「んーっ!美味しい〜」

「あまっ…!!これ甘すぎじゃないか?」

「そうかな。これぐらいがちょうど良いよ」


朝から機嫌の良さそうなアーサーが『出かけ先で美味そうなクレープの店見つけたぞ。そ、それから俺今日は帰り早いんだよな…。多分お前と同じぐらいになると思う』なんて事をもじもじしながら伝えてきた。
それじゃあ帰りに一緒にそのお店に行こう?まっまぁお前がそこまで言うなら行ってやるよ!なんてとんとん拍子に話が進み、現在アーサーと一緒にクレープ屋さんに来ているわけだ。


「うん、堪らん美味さだ!アーサーのも美味しいそうだねー」

「ん。食うか?」

「食べる食べる!それじゃあ交換しよう?」

「あぁ」


近くのベンチに座ってアーサーに私の分のクレープを差し出すと、クレープを受け取ろうとしたアーサーの手が数秒止まった。
不思議に思っていると何事もなかったのようにクレープを受け取ったので、私もアーサーの分を受け取った。

私は苺たっぷりのクレープにしたんだけど、アーサーは色んなフルーツが盛り合わせてある豪華なクレープだ。
うーん、こっちもおいしそうだなぁ!!
早速口を開けてかぶりつこうとすると、横から感じる熱い視線。

…なんかアーサーが凝視してるんですけど…。
てゆーか目血走ってるよ!!そんなギラギラした目で見られたら食べにくいだろ察しろよ!!


「あの…アーサーは食べないの?私のクレープ…」

「あ、食うぜ!当たり前だろバカ…」

「何故頬を染める」


少しためらった後にがぶりとクレープに齧り付いたアーサーは幸せそうな顔をしていた。本当に美味しいよなぁここのクレープ!
今度ギルもつれてきてあげよう〜。あ、トニーさんも一緒にね!


「さてと!帰って晩ご飯の準備しないとねー。ギルとトニーさんが待ってるし」

「お前…カリエドまで一緒に住まわせて何考えてんだよマジで」

「何って…友達なら当然じゃん」

「だ、だったら…だったら俺がカリエドと同じ目にあったらお前んとこに泊まらせてくれんのか?」

「アーサーんとこが嵐の影響で住めなくなったら私も住めなくなるじゃん。隣同士なんだし」

「そうじゃなくて!!あぁもう!!」


髪を掻き毟ったアーサーは「隣同士ってのが悪いのか…」と呟いた。
ったく、髪ボサボサになってるじゃん。
歩く動きに合わせてぴょこぴょこ跳ねるアーサーの髪に手を伸ばしてサラサラと髪を撫でる。


「な、何やってんだお前…」

「いや、ここ跳ねてたから」

「そ、そうか…」

「髪伸びてきたね。また切ってあげようかー?」

「ん。頼むよ」

「名前様サロン開店だねー」

「ばぁーか」


ケラケラ笑ったアーサーは私の髪をわしゃわしゃと撫でた。
なんだかよくわかんないけど機嫌戻ったみたいで良かった。



―――




「ただいまー」

「おう」

「あれ、トニーさんは?」

「スーパーのバイトだとよ」

「そっかぁー家が無くてもバイトはしなきゃいけないもんね。何時ごろに帰ってくるんだろう…」

「9時とか言ってたぜー」

「じゃあ晩ご飯温めなおさなきゃね」

「だな!」


自室に入って部屋着に着替え、エプロンをつけてさっそく晩ご飯に取り掛かる。
私はクレープ食べたしあんまりお腹すいてないんだけどねー。
ギルはお腹空かせてるだろうし、早く作ってあげよう
それにしてもギル、やけにテンションが高いような…


「なぁ〜」

「なに」

「なぁなぁ」

「だから何」


のろのろと私の隣までやってきたギル。
どうせまた何かのゲーム買ってとかそんな事だろう…


「構え…」

「はぁ?」


何を言い出すんだと声をあげると、肩にずしりと沈む重み。
後から私の肩に頭を乗せたギルは「なー」と唸っている
な、何…こいつ


「ちょっとギル…」

「アントーニョばっか構いやがって…貧乳女」

「あぁん?」

「露出した格好してんじゃねぇ。襲うぞ」


お腹に腕を回され、ぎゅっと引き寄せられた。
ちょっ、どうしたの今日のギル…!!


「ぎ、ギルさん?」

「お前甘い匂いすんな…」


スンスンと首元に顔を寄せるギル。
ちょっと待て。おかしい。おかしすぎるだろうこの状況。
ギルは私に甘える事はあってもこんなにベタベタしないしあんな事言わない。冗談だって言わないさ。


「ギル…もしかして酔ってる?」

「酔ってねー」

「酔ってるよな確実に。酒の匂いプンプンしてきたぞコラァ」

「あいでででででで!!ひっひゃんなぁああ!!」

「どこだ!!何処から酒持ってきたんだ、ああ!?ビールでこんだけ酔うわけねーだろ!!」

「ほ、ほんひゃは!!」

「あぁ?何言ってるかわかんねーんだよ喋る気ないの?嘗めてんのかお前」

「へめぇはひっひゃへふんらほ!!」


テメェが引っ張ってるんだろ!と涙目になって私が掴んでいる自分の頬を指さすギル。
その表情は赤く染まって、涙目になっているものの目は虚ろだ。
これは酔っていると断定して良さそうだなぁ…。ったく…


「酒、どこ?」

「り、リビングの…」

「仕入先は」

「本田が持ってきて…」

「って一升瓶丸々空けてんじゃん!!ドアホォオオ!!!」

「いでぇええええ!!!」


肘を思いっきりギルの脳天に振り下ろす。
ったく何考えてんだよこいつはぁああ!!
本田さんも本田さんじゃないか、真昼間からこんなお酒持ってきてギルに飲ませて…!!


「おいお前ら何騒いでんだよ」

「アーサー!聞いてよ、ギルが一升瓶空けちゃったんだよ。酔っ払ってんの」

「はぁ?プー太郎の分際で昼間っから酒盛りかよ」

「うっせぇー黙れ眉毛」

「あぁん?地に埋めんぞプー太郎…!!」

「やってみやがれってんだ!!今の俺マジで強いぜ?誰にも負ける気がしねー!!」

「よし、表出ろ表。フルボッコにしてゴミ捨て場に捨ててきてやる」

「んなふりだしに戻るみたいな事やってられっか!お前がゴミ捨て場行けよ眉毛!!」

「あぁ?悪魔に呪わせるぞテメェ…」


今にもブチ切れそうなアーサーと虚ろな目をしたギルが睨み合う。
いい加減私も我慢の限界のようだ。


「よーし、久しぶりにベランダいっちゃうかー」

「ふぇ?な、何してんだよお前…」


にこやか笑顔でギルの両肩に手を置き、思いっきりギルの足を払うとドスンと体が地に沈んだ。
両足を抱えてベランダまで運び、ロープで縛り上げる。


「そこで頭冷やしてろプー太郎が」


言葉を言い残してピシャリとカーテンを閉める。


「はぁ…」

「大丈夫か?」

「平気。アーサー、その辺に散らかってるゴミ片付けるの手伝ってくれる?」

「あ、あぁ」

「それから。あんまりギルに喧嘩売らないでよ。後々面倒くさい事になりそうだし」

「だってあいつが…」

「だってじゃない。分かった?」

「…分かった」


コクリと頷くアーサーの頭をポンと叩き夕食の準備にとりかかる。
それにしてもさっきは驚いたなぁ…
そういえばギルが酔ってるとこ初めて見たかも。
あいつ酒には強いし、いつも私が先に酔って寝ちゃってるし…
もしかして酔うと性格が変わっちゃう癖でもあんのかな…。「構ってくれー」とか言ってたしね。
あのギルがありえないでしょー

だけどそれはそれで可愛いかもしれないなぁ…


「何にやにやしてんだよ」

「べっつにー」

「さっきまでため息ついてたくせに」

「色々あるんだよー」

「わけわかんねーな…」


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