「エリザ!お誕生日おめでとう!

「ありがとう名前!!」


沢山の花束にもみくちゃにされたエリザ。
今日はエリザの誕生日だ。
仕事帰りにプレゼントを持ってカフェに向かうと、常連客の人たちから花束をもらうエリザの姿があった。


「エリザー。わたしからも花束ね!」

「花束も?あぁもう本当に大好きよ、名前!」

「ちょっ!!花潰れるからハグはダメ!!」

「あっ、そうよね!!」

「はい、お誕生日おめでとう」


綺麗に包装された花束をエリザに差し出す。


「え…。ゼラニューム…?」

「ギルに何の花がいいか相談したらこのお花が良いって言われたんだけど…」


それは先日、エリザにプレゼントするための花を何にするか迷っていた時の事。
「お祝いには薔薇だろう」とアーサーに言われ、薔薇を注文しようと電話に手を伸ばした時だった。
「ゼラニュームがいいぜ」と、ギルがポツリと呟いた。


「エリザの好きな花なの?」

「えぇ…。あいつ、覚えていたのね」

「流石は幼馴染ってやつ?」

「そんなんじゃないわよ。ったく、変なとこで記憶力いいんだから…」


花束を受け取ったエリザは少し照れくさそうに笑って「ありがとう」とお礼を言った。


「あのね、名前!!聞いてくれる!?」

「え、なになに。どうかしたの?」

「実はこのあとローデリヒさんからお食事にに誘われてるのよ…!!もう、ドキドキしちゃって!」

「えっ!?それってデート…」

「ち、違うの!!今日は誕生日だからって…その、だから…」


真っ赤になったエリザは花束で顔を隠してごにょごにょと呟いた。
可愛いなぁエリザは…!!


「大丈夫だよエリザ。楽しんできてね!!」

「えぇ!!」


いいなぁエリザ。幸せそうで。
店内の奥を見ると、ピアノの前で行ったり来たりと挙動不審な行動をしているローデリヒさんがいた。
あれ、どうしたんだろう…


「ローデさーん。どうしたんですか?」

「あら、名前ですか」

「なんか挙動不審な人になってますけど、どうかしたんですか?」

「いえ、少し悩んでいる事がありまして…」


顎に指を添えたローデリヒさん。
悩み事って…


「私で良ければ話聞きますよ?」

「貴方が、ですか…。まぁ相談相手が居ないよりはましですね」

「どういう意味だ」

「実はこのあとエリザベータを食事にお誘いしていまして…」


ゴホン、と咳払いしたローデさんは少しだけ頬を染めた。


「今日は誕生日ですし、お祝いの言葉を伝えたいのです。ありきたりな言葉しか思いつかなくて…なんと伝えたらいいものかと」

「単純におめでとうでいいんじゃないですか?お祝いなんですから大事なのは心の問題ですし。それにローデリヒさんが祝ってくれるならエリザはどんな言葉でも喜びますよ」

「そう、ですかねぇ…」

「そういうもんです」


頑張ってくださいと笑顔を向けると、「ありがとうございます」と私の頭の上に手の平を乗せた。
上手くいくといいなぁ、二人のディナー。



――――




「ギルー。今日ね、エリザのとこに行ってプレゼントと花束渡してきたの。ギルってばエリザの好きな花知ってたんだね」

「たまたまだよたまたま!!あいつん家の庭園に咲いてたの思い出しただけだぜ」

「へぇー。ギルは花に囲まれる少女エリザちゃんに恋をしてしまったってオチか」

「んなフラグ立ってねーよ!!」

「二人ともご飯できたでー!親分特性のパエリヤや!」

「美味しそう!!トニーさんのパエリヤってすっごく美味しいんだよね〜!」

「たはー!褒められたら親分照れてまうわぁ〜!!沢山作ったからいっぱい食べてや!」


テーブルの上に置かれた大きなフライパン。魚介類やトマトが沢山つかわれたパエリヤはトニーさんの得意料理らしい。
本人曰く、いつもは魚介類は使わないらしいが…
理由は、聞かないでおこう。


「エリザ今頃ローデリヒさんと食事楽しんでるかなぁ…」

「何、ローデリヒの奴エリザちゃんを食事にさそたん!?やるなぁあの坊ちゃん〜」

「あの眼鏡坊ちゃん…今度会ったらボコボコにしてやる!」

「なに、ギル嫉妬!?男の嫉妬は醜いで〜ギル」

「そうそう。エリザにはローデリヒさんしか居ないんだからギルはお呼びじゃないよ」

「あ、名前ちゃんこのムール貝食べた?下味つけてるからめっちゃ美味しいんやで〜」

「あ、まだ食べてないや〜」

「ほなアーンして、あーん!」

「あーん」

「おひゃぁあああ!!かわええなぁかわええなぁ名前ちゃん!ほんまにあーんしてくれるとは思わんかったわぁああ!」

「ん、美味しい!やっぱりトニーさん料理上手だね〜。休みの日は私が帰ってくる頃に晩ご飯用意してくれてるし本当に助かるよ!なんならずっとここに居てもいいからね」

「ほんまに?俺名前ちゃんの為なら専業主夫にでもなるで!」

「いいね〜。もう嫁にきちゃってくれよトニーさん」

「え、それってプロポーズ…?やめてっ、親分照れてまう!」

「アハハ。トニーさんってば可愛いなぁ〜」

「年上からかったらあかんでー!でも名前ちゃんやからええかぁ!」


二人でゲラゲラ笑って冗談混じりに「あーんして〜」なんてバカップルごっこを始めた。
本当にトニーさんと一緒に居ると楽しいよね!!
美味しいパエリヤも綺麗に食べ終わり、後片付けをしているとギルがソファーの上で不貞寝をしているのに気がついた。
トニーさんとばっか喋って構ってあげなかったらか拗ねてんだなぁー…


「ギール。拗ねてるの?」

「別に…」

「また別にかよ…。ほら、構ってあげるからこっち向いて」

「嫌だ」

「ほっときー名前ちゃん。一緒にテレビでも見ようや」

「うーん…」


ちょっと可哀想な気もするけど、どうせ明日にでもなればまたケロっとした顔で「芋とビール食いてー!」なんて言っているだろう。
ギルの体を揺する手を引っ込めて、立ち上がろうとすると腕をぐっと掴まれた。


「やっぱり構ってほしいんじゃん」

「んなわけねーだろ」

「トニーさんが居るからって強がっちゃってまぁ」

「るせぇ!!」


ぶにぶにと頬を人差し指で突かれ「ケセセセ」と笑い声をあげるギル。
うん、なんだかよく分からない行動だけど本人は楽しんでるみたいだし良いか。
トニーさんの「お前名前ちゃん独り占めすんなや!」という声が聞こえてきて、なんだか3人の生活も慣れてきたなぁなんて。


「お前マジで早く出て行け!屋根なんてもう修理終わってんじゃねぇ!?」

「アホ、そんなに簡単に直るわけあらへんやろ!まぁ俺としては名前ちゃんとここでずーっと一緒に居る方が幸せなんやけどなぁ」

「ぬかせ!塩まくぞ塩!!」

「ギル、どこでそんなん覚えてきたん?お前昔はもっとアホな子やったのに…」

「だれがアフォだ!!」


うん。なんだかとても愉快だ。


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