「名前名前〜!!!今週末俺の母校で文化祭があるんだけど一緒に行かないかい!?もちろん反対意見は認めないんだぞ!」

「それってもしかしてこれの事?」

「あれ?なんで君がそのチラシ持ってるんだい?」

「実は知り合いの子ここに通っててね。是非来てくれって」

「なんだよ〜先を越されちゃったなぁ…。良ければ俺と一緒に行かないかい?けっこう派手な文化祭だからきっと楽しめるんだぞ!」

「いいねー。あ、でもコブ付だよ?二つも」

「コブ二つって…」

「ギルとアーサー」

「えぇえええ!!嫌だよ!!二人っきりがいいんだぞ!!」

「でももう約束しちゃってるし…」

「いーやーだぁぁあああ!!」


ハンバーガーを片手で握り潰したアルフレッド君はコーラの入った紙コップをテーブルに叩き付けた。


「どうして君はいつもギルギルアーサーアーサーって!!ちょっと過保護なんじゃないのかい!?」

「そんな事…ないよね?」

「あるよ!」

「あるのかな」

「あるんだぞ!!」


あぁもう、ハンバーガー強く握り締めるからぐちゃぐちゃになっちゃってるじゃないか。
髪ナプキンでアルフレッド君の手に付いケチャップを拭き取ると「ったくもう…」と呆れたような口調で言われた。
呆れてるのはこっちだよ!食べ物を粗末にすると罰が当たるぞ!


「俺は君と二人っきりでいきたいんだよ。お店やバザーなんかもあるから一緒に見回ったりしてさ。俺高校生の時は実行委員とかやってたから文化祭をちゃんと回ったことないんだよ!だから君と一緒に思う存分楽しみたかったんだぞ!」

「アルフレッド君…」

「お願いだよ名前ー…」


そんな目で見られちゃったら断れないじゃないかぁあ!!この子私が年下に弱いって事知っての事じゃないかな…。
ああもう、そんな子犬みたいな目で私を見ないで!


「わ、分かったよ…。でもギルとアーサーも一緒に連れて行ってあげるって約束しちゃったし…。アーサーなんてやたら楽しみにしてるみたいだから一緒に連れて行く。だけど私はアルフレッド君と一緒に見て回るからさ?あの二人は野放しにしておいても大丈夫でしょう」

「えぇー…なんか邪魔されそうなんだけど」

「大丈夫大丈夫。ね?」

「うー…。じゃあちゃんと一日俺につきあってくれるって約束するなら良いんだぞ!」

「するよ」

「よし!決まりだ!!」

「マシュー君は一緒に行かないの?同じ学校だよね〜?」

「あ、僕はその日用があるから行けないんです」

「そっかぁ。残念だね」

「ってマシュゥウウ!?君いつからそこに居たんだ!?」

「ず、ずっと一緒に居たよ…」

「隣に座ってんのになんで気付かないのかなぁ…」




―――




「と、いうわけだから。二人は野放しにしておくから適当に見て回っててね」

「って、おい!それちょっと酷くないか!?」

「だってアルフレッド君のお願いなんだもーん」

「えぇなぁ文化祭。俺も休みやったら一緒に行けるのに…」

「てゆーか文化祭って何すんだよ?」

「文化祭と言えば体育館でのライヴですよギルベルトさん!魔女っ子やバニーの格好をした美少女が素敵な歌を聞かせてくれるはずですよ!」

「本田さん、座って食べてください」

「あ、すみません」

「あの学校色々と派手だからな…。体育祭なんかも凄かったぞ」

「アーサー見に行った事あるの?」

「そりゃ…。一度弟達の勇姿を見ようと…」

「内緒で見に行ったんだね…」


コソコソしないと弟達の勇姿を見られないなんて可哀想だなぁアーサーも…
それにしてもやっぱり学生さんは良いよね。
文化祭に体育祭。学校の年間行事ってやっぱりワクワクするもんだよ。
うちの学校は田舎だから芋掘り大会なんてものがあったよなぁー…
あれも一つの良い思い出だ。


「私も時間があれば是非顔を覗かせていただきますね」

「本田さんは来なくていいです」

「何故…!!」

「どうせ女子校生目当てでしょう本田さんは!!文化祭でクレープ屋やってる女子萌えーとか!!」

「痛いところを付きますね名前さん。確かにそれもありますが名前さんのアルフレッド君の素晴らしいイチャつきっぷりもこの目に収めておこうと思いまして。歳の差萌えです」

「馬糞に頭突っ込んで死んでください」

「ハァハァ…もっと蔑んでください名前さん!!!」

「名前ちゃんの冷ややかな目見てたら俺もなんか興奮してまうわ〜」


はぁはぁと息を荒らす二人を無視して食べ終わった後の食器をキッチンへ運ぶ。


「お前も高校の時やったんだろ?文化祭。やっぱ都会と田舎じゃ違うのかよ」


ビール片手にふらふらと隣にやってきたギルは何をするでもなく、食器を洗っている私のエプロンの紐を引っ張ってくるくる指遊びをした。


「どうなんだろう。私の高校は結構地域交流も兼ねててね。農業科や畜産科の生徒が卵や肉を叩き売りしてたりしてたなぁ…」

「高校の文化祭で叩き売りって…」

「あとは無難にお化け屋敷とか。あと文化祭限定の校内ラジオがあってねー。一年生の時憧れの先輩がパーソナリティーをやってて文化祭の出し物そっちのけで教室で放送されてるラジオ番組聴いてたよ〜。いやぁ、あの時は若かった」

「それって…男か?」

「先輩?男だよーもちろん。当時の生徒会長で素敵な人だったよなぁうんうん」


女生徒は皆彼に憧れていたものだ。
もう随分前の事だけど今でも鮮明に覚えてるなぁー…
3年の時は喫茶店もやったっけ。
楽しかったよなぁ…


「それでその先輩とはどこまでいったんですか?」

「なんですか本田さん、そのメモ帳は…!」

「お気になさらず。名前さんが憧れを持つぐらいですから凄い人だったんでしょうね…。告白なんかしたんですか?ラブレターを下駄箱の中にこっそり忍ばせたり…」

「何時の時代の告白ですか!してませんよ。それに憧れってだけで、好きとかそんなんじゃありませんでしたし」


これ以上話すと本田さんのネタの餌食になりかねないので洗い物を済ませてお風呂へと向かう。
ともかく今週末はアイス君の学校で文化祭なんだから期待を持ちつつ楽しみにしていよう!
アイス君のクラスはどんな出し物をするのかなぁ…。
たこ焼きやさんやヤキソバ屋さん…
お化け屋敷なんかも案外嵌り役かもしれない。
当日はアルフレッド君に振り回されそうだけど、アイス君の姿はしっかり目に納めておこう!
写真も何枚か撮っておこうかなぁ…。
デジカメ最近使ってないからどこに閉まったか忘れちゃったよ…!
もう古いしこの際だから買い替えて…

って、なんだろうこれ。自分の子供の勇姿を記録しようと頑張る親みたいな事してるよ私…!!
だけどアイス君って本当の弟みたいで可愛いし…。こんな気になるのもしょうがないかなぁ。
せっかくだから本田さんにカメラを借りよう。沢山撮って焼き増ししてあげればアイス君も喜ぶよね!!
なんだかすっごく楽しみになってきた!
早く週末にならないかなぁ〜!!


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