「すみませーん。お酢って売り切れちゃってますか?」


それはまさしく運命やった。

彼女の周りをキラキラとした光が覆っていて、周りの人が目に入らんような感じ…
なにこれ、周りのお客さんが皆ナスやカボチャに見えるわ〜…


「いや、それ本物のナスとカボチャです。ここ野菜売り場ですよ」

「あれ?なんで俺の考えてる事分かったん?」

「声に出てましたよ声に」

「え、嘘やろぉお!?めっちゃ恥ずかしいやん!」

「(大丈夫か、この店員さん…)」


あかん、このお客さんめっちゃかわええ!!
不思議そうな目で俺を見て…
何コレ、心臓バクバク言ってるわ〜


「あのー。お酢って無いんでしょうか?」

「え!?あ、そうやった。お酢でしたな〜!!今持ってきますんでちょっと待っててください!」

「あ、すんません…」


あかん、ほんまにさっきから心臓の音が煩い。
こんなん初めてやわー
もしかして俺病気なんやろか…
後でフランシスに電話で相談してみよ〜






『ほんとに鈍いねぇお前は』

「えー?そうやろか」

『アントーニョ、そのドキドキはまさしく恋だ。とうとうお前にも春がやってきたんだな〜。お兄さんちょっと泣けてきちゃう』

「そうかこれが恋っちゅーもんかぁ〜。ロヴィーノにも報告せんとなぁ」

『で、その相手の女の子はどんな子なんだよ。名前は?可愛い?歳はいくつだ?どこに住んでんの?俺も一度お目にかかりたいね〜』

「それが名前も歳も住んでる場所も分からんねん」

『はぁ!?いったいどこで知り合ったんだよその子とは』

「スーパーや。バイト中に声かけられてん〜」

『積極的な子じゃん。なんて言われたの』

「すみませんお酢って売り切れちゃってますかーって」

『…お前それって店員として聞かれてるだけじゃん…』

「めっちゃかわええ声で一瞬ほんまもんの天使かなにかかと思ったわー」

『一目惚れって奴か…。でもどうやってお近づきになるんだよ。しょっちゅうそのスーパーに来るのか?』

「さぁなぁ。俺普段裏の方の仕事ばっかやから気付かんかっただけかもしれんし」

『よーし。それじゃあ次からはその女の子が居ないかよーく注意してろ!見かけたらちゃんと声かけるんだぞ』

「ええ!!それめっちゃ緊張するやん!?なんて声かけたらええかわからんわ〜!!」

『お嬢さんかわいいねぇ。このあと一緒に食事でも行かなーい?とか。とりあえず相手を褒めろ!それで次に二人で会う約束をしろ。とにかく話をして相手の情報を手に入れないと手の出しようがないからな』

「分かった!!ほんまこういう時だけは頼りになるなぁフランシスは」

『恋のプロフェッショナルのお兄さんに任せておけばどんな女の子でも手の中さ〜。まぁ後はお前の勇気しだいだな』

「よっしゃー俺頑張るで!!」

『その意気その意気』



――――




「今日の晩御飯はちらし寿司だよ〜」

「おぉー」

「悪いな、俺まで一緒に」

「何を今更。今日はひな祭りだしちょっとぐらいはそれらしい事するのもいいよね」

「お前も一応女だしな」

「一応って何ですかアーサー君」

「俺はたまにお前が本当に女なのか疑う時があるぜ」

「んだとこのプー太郎。ベランダから突き落とされてぇのか?」

「う…」

「逆らうな。本当にやるぞ、こいつは」

「あ。そういえば今日帰りにスーパーに寄って買い物してたんだけど、変な店員さんが居てさぁ〜」

「へぇ〜。どんな奴だ?」

「とにかく挙動不審というか怪しいと言うか…。あ、そういえば外国人っぽい顔つきしてたのに関西弁だった」

「へぇ。そういえば俺にも関西弁の知りあい居たな…」

「俺にも居るぜ。友達に一人」

「え。ギルって友達居たの?」

「どういう意味だよ…」

「そんな性格だからてっきり友達は居ないもんだと思ってたよ」

「なっ…!!俺様は昔っから男にも女にも好かれる性格なんだよ!!友達だって100人は居るぜ!!」

「じゃあ今度紹介してよ」

「それは嫌だ」

「何コイツ意味わかんねー」

「黙れ貧乳」

「…上向け、ギル。次は鼻にビール注ぎ込んでやる。一缶分な」

「ちょっ何すんだよおい!!やめっ、ちょっうわ、らっらめぇぇええええーー!!!」

「なっ、お前らくっつきすぎだぞ馬鹿ぁ!!」








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