「おはよースーさん!」

「ん。今日も元気だない。ええごった」


朝の通勤中、会社前の信号でスーさんと出くわした。
胸元から伸びる嫌というほど目立つネクタイ…
ティノ君がプレゼントした花たまご君がらネクタイ。
いいなぁ可愛いなぁ!同じプリントのTシャツを作ってギルに着させてあげたい…!!
トニーさんと二人でお揃いも良いなあ。絶対似合うよあの二人なら。


「どした?によによしてからに」

「え?今私笑ってた?」

「んだ」

「うわー危ない危ない。すっごく怪しい女じゃん。ちょっと想像してて思わず、ね」

「やらしか」

「ちょっ、そんなんじゃないって!!」


私をからかう様に薄く微笑んだスーさん。
なんだか近頃ますますスーさんと仲良くなれてる気がするなぁ。
スーさんって人見知りなとこあるし見た目が怖いからあんまり人が寄ってこないんだよね…。
だから私とティノ君をすっごく大事にしててくれて。
この間の誕生日プレゼントの腕時計も毎日つけてくれてるみたいだし、本当に嬉しいなぁ


「そういやティノ君は?一緒に来てるよねぇ毎日」

「ティノは早く会社さ行っだから」

「そういえば最近頑張ってるよねーティノ君!私も負けてらんないなぁ〜!」

「んだ」

「おう何おめぇら朝からイチャついてんだっぺ!!」

「うわっ!!ちょっ、デンさんやめてくださいよセクハラですよ!!!」


後から勢いよく肩に腕を回してくる我らが上司。
顔が近い力が強い腕が重い!!!


「離せ。ただじゃすまねぇど」

「あぁん?上司に喧嘩売んべかおめ。よっしゃ、そんじゃあ一発ガチンコ勝負だべ!!」

「何物騒なこと言ってんですか!!そんな事してると今にクビにされますよ」

「いんや、俺権力あっし」

「世の中って荒んでるよね」

「ん」



――――




「エーリザ。いつものコーヒーお願いね」

「あら名前!いらっしゃい!アルフレッドが来てるわよ。相席する?」

「ほんとだー。ちょっと行ってくるね」


お店の窓側の一番奥。どうやらあの席はアルフレッド君の一番お気に入りの席らしく、ここで彼に会う時は必ずと言って良いほどあの席に座っている。


「やっほーアルフレッド君」

「あれ?名前じゃないか!今帰りかい?」

「そうだよー。うわぁ、机の上ぐちゃぐちゃじゃん。勉強してるの?」

「映画についてね!今大学祭に向けて映画を撮ろうと思ってるんだけどシナリオがどうも上手くいかないんだよなぁ…」

「へぇー…。あ、ここ座っていい?」

「もちろんさ」


どうしようと頭を掻き毟るアルフレッド君の向かいに座り、机の上に散らばった資料の一枚を手に取る


「恋愛物?いいじゃん、やりやすそうで」

「それがどうもインパクトなくてさ。舞台は戦時中パロディーなんだけどどうも上手くいかなくて…。どうしてもありがちな作品になっちゃうんだよ」

「なるほどねぇ。そうだなぁ…。戦時中の映画って男性目線で書かれる事多いじゃない?戦いだとかで。そこを敢えて女性目線でストーリーを展開していくってのもアリじゃないかなぁ」

「あ、それいいかも…。少しそっちの方向で考え直してみるよ!!」

「うん。頑張ってね」

「サンキュー名前」


机に身を乗り出して私の頬にちゅっと音を立ててキスをしたアルフレッド君は、私が呆けている事にも気付かず「よーし頑張るぞ!」とペンを走らせた。
ちくしょう、このプレイボーイめが。
不意打ちが得意だよなぁアルフレッド君って…


「あれ、名前」

「あ、イヴァン!」

「偶然だねーこんなとこで会うなんて。って言ってもここ名前に教えてもらったお店だから当たり前かぁ〜」


ふわふわと笑ったイヴァンは照れくさそうに体をよじらせた。
い、癒されるなぁイヴァンは…!!


「名前…こいつは誰だい?」

「あ、この人はイヴァンだよ。フランシスさんに追っかけられてる所を助けてもらったのがきっかけで仲良くなったんだよねー」

「始めまして。君ってアーサー君の弟だよね?ふふふ、噂はよく聞いてるよ。やっぱりアーサー君に似てるね」

「はぁ?いい加減なこと言わないでくれるかい。俺のどこがアーサーに似てるって言うんだよ」

「うーん…僕を睨むその目とかそっくりなんだけどなぁ」

「似ていないさ。血なんて繋がってないんだからね」

「血なんて関係ないよ。ふふふ、やっぱり似てるなぁ」


薄く微笑むイヴァンを睨むアルフレッド君。って、ちょっと待て!
なんなのこの険悪な雰囲気は…
もしかして気が合わないのかなぁこの二人…


「名前、一緒に座って良い?」

「いいよね、アルフレッド君?」

「いいよ、座りなよ。だけど名前は俺の隣に来るんだぞ」

「ダメだよ。名前は僕の隣なんだから。ねー」

「ねーって…えぇえええー…」

「名前は今度俺とデートするんだぞ!!俺のガールフレンドを盗らないでくれるかい!?」

「僕なんて名前の親友なんだよ。君なんかよりずっと名前と仲良いんだからね」

「俺なんてよく一緒に映画に行くしさ。ここで一緒にコーヒー飲むし家に泊まったことだってあるんだぞ」

「僕もよく彼女のマンションに泊まらせてもらうよ。一緒にウォッカ飲んでさー」

「HAHAHA。そりゃあ良かったね」

「ふふふふふー」


誰か、この状況どうにかしてください…!!
息が詰まりそうなんですけど…!!


「お待たせしました。コーヒー二つね」

「え、エリザぁああ!!」

「どうしたの名前!」

「うう…エリザが神に見えるよ…!!私そろそろ用があるから帰るね!!」

「え!?コーヒーは!?」

「だったら僕の車で送ってあげるよー。トーリスを待たせてあるしね」

「だったたら俺が家までおくるんだぞ!!一緒に散歩しながら帰るの好きだよな、名前!」

「え、何この美味しい展開!!三角!?三角関係なのね!!」

「ちがぁああーう!!」

「君ちょっと名前に近づきすぎだよねぇ。もう少し離れてくれる?」

「嫌だよ。君がどこかに行けば良い話だろう?」


「僕もヤダ」

「じゃあ俺もヤダなんだぞ!!」


何このガキ二人ぃいい!!
こんなの渡しに面倒みきれない…!!!
二人が口げんかをおっぱじめている間にコーヒーの代金だけカウンターに置いた私はそそくさと家に帰った
あんな二人と一緒に居たら色んな意味で体もたない!!
あとで二人に怒られそうだけど…。
あぁ、なんでよりによってあの二人が仲悪いんだろう。
この先お互いが関わる事、ないと良いけど


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