「あの三人がつけてきてたのかい!?本当に気持ち悪いな!特にアーサー」 「そうよ!まぁ本田さんはいいじゃない。名前の事を実の妹のように可愛がっているんですものね。問題なのはあのプー太郎よ」 「なぁエリザベータ、前から気になってたんだけど君って菊の事が好きなのかい?やたら菊の肩を持ってる気がするんだぞ!」 「やぁね、そんなのじゃないわよ。菊さんは憧れの人なの!私もいつかあの人のように…うふふ」 「なんでこっち見てニヨニヨ笑ってんのエリザさん」 「やだ、心配しなくても何もしないわよ」 昨日のお見合いの話しを直接エリザに伝える為お店へ行くとアルフレッド君に偶然出会った。 どうやら彼はこの店の常連になりつつあるらしい。ここのコーヒー美味しいもんね! そんな訳でマスターに休憩をもらったエリザとアルフレッド君の三人でお喋りタイムというわけなのだ 「てゆーか何でお見合いの話俺に教えてくれなかったんだい!?俺だったらそんなお見合いぶち壊してやるのに!」 「具体的にどんな風にぶち壊すのかしら?」 「そうだな、まず窓ガラスを体当たりで割ってそのままお見合いしてるテーブルの上にかっこよく降り立つのさ!そして”この女は俺のものだぜベイビー!”って叫んで名前をお姫様抱っこして風のように立ち去るのさ!」 「あら素敵!」 「どこらへんが素敵?ねぇ、具体的にどの辺が素敵なの?喜べる要素が全く見当たらないんだけど!」 「やっぱり台詞は”俺の女に手ぇ出すんじゃねーよボーイ”の方がいいかもしれないな!」 「”お迎えにあがりました姫君。さぁ私と一緒に行きましょう!”でもいいんじゃない?」 「やだよーそれって俺のキャラじゃないんだぞ!俺はもっとかっこよくヒーロー且つハードボイルドなのが好きなのさ!」 「ゴルゴ13みたいなのがいいのかしら?」 「ゴルゴとスーパーマンを合わせたようなキャラがいいんだぞ!」 「それってすっごくカオスじゃない。どちらか一つに搾った方がいいわ」 「んー、それじゃあスーパーマンにしておくよ」 「あの、話について行けないんですけど…」 濃いよ、なんだか濃いよこの会話… アルフレッド君のキメ台詞なんてどうでも良い。結局お見合いは破局になって丸く修まったんだからそれでいいじゃないか! 「それじゃあ私はそろそろ帰るね」 「え、もう?」 「帰りに食材買って帰らないといけないしね。ご馳走様〜」 「あ!俺今日は名前の家でご飯食べたいんだぞ!」 「いいよ〜。今日は天ぷらなんだけど大丈夫?」 「OH!テンプラ大好きなんだぞ!サツマイモとカボチャが一番好きだぞぉお!」 「じゃあ帰りにスーパーで買って帰ろうね」 「ふふふ。微笑ましいわ。まるで母親と子供みたい」 「えー恋人同士って言ってくれよ〜!」 「それじゃあまたねーエリザ」 「また来てね!」 ――― 「くっそー!!君すっごく強くなったじゃないか!」 「伊達に毎日のように本田に鍛えられてねーからな!よっしぁああ!くらえー!」 「うゃぁあ!!ティナがぁああ!!」 「はっ!口ほどにもねぇぜ」 「ちょっと大人気ないぞ君〜。次はバースで勝負を挑むぞ!」 「じゃあ俺はかすみにすっか」 「ダメだぞ!かすみは俺のなんだからな!」 「んだよそれ。じゃああやねにしといてやるよ」 何やら格ゲーに熱中している二人を他所にせかせかと晩ご飯の支度を始める。 最近気付いたんだけど、なんだかんだ言ってギルも年下に弱い所あるよね。 さっきも他のゲームしてる所にアルフレッド君が「格ゲーしたいんだぞ!」とごねて、最初は嫌がってたけど結局折れてたし。 これがアーサーやフランシスさんだったら絶対に折れてないだろうなぁ、ギルは ―ピンポーン 「うわっ。眉毛がきたぜ」 「えぇえ!?アーサーも一緒に夕食食べるのかい!?」 「お前の兄貴なんだからお前追い払ってこいよ!」 「嫌だよ。顔も合わせたくないんだぞ!」 「こらこらアーサーをのけ者にしない。他に友達居ないからここに来るしかない子なのにそんな事言ったら可哀想でしょうが」 「いや、お前が一番ひでーだろ」 「いや、ナイスだぞ名前!」 親指を立てるアルフレッド君に親指を突き返し玄関へと向かう。 案の定そこに立っていたのはいつもと同じ眉毛だった。 「いらっさーい。今アルフレッド君来てるんだよ」 「はぁ!?なんでまた…」 「晩ご飯一緒に食べる事になってさぁ。まぁたまには兄弟揃って晩ご飯もいいんじゃない?」 「ま、まぁお前がそこまで言うなら一緒に食べてやらない事もないけどな!!」 「はいはい」 ツンデレめ! リビングに戻ると、アーサーの顔をみてあからさまに嫌な顔をしたアルフレッドくんとギルが「帰れ帰れ!」とアーサーに野次を飛ばした。 ちょっ、傷つきやすいんだから苛めちゃ… 「そうか…俺邪魔者なんだよな」 「コルァアア!!アーサー苛めんなって言っただろーが!!追い出すぞお前ら」 「何キレてんだよ」 「きっと生理中なんだと思うぞ」 「小学生かお前ら。マジで晩ご飯抜くよ?」 何で意気投合してんだろこの二人… まぁいいや、さっさと晩ご飯作っちゃおー。 後はエビとイカを揚げて… 「あつっ!」 パンっと弾ける音と共に痛む右手。 イカとかってよく油跳ねちゃうんだよねぇ… 「大丈夫か!?」 「平気へい、」 「大丈夫じゃないだろバカ!火傷舐めんなよ!早く冷やせ!」 「え、あ、うん」 アーサーに右手を掴まれ油の跳ねた部分を水道の水で冷やされる。 「ったく…痣にでもなったらどうすんだよ、バカ」 「ならないよ、これぐらいで」 「ならない保障もないだろ」 「チッ…頑固者」 「なっ…!!お、俺はお前の事心配して言ってだろ!!」 「ごめんごめん。ありがとうねーアーサー様」 「馬鹿にされてる気がするんだが…」 「してないって」 一分ほど水で冷やすと痛みも引いた。 ったく、これしきでアーサーは心配性なんだからなぁ… 「あと俺がやってやるから薬塗っておけよ」 「やめて!キッチンに立たないでぇえええ!!」 「な、なんだよそんなに慌てて…」 「お願い!やるから!アーサーが料理なんてしたら物体Xが産まれるじゃん!新しい生物ができちゃうよ!」 「そ、そんなに俺の料理って変か…?」 「変っていうよりクソ不味い」 「そ、そうか…不味いのか…」 蹲って膝を抱えるアーサー。 兎に角火傷しちゃった場所を薬でも塗っておこう。 「名前、大丈夫かい?」 「平気平気ー。これぐらいよくある事だしね」 「そっか。良かった」 「ねぇ、つかぬ事を聞くけどね、アルフレッド君」 「なんだい?」 「ギルはなんで床とキッスをしているのかな」 「あぁ。確か君が”あつっ!”って声を上げた時にいきなり立ち上がってそのまま自分の足に躓いてずっこけてたんだぞ」 …いったい何がしたかったんだろう、こいつは。 地面にうつ伏せに倒れたままのギルの頭をペシペシ叩いて、体を少し起こして顔を覗くと涙目になっていた。 ちょっ、何で泣くの!? アーサーはキッチンの方で膝抱えてしょげてるし… なんなんだろう、これ… 「HAHAHA!君って男運ないよな!こんなのが同居人と隣人なんてとっても不憫だよ!」 「え、私が?この二人が不憫じゃなくて?」 「あぁ、君が不憫さ。いっその事俺の家に来るかい?一生楽させてあげるぞ!」 「あー…考えておくよ」 その後は何事もなかったのように出来上がった天ぷらを4人で平らげ、アーサーはアルフレッド君を車で送って行くと行って兄弟揃って帰っていった。 汚れた食器を洗おうとした時、横から割って入ってきたギルに無理矢理スポンジを奪われ「お前はテレビでも見てろ」と照れくさそうに呟かれた。 もしかして火傷の事気にしてくれてんのかな… こういう時は思いやりがあるというか、優しい子なんだよねぇギルは。 「いい子いい子」と頭を撫でると「撫でるな!」と言い返されたけど本当に嫌がっては居なさそうなので撫で続けることにした。 ちくしょう…憎憎しい時もあるけどやっぱり可愛いじゃん、ギル . ←|→ |