「うわぁ…やるなぁアルフレッドの奴」

「うっ…悔しい、悔しい…!!」

「うわ、何この子ハンカチかみ締めてんの!?気持ち悪ぅ!お兄さんこんな子に育てた覚えないんだけどなぁ…」

「おいフランシス。バズーカ持ってねーか?」

「何しようとしてんのギル!!ていうかお前なんかキャラ変わった!?」

「ギルじゃねぇ、ギルゴ13と呼べ」

「なにギルゴって!?語呂悪っ!流石のお兄さんもそのネタにはついていけないよ!」

「え…?邪魔をしろだって?だけど相手はアルフレッドだぞ…。うん、そうなんだけど…。だけどなぁ…。ばか、そんなんじゃねーって!」

「アーサァアア!?お前誰と話てんの!?何も居ない場所見て何話てるの!?」

「誰にって、学校に住み着いてる妖精だよ。古本の妖精に花の妖精。そっちが水の妖精に…あれ、あの髪の長いキモノ着た奴誰だ?手ぇ振ってら」

「イヤァアアア!!!オカルトォオオ!!」

「あのメタボ野郎べタベタ暑苦しいぜ…。友達だと思ってたのに…!!」

「いや、そう思ってんのはお前だけだろ」

「え、フランシスに用があんのか?ちょっと待てよ、そんな怖い顔しなくてもいいだろ!今呼んでやるから、な?あとお前血だらけじゃねーか。ちゃんと洗っておけよ。女性がそんな格好してちゃダメじゃないか」

「やめてアーサー!!お、俺もう帰るから…!!」

「待てよ、こいつがお前に話があるってさ。名前は…なんだっけ?あぁそうそう。花子だってよ。んだよ、こいつに気があんのか?やめとけって!こいつすっげー軽いぞ。…まぁそこまで言うなら…。」

「ヒッ!!何、何がそこに居るんだよ!?な…なんか寒い!!嫌だ嫌だ嫌だ!!助けて名前ちゃぁああああん!!!」

「ばか、テメェ!!」




―――




「アルフレッド君、そろそろ日も暮れてきたし帰ろうよー」

「何言ってるんだい!まだ後夜祭があるんだぞ!」

「それって生徒限定じゃないの!?」

「いいんだよ、俺は特別かだらな!」

「おいおいおい…」


夕暮れ色にそまった学校。お店も屋台も店じまいをしている中、私は相変わらずアルフレッド君に手を引かれて歩いていた。


「疲れた…」

「俺は全然疲れてなんかないんだぞ!むしろ今からが本番さ!!!」

「ええ!?嫌だよ私明日仕事あるのに!!お願いだから帰らせて!!」

「ダメだぞ!!」


「名前ちゃぁああああん!!!」


「あれ、なんか聞き覚えのある声が聞えるんだけどきっと空耳だよね」

「すっごく聞き覚えのある声が聞こる気がするけど気のせいさ!」

「ちょっとお前らぁ!!お兄さんが助けを求めてるってのにそれはないでしょ!?」

「なんですか髭。くたばれよ髭」

「酷い!!悪霊から逃げてきた俺に言う言葉!?」

「キモイよフランシス」

「アルフレッドぉ!お前お兄さんを労わる気持ちないのか!?昔あんなに可愛がってやったのに!」

「HAHAHA!主に料理と性教育しか与えてもらった記憶しかないんだぞ!」

「うわぁ、最悪だこの髭。もうユーそんな髭剃っちゃえよ。若々しく見えますよ?」

「それが良い。剃れよ」

「何二人とも!!なんでお前らそんなに仲良く俺の事苛めるの…!!」

「えへへへ」


アルフレッド君と顔を見合わせ、笑う。


「お、おい!!」

「あ、アーサーにギル」

「何手ぇ繋いでんだよメタボ!!」

「だって俺は名前のヒーローだからな!」

「答えになってねーよ!」

「なぁアーサー…さっき言ってた女の子まだ居るの?」

「何言ってんだよ。お前の後ろに居るじゃねーか」

「ふふふ。そうかぁー。じゃあ口説いちゃおっかなぁ〜…って、幽霊相手じゃ無理だろどう考えても!!」

「手ぇ話せメタボ!!デブ!!ブタ!!」

「なんだって!?ヒモ!!甲斐性なし!ハゲ!!」

「喧嘩が小学生レベルだよこいつら…!!」


ギャーギャーと騒ぐ連中の声が当たりに響いて注目を浴びる。
結局最後はこうなっちゃうんだよなぁ…
これが私達のあり方とでも言うんだろうか…。
まぁ、皆が楽しければそれでいいか。
その辺、今日は大満足の一日だったよね


「いいかい三人とも。名前は俺のヒロインなのさ!!ヒーローとヒロインの愛を壊そうとする者は何人たりとも許さないぞ!!」

「ヒロインならもっとボインで金髪美女を探せ!!」

「貧乳で悪かったなコラァ」

「名前。名前は俺の事好きだよな!?」

「大好きですよー」

「俺も、俺も大好きだぞっ!!!」


ぎゅっと肩を抱きこまれ、体が宙に浮くような感覚に襲われると当時に唇に暖かい感触。
って…………え?


「うおぉおおおお!!!何やってんだクソメタボォオオオオ!!!」

「ちょっ、やばいってギル!!アーサーが石化した!!」

「知るか!!ああもう帰るぞ!!こっち来い名前!」

「え、あ、はい、えっと、ん?」

「何混乱してんだよ!!顔赤らめてんじゃねぇ!!」

「だだだだだだってですねギルベルトさんだってなんだかだってだってなんだもん!?」

「落ち着けぇえええ!!」

「君が落ち着けよギルベルトー。煩いよ、君」

「うるせぇ!!元はと言えばお前が……って、あ、アイス…?」


なにやら横から感じる視線…これってデジャヴ?
回転しない頭でゆっくり右を向くと、至近距離にアイス君が居た。
まだメイド服を着たままのアイス君はごしごしと私の口元をエプロンで拭いた後に、ちょこんと触れるだけのキスを口元に落として「よし」と微笑み去って行った。


「「「「「え…?」」」」」


五人の声が、一つに重なった瞬間でもあった。

あぁ、今日ってやつはなんて濃い一日なんだろう。


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