昼休み。いつものようにティノ君とスーさんと一緒に食堂でランチを食べていたら、いつもは鳴らない携帯が鳴っていた。

この着信音はアルフレッド君だ。
あれ以来アルフレッド君とはメールのやり取りで親交を深めている。

今回はどうやら卒業旅行に行ってきたので、私にお土産を渡したいとの事らしい


「高校の卒業旅行にニューヨークか…。スケールでかいなぁ最近の子は」

「うわぁ、凄いですねそれ」

「だよねぇ。私なんて近場の温泉街行っただけだよ。大学の卒業旅行は海外だったけど」

「海外って何処に行ったんですか?」

「フランスとイタリア。ご飯は美味しいし景色も綺麗だったな〜」

「フィンランドの景色もすっごく綺麗ですよ!!!あと料理もスッごく美味しいですしね!」

「え…料理はちょっと…」

「サルミアッキ、食べます?」

「いや、いい!!今ご飯食べてるしお腹いっぱいだからぁあああ!!」


どこからかサルミアッキを取り出したティノ君。
その横でプルプルとスーさんが震えていた。

食わされたのか、スーさん…


―――


「名前〜!!こっちだぞー」

「あ。やっほーアルフレッド君」


夕方、近くのマク●ナルドで待ち合わせをしてアルフレッド君に会った。

ん?隣に誰かいるような…


「はいコレ!!アメリカ土産なんだぞ!!」

「サンキュー。久しぶりの故郷はどうだった?」

「エキサイティングでおもしろかったんだぞ!!バーガーも小さくないし最高さ!!」

「良かったね〜。ところでその隣の人は誰かな?」

「え、隣…?ってうわぁああああ!!!いつからそこに居たんだいマシュゥウウウ!!!」

「ずっと居たよ…」


気付いてなかったのかアルフレッド君…
それしてもアルフレッド君にそっくりだな、この子


「紹介するよ!!俺の双子の弟のマシューさ」

「は、始めまして。アルがいつもお世話になってます」

「あ、やっぱり双子なんだ。そっくりだもんね〜。私は苗字名前。よろしくねー」

「マシューは影が薄いからすぐに見失っちゃうんだ。名前もよく気をつけておくんだぞ」

「そんなに影薄いかなぁ…僕」


うん…たしかにアルフレッド君の存在感に比べたらとっても薄い気が…


「ってことはアーサーって二人も弟がいるんだ。うらやましー」

「いや、あともう一人居るぞ」

「マジでか」

「俺の父さんとアーサーの母さんが離婚したあと、アーサーの母さんは他の人と結婚したんだよ。その間にできた男の子が居るんだぞ」

「うわー…なんか複雑…」

「俺たちも数回しかあったこと無いけど、かわいそうなことにアーサーにソックリなんだよ!!」

「眉毛も!?」

「眉毛も!!!」

「ちょっそれ呪い!?かわいそー弟君…!!」

「俺たちは血が繋がってなくて良かったよ。なぁマシュー」

「失礼すぎるよアルフレッド…」

「いいだろ、アーサーだし」

「うーん…」


マシュー君って大人しいと言うか…
アルフレッド君とは対照的なんだなぁ


「そういえばアルフレッド君この間アーサーが元ヤンとか言ってたよね?あれってどういう事なのか詳しく教えていただきたいなー」

「勿論いいぞ!!ちょうどアーサーが中学か高校ぐらいの時すっごく荒れててさ。両親は新しく生まれた子供ばっかり構ってるしアーサーもツンデレだろ?素直になれなくてだんだん荒れてきちゃってさ〜。あくどい手ぇ使うし性質悪いって有名だったんだぞ」

「うっそー…。あのアーサーがねぇ」

「ああ見えて喧嘩も強いんだぞ。弱そうな体格してるくせに喧嘩をする時は容赦なく相手をフルボッコにするんだよ」

「うわー。なんかアーサーイメージ変わったなぁ…」

「でもアーサーさんはとってもいい人ですよ。僕達を本当の弟のように可愛がってくれたし、優しいし。アルも昔はよくアーサーさんに懐いてたじゃないか」

「そんな昔の事覚えてないね。俺は今を生きる男なのさっ!!」


アルフレッド君ってアーサーの事煙たがってるみたいだけど、本当は大好きなんだろうな、アーサーの事。
楽しそうにアーサーの事を話しているアルフレッド君を見ていたらそう思わずにはいられないだろう。


「もごご。それで」ズビビビ「アイツはむかしっから」ズビビビ「もごふ」

「食べるか飲むか喋るか、どれか一つに搾ろうかアルフレッド君」

「名前さんの前ではしたないよアル…」

「あれ?マシューじゃないか。何時からそこに居たんだっけ?」

「ずっと居たよ四つ前の台詞喋ってたよ僕ぅうう〜〜!!!」




―――



「ってなわけでアーサーは昔荒れてたらしいよ。意外だよねぇ」

「意外も何もそのまんまじゃねーか。あの眉毛性格悪いし口悪いし」

「人の事言えたもんじゃないだろうが」


しかし、あながち間違ってもいないので否定もできない


ドンッドン


「え…?何の音、さっきの」

「玄関の方から聞こえたな…」

「何か居るのかな?」

「ちょっ、お前むやみに出ようとすんなよ大!?危ない奴が居るかもしれねーだろ!!」

「じゃあギルが出てきてよ」

「え…俺かよ」

「それじゃあ私が…」

「あーもう分かった!!分かったからお前そこに居ろ!!」

「キャーギルかっこいいー」

「俺様をもっと称えやがれー!!」

「調子に乗るなよ。早く行ってこい居候」

「…はい」  


恐る恐る玄関を開くギル


「どう?なんか居た?」

「…まぁ、怪しい奴が居るぜ」

「マジかよ!?警察呼んだ方がいい?」

「俺はいいと思うけどお前は困るかもな。大事な大事な隣人様だし」

「はぁぁああ!?もしかしてアーサー!?」


急いで玄関に駆け寄ってみると、そこには地面に座り込んでいるアーサーの姿があった


「アーサー…」

「ん…?おぉ、名前か…」

「酒くさっ!!さては酔っ払ってんな、お前…」

「んー…。名前〜」


両手を伸ばして甘えるような声で私を見上げる


「ぶふっ!!コイツって酔うといつもこうなのかよ!?」

「まぁね…。なんと言うか、酔っ払ったアーサーは性質が悪い。手が付けられない」


酒弱いくせに無茶して飲むからこういう事になるんだよなぁ…


「とにかく中に運ぼう。ギル、頼む」

「めんどくせぇ」

「いいから。あんたのソファベッドに寝かせてあげて」

「はぁ!?じゃあ俺は何処で寝ろって言うんだよ!?」

「一日ぐらい床で我慢できんでしょ?
はーやーくー」

「なんでこんな奴の為に…!!」


うわ言のように「アルーマシュ〜」と呟いているアーサーは強引にギルに担がれてベッドに放り投げられた


「ほらアーサー。水飲んで」

「いらねぇ〜…」

「いいから飲めって。ったく誰だよアーサーにこんなに飲ませた奴…」

「ん゛ー…久しぶりに幼馴染に会って…それれ…」

「あーはい分かったから。明日は休みだよね?ゆっくり寝てなよ」

「ん〜」


アーサーのキラキラと反射している髪を撫でてみると、へにゃりと笑い規則正しい寝息を立てて眠りについた


「寝たか…。良かった〜。また裸にでもなられたらたまったもんじゃないからなぁ」

「裸ってオイ!?」

「コイツ酔うと裸になる癖があるんだよね。収拾つかないから大変なんだよ」

「うわー…酒癖悪ぃな」

「ギルは?ギルがあんまり酔ってるの見たこと無いけど」

「俺様はどんだけ飲んでも酔っ払ったりしないぜ」

「へぇ〜。意外と男らしい」

「意外とは余計だぜ」

「ギルがカッコいいとなんかむかつくんだよね。ギルはいつものギルが一番似合ってるよ」

「褒めるなよ!!」

「褒めてねーよ」



.





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -