「というわけでお腹周りが太っちゃったんだよね…」

「そうなの?見た目じゃ全然分からないけど…」

「ギルが言うんだから間違いないと思う。それに比べてエリザは細いよね〜…。そのスタイルを保つ秘訣とかあるの?」

「やぁね、そんなのないわよ!」

「じゃあどうやったらエリザみたいな美人になれるのーっ!!やっぱりベースがダメなんだなぁちくしょう…」

「あら、名前だってすっごく可愛いじゃない。強いて言うなら…そうね、恋をする事かしら」


カウンターの向こう側でカップにコーヒーを注ぎながらふんわり笑ったエリザ。
恋、ねぇ…
確かにエリザはローデリヒさんに恋してるからすっごく可愛いよね。


「名前って好きな人居ないのよね?」

「す、好きな人?居ないよそんなの」

「ギルベルトはともかくアントーニョさんとか菊さんとか…名前の周りって沢山男の人居るじゃない」

「まぁそうなんだけど…好きな人ねぇー…」

「憧れの人とかは?」

「憧れ…」


ぽわぽわと頭に浮かんだサディクさん顔。
サディクさん…男らしくて素敵だよなぁー…。
大きくて勇ましくて…


「名前!どうしたの?ぼーっとしちゃって」

「へ!?いや、なんでもないです」

「なぁに?頬が赤いわよ」

「なんでもないなんでもない。それよりエリザ、ローデさんとはどうなの?」

「どうと聞かれても…。いつも一緒にお喋りしたりしてるわよ!あとこの間一緒に図書館に行ったわよ」

「それってデート…?」

「ち、違うわよ!もうっからかわないでよ名前!」

「ハハハ。ごめんごめん」


やっぱりエリザは可愛いなぁ。
恋する乙女の力もあるんだろうなぁ


「あら、こんばんは」

「あ、こんばんはーローデさん」

「これからモーツァルトを演奏しますのでどうぞお聞きになってくださいね。後でご褒美にトルテを差し上げましょう」

「わーい、って子供扱いですか…!!」

「大人しく聞いているのですよ。お喋りなどしないように」

「教師かあんたは」

「そうですね、貴方の曲がった性格を教育で正常に戻すのも良いかもしれません」

「どんだけダメ人間なんですか私」


楽譜を抱えたローデリヒさんはふんと鼻を鳴らしてお店の中心にあるピアノに向かった。


「ふふふ。ローデリヒさんって名前のこと大好きなのね」

「好きってって言うより子供扱いしてるだけだと思うのですが…。ご褒美って何!」

「ローデさんったら名前の事妹のように思ってるのよ。素敵ね〜」

「嫌われてるんじゃないならいいんだけどね」


店内にゆったりとしたメロディーが流れる
あ、この曲知ってる。
本当にローデさんの奏でるピアノって綺麗な音だなぁ…
ただ綺麗なだけじゃなくて、人を引き付けるような音楽と言うか…

前に一度コンサートのゲストに出た事あるけど、今後そういった活動はしないのかな。
だけどローデリヒさんが沢山コンサートに出ちゃうような人になっちゃったら…ここから居なくなっちゃうんだよね
なんだか寂しいなぁ…


「どうでしたか?」

「素敵でしたよ。流石ローデリヒさん」

「何度聞いても綺麗な音色よね。ずっと聞いていたいぐらい」

「褒めすぎですよエリザ。さて、店の奥から手作りトルテを持ってきますので少々お待ちくださいね。今回は自信作ですので」

「ありがとうございます」


ローデリヒさん手作りのトルテに舌鼓をうちつつ、エリザとのお喋りを交えて有意義な時間が過ごせた。
エリザはチラチラとローデさんの方を見つめては頬を赤くして、とにかく可愛い。
恋をするということはこれほど人を輝かせるものなのか…。それともエリザだからこそ、なのか。
私の数少ない恋愛経験では分からないなぁ…。

ローデリヒさんにトルテをお土産にもらって家に帰ると、やけに機嫌の悪いギルと、やけに機嫌の良いトニーさんの姿があった。
何があったのかと聞いてみるものの、「なんでもねー」の一点張りて何も聞き出せなかった。
夕食後にローデさんのトルテを三人で食べると、「あいつ腕上げたなぁ」と嬉しそうにトニーさんが呟いた。
二人は古い馴染み、とか言ってたよね。
また今度お話聞いてみたいな。






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