろーが!!」

「うるせーですよ変態エロ眉毛!!」

「なっ…!!」


身長が頭二つ分程小さいピーター君に引っ張られて来た場所は先ほど餌をやった象さんの折のすぐそばのベンチ
って、ここは…その、あれだよね…


「お前はなぁ…。こんなとこで食えるわけねーだろ!!臭くて食欲がうせるだろ!!」

「シー君は象さんの傍で食べたいんですよ!」

「だけどちょっとねぇ…」

「ダメですか?名前、ダメなんですか…?」

「よし、ここで食べよう!!」

「ってお前なぁああ!!」

「ごめんアーサー…。このちびっこ悩殺涙目には敵わないんだよね…」


結局象さんのお隣で食事をとることになった私達は異臭に包まれながらも美味しいお弁当を綺麗に平らげた。
…ぶっちゃけ味はよく分からなかったんだけどね…。
その後も遊園地の中を見て回って、夕方にもなると流石に体力を使い果たした私とアーサーはくたくたになっていた。
だけどピーター君はまだまだ遊びたいようで、子供のパワーは凄いと改めて実感させられた。
お土産コーナーでいくつかお土産を買い、自分用に白いクマのぬいぐるみも購入した。
うーん…なんていうか、こういうのに弱いんだよねぇ私…。

帰りの車の中、私の膝の上に乗って眠そうに目を擦っているピーター君に「家についたら起こしてあげるから寝ててもいいよ」と頭を撫でてあげると直ぐに規則正しい寝息が聞えてきた。
遊び疲れちゃったんだろうなぁ…。
ふふふ、寝顔までアーサーにそっくりだ。


「今日はつき合わせて悪かったな」

「ううん。私もすっごく楽しかった。今度は水族館とか行きたいねー」

「まだ行く気かよお前は…!!ま、まぁお前が行きたいって言うならつれて行ってやらない事もないぞ…。こ、今度は二人でな」

「あ、でも今度はギルも連れて行ってあげたいなー。今日もすっごく拗ねてたし。帰って機嫌とらないとまた不貞寝されちゃうよー」

「…ははは。そうだな…そうだよな…」

「何いきなり暗くなってんのこいつ」


お願いだから運転を疎かにしないでくれ。
窓の外で後に通り過ぎていく電灯を眺めていると、なんだか瞼が重くなってきた。
私も今日は疲れちゃったからなぁ…。
ちょっとだけ…5分だけ寝ちゃおう…。


「アーサ〜…5分たったら起こしてねー」

「…あぁ」

「おやすみー…」

「おやすみ」


赤信号で車を停めたアーサーは、私の髪を撫でて前髪の間から額にキスを落とした。
うわぁ…恥ずかしい奴…。
一発殴ってやりたいけど、今はそうもできなさそうだ。

あぁ、本当に、眠い



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