「あいやー。香、どこ行ってたあるか?」

「ちょっと」

「ったく今時の若いもんは何考えてんのかわかんねーあるな」

「王耀さんったらー。そういう王耀さんもまだお若いでしょ?」

「我は若くねーあるよ。少なくともお前よりはうんと爺さんある」

「え…」


うんと爺さんって…
本田さんみたいに年齢不明な人なのか…!?
そういえば本田さんと初めて会った時も同じような事言ってたような…


「ほい、茶飲めある」

「ありがとうございます」

「それで、何かあったあるか?そんなに青い顔して」

「え…いや、それがその…」


そんなタイミングを見計らってか、窓の外でお腹に響くようなゴロゴロという音が鳴った
無意識に体が揺れる。


「あいやー。雷こえーあるか?」

「怖くないです苦手なんですマジで」

「それをこえーって言うあるよ。雷なんて大したことねーあるよ〜」

「だ、だって人に落ちたらどうすんですかぁあ!!怖いじゃないですか!あんなでっかい音でゴロゴロなってピカーッって!」

「ぶふっ。お前可愛いあるな。いいこいい子してやるよー!」


よしよしと私の髪を撫でた王耀さんは満足げに笑った。


「なんか王耀さんってお兄ちゃんっぽいですね」

「まぁ実際にそこにいる香やここで働いてるヨンスや湾の兄貴分あるからな。お前も我の事をにーにと呼んでいいあるよ〜!」

「いや、私は王耀さんで」

「にーにって呼べあるぅうう!」


少し涙目になった王耀さんがなんだか不憫だったので、一言「にーに」と呼ぶと花が咲いたような満面の笑みで「いい子あるねー!」と私の髪を撫でた。


「王耀さーん。歯磨き粉の買い置きってないアルかー?」

「シナティちゃん!買い置きなら戸棚の置くにはいってるあるよ」

「ギャァアアア!!!ちょっ、なに、うわぁああああ!!!」


店の奥からなんか出てきたぁああああ!!!
ちょっ、あれキティちゃん?でも口元とかおかしいような…え、怖い・・・!!


「アイヤー。お客さんアルか?」

「こいつは我の妹分あるよ。今にーにって呼んでくれたあるぅ〜!」

「いつ妹分になったんですか!てゆーか何あれ!?中にオッサン入ってるでしょ!!」

「アイヤー。生意気なガキアルね」


頭にキティちゃんもどきの被り物を被ったオッサン(仮)はずしずしと私の元へ歩み寄ってくる。
怖い怖い怖い!!


「口の悪いガキはこらしめてやるヨー」

「ヒッ…!!」


オッサン(仮)の手がぬっと伸びてきてからだがビクリと反応する。
かと思うと、私の前にびしょ濡れの彼が立ちはだかってオッサン(仮)の行く手を阻んだ


「アイヤー。邪魔すんじゃねーヨ香」

「ユーは歯磨き粉サーチしてろ」

「チッ。まぁいいヨ。今度シナティバカにしたらただじゃおかねーヨー」


ずんずんと店の奥に入って行ったオッサン。


「あ、ありがとう。えっと…」

「香」

「ほん、君?ありがとうね、香君」


お礼を言うと、また顔をプイと背けられた。
恥ずかしがり屋なんだろうか…


「シナティちゃん可愛いあるなー」

「可愛い!?あれが可愛いんですか?」

「お前もシナティちゃんグッズ買って行くよろし。安くしておくあるよー」

「要りません」

「一つぐらい…」

「いりません」


机に顔を伏せて落ち込む王耀さん。
ちょっと可哀想だったかな…
そうかと思うと、いきなり店内の入り口が開き風が中にビュオと音をたてて入ってきた


「え…?」

「あれ?名前じゃない。なんでこんな所にいるのかなー」

「い、イヴァン!」

「わーい名前だ〜!ふふふ、こんな所で会えるなんてラッキーだなぁ」


嬉しそうに微笑んだイヴァンはハグを求めるように両手を伸ばした。
イヴァンの体って大きいからハグしようとしても一方的に抱き込まれるだけなんだよなー…


「お、お前イヴァンと知り合いだったあるか!?」

「そういう王耀さんも…。世間って狭いですね」

「本当にねー。あ、香君もこんにちは」


イヴァンが香君に笑顔を向けると、香君は渋い顔をして少し身構えていた。


「イヴァン、今日は何の用あるか?この間の件ならもう済んだはず…」

「ちょっと近くまで来たから寄っただけだよ王耀くーん。そんな怖い顔しなくてもいいのに…」

「それより名前を離すよろし!!おめぇのでかい図体で押しつぶされたら大変あるよ!」

「名前、嫌だった?」

「え、いや…」


イヴァンの悲しそうな目を見ると「嫌」なんて言えるわけがない。
私ってイヴァンに弱いからなぁ…


「嫌じゃないよ」

「わーい!名前大好き〜」

「ぐふっ!ちょっギブギブギブ!!」

「あいやー潰れるあるぅうう!!」」


なんとかイヴァンの腕から開放されると、香君が少し心配そうに私の顔を覗いた。
か、可愛いなぁこの子…


「そういえば名前はどうしてここに居るの?仕事は?」

「会社が停電になっちゃってね。電車も止まってるしここでちょっと休ませてもらってるんだ」

「じゃあ僕がマンションまでおくってあげるよ!」

「え、いいの?」

「いいよ。僕達親友だもんね!その代わりまた名前の作った料理が食べたいなぁ〜」

「いいよ。何時でも来てねー。あ、今度はトーリス君やフェリクス君たちも一緒に!」

「分かった、無理矢理連れて行くよ」


私の鞄を持ったイヴァンは王耀さんに「それじゃあまた来るね」と告げて外へ向かった。
私も王耀さんと香君にお礼を告げると、真剣なかおで「あいつと一緒で大丈夫あるか!?何かあったらすぐ電話するよ!?これここの電話番号ある!」とメモ書きを渡された。
…イヴァンってそんなに信用ないのかな。

イヴァン、性格にはトーリス君の運転する車でマンションの前まで送ってもらいなんとか帰ってくる事ができた。
いつもより早すぎる帰宅に驚きながら玄関まで迎に出てくれたギルに、「疲れたー」と肩にボスっと頭を置くとぎこちなく背中をポンポンと撫でられた。

どうやら外の雷は収まったようだなぁ…
良かった、ギルにみっともない姿見られなくて。怯えてるとこ見られたら絶対にからかわれるもんねー。
部屋着に着替えてソファに座るとなんだか眠くなってきたので、ギルの肩を借りて眠る事にした。

あれ、なんかこれすっごく落ち着く…
やっぱりギルと居る事が心の癒しになってんだなぁー私
ありがたやありがたや。

落ちていく意識の中、ギルの「ったく…」と呆れたような声が聞こえた。

ふわりと、幸せな眠りに落ちた。


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