暑い…。
現在仕事を終えて会社から帰宅中…なのですが…。

暑い。とてつもなく暑い。
ついダラダラ歩いちゃうよなぁ…。
昔はもっとタフだった気がするんだけど…。やっぱりもう歳なのかな。


「名前…?」

「あ、ヘラクレスさん!」

「久しぶり…?」

「お久しぶりですねー!今お仕事帰りですか?」


右手にアイス、左手にスーパーの袋を持ったヘラクレスさんは相変わらず眠そうな顔をしている。
肩から斜め提げにしている鞄が四角く膨れていて、本が沢山入っているんだなぁと一目で分かった。


「うん。今日は早く終わった、から」

「私も今帰りなんですよ。それにしても暑いですねぇ…」

「…食べる?」

「え…アイス、ですか?」

「チョコマーブルは、嫌い?」

「いえ、好きですけど…」


良いのかなぁ…。まぁせっかくのご好意だし、一口だけいただこう。


「それじゃあ一口だけ…」

「うん」

「んー…!!おいしい〜!!」

「もっといる?」

「え、良いんですか?」

「うん」

「じゃあもう一口…。んー冷たい!!」

「もっと食べる?」

「って、これじゃあヘラクレスさんの食べる分がなくなっちゃうじゃないですか!!」

「名前の一口は小さいから大丈夫…。アルフレッドの一口は半分以上だけど」

「あははー…。何か食べられちゃったんですか?」

「うん。お昼ごはんのハンバーガー。一口だけって言ったのに、一口で半分以上食べられたから」

「口、大きいですからねぇ彼。世話のやける生徒さんでヘラクレスさんも大変ですね」

「ううん。この仕事は、好きだから。生徒も皆良い子」


ふんわり笑ったヘラクレスさん。
自分の職業に誇りを持っているんだなぁ…。
なんだか大人だな、ヘラクレスさんって。


「あ。そういえば猫ちゃんは元気ですか?前に一緒に病院へ連れて行った…」

「すっごく元気。随分大きくなってこの間他の家の猫と喧嘩して勝って帰ってきた」

「うわぁー!随分たくましくなりましたねぇ…。あ、そういえば私の家にも小さな小鳥が居るんですよー。昨日ギルが拾ってきた小鳥なんですけど、怪我が治るまで家で面倒をみてあげる事になったんです」

「鳥…。頭に上に、乗る?」

「え?まだ怪我してるし乗りませんよー。だけど体を撫でてあげたらピィピィ鳴いてとっても可愛いですよ!」

「見に、行きたい。ダメ?」

「今からですか?」

「うん。ダメ?」

「いいですよー!良かったらついでに晩ご飯食べて帰ってくださいな」

「名前の手作り…食べたい」

「ちょっ、期待しないでくださいね!!味の保証はありませんよ!!」

「楽しみ」

「ちょっとヘラクレスさーん!?」



―――



「ただいまー!!」

「おじゃまします」

「どうぞ遠慮なくくつろいでくださいね。着替えたらすぐ夕飯の準備しますのでリビングでくつろいでてください」

「うん」


リビングでくつろいでいるギルに「ただいま」と一声かけて自室に戻り、着替えを済ませる。
今日はヘラクレスに夕飯食べてもらうんだもんね…。頑張って美味しいの作らなきゃ!!


「これがピヨちゃん1号だぜ!」

「鳥…」

「お前の猫とか連れてくるなよ!!ただでさえ凶暴女に狙われてるっつーのに」

「だぁれが凶暴女だって…?ちょっとお前最近調子に乗りすぎじゃないかなぁギルベルト君。ヤキ入れてやろうかしら」

「あだだだだ!!頭掴むなって!!」

「あ、ピヨちゃん元気になったねー。どうですか、ヘラクレスさん」

「うん。可愛い。肩とか頭に乗せたい」

「怪我が治ったら乗ってくれるかもしれませんね。それじゃあ私は夕食にとりかかっちゃいますね!食べられない物とかありますか?」

「猫鍋…?」

「いや、それは誰でも食べられませんから…」

「てか猫鍋ってマジであんのかよ!?」

「ある、と思う」

「マジかよ…!!」

「まぁ今夜のメニューはから揚げですから大丈夫ですよ。勿論肉は猫肉じゃなくて鶏肉です」

「鳥ってお前…!!ピヨちゃんの前でなんてもん食おうとしてんだよ!!」

「そのピヨちゃんに卵を食べさせようとした野郎に言われたかねーよ」


今日はトニーさんもピザ屋のバイトで遅くなるって言ってたし少し量を減らしておこうかな…
作っておいてあとでチンするのも良いけど、トニーさんだって出来たてほやほやの方が喜ぶもんね。


「ピヨちゃん触っても、良い?」

「良いぜ。可愛いだろ?」

「うん。可愛い。でも猫の方が好き…」

「んだと!ピヨちゃんの方が可愛い良いに決まってんだろ!!」

「猫も可愛い。擦り寄ってくるし暖かい」

「ピヨちゃんだって怪我が治れば絶対擦り寄ってくるぜ。それに冬に胸の中に入れておけばカイロになるぜ!」

「潰れると思う…」


うん、よく分かんないけどあの二人仲良くやってるみたいで良かった。
二人とも動物好きだし気が合うのかなぁ…。


―ピンポーン


この時間の来客という事は、言わずもがなお隣さんであろう


「はいはい、いらっしゃーい」

「よぉ…。これ、土産な」

「わぁ!美味しそうなケーキ〜!!って、私今一応ダイエット中の身なのですが…」

「だと思ってカロリー低いやつにしてきた。ってゆーかあんまり我慢するのも良くないぞ?これから毎日暑い日が続くんだし、ちゃんと栄養取っとかないと去年みたいに倒れるぞ」

「そういえば去年は夏バテと日射病で倒れちゃったんだよねぇ私…。地面とキッスしてたらアーサーがすっごく焦ってる声が遠くに聞えて愉快だったなぁ」

「こっちはいきなり倒れるからビックリしたんだからなバカぁああ!!ともかく!!今年はあんな事にならないようちゃんと食っておけよ!!」

「ラジャー。あ、今お客さん来てるんだよー。アーサーは会うの初めて、なのかな…」

「お客さん?」


玄関の足元の靴を確認したアーサーは顔を強張らせた。


「男か…」

「うん」

「ったくお前は…。いや、もう何も言わねーよ…。どんな奴なんだ?」

「アルフレッド君とマシュー君の大学で教授やってる人」

「なっ…!?」

「まぁ入って入って。紹介するからー」

「う…」


固まっているアーサーの首根っこを掴んでリビングに戻ると、ギルとヘラクレスさんがテレビゲームで遊んでいた。


「ヘラクレスさん。この眉毛はお隣に住むアーサーです。アルフレッド君とマシュー君のお兄さんなんですよー」

「い、いつも弟達がお世話に…」

「ん…こちらこそ…?」

「友達居ないから仲良くしてあげてね」

「なっ…!!なんでそんな事言うんだよバカァ!!」

「事実じゃん。さーて私は夕食の準備しないと…」

「ヘラクレスお前落ちゲーやたらつええな!!」

「うん。テトリス好き。やり始めたら一日中やってる」

「すげっ!!」


なんだか子供みたいな会話だなぁ…。
ゲームをしている二人に相手にしてもらえなくて居心地が悪いのか、私の横に立って料理をする手元を覗いてくるアーサー。
…邪魔なんだけど言えない。流石にそれは可哀想な気がする。


「暇なら手伝ってくれる?」

「い、いいのか!?だってお前、いつもは俺が手伝うと不味くなるからダメだって…」

「うん。だからアーサーはお皿を出す係ね。あと盛り付け」

「やっぱり料理はさせてくれねーのかよ…!!ったく、しょうがねーな!」


文句言いながら嬉しそうなところがなんとなく不憫だ。


「よし、できた!!ギルーヘラクレスさーん!夕食できたからゲーム終わりにしてね〜」

「今すげーいいところなんだよ!!」

「うん…」

「いいから切れ。電源落とせ。夕食が先でしょーが」

「も、もう少しでハイスコア…!!」

「いい加減にしないとピヨちゃんを油でカラッと揚げちゃうよ?」

「どぅわぁあああああ!!やめっ、やめぶあぁああ!!なにしようとしてんだよ残酷女ぁあああ!!」

「冗談冗談。いいから電源落としておいてねー」

「…名前って、こんなに怖かったのか」

「いや、実際これ以上だぜ。今あいつ猫被ってるからな」

「猫…!?」

「猫で反応すんな!」


なんだか以前より打ち解けた二人は夕食時も何かと話題を見つけては話を繰り広げていた。
人見知りで最初は遠慮がちだったものの、アーサーも話しに入れたようでなんだか私まで安心してしまった。
「名前の料理すっごく美味しい。また食べに来てもいい…?」と首をかしげるヘラクレスさんが可愛くて思わず頭を撫でそうになってしまった…!!
いや、だって上目遣いで本当に可愛かったんだって…!!
勿論ですよと満面の笑みを見せると、ほんのり頬を赤くしてにへらと笑ったヘラクレスさんは本当に年上の男性とは思えないほど可愛かった。
「お前顔、緩みすぎだろ…プクッ」とギルが馬鹿にするように笑ったので口の中にから揚げを5個ほど詰め込んでやった。
口の中が一杯で噛む事も飲み込む事もできないギルは涙ぐんでいたけど無視をしたら、アーサーがギルを助けてやっていた。
相当ギルが不憫に思えて仕方がなかったのだろう。

何はともあれ、ヘラクレスさんに夕飯を喜んでもらえて良かった〜!!
そういえばヘラクレスさんはサディクさんと同じアパートなんだよね…。
サディクさんは夕食何食べてるのかなぁ…。
い、一度でいいから夕飯食べに来てくれないかなぁ…。
な、なーんてね!!


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