なんだか今日は体がだるい。
なんとか仕事は終わらせられたけど、家に帰って晩ご飯作るの面倒くさいなぁ…

何か買って帰ろうか。それとも出前に…


「あ」


そういえばこの間スーさんとティノ君と一緒に行った中華料理屋さん、テイクアウトも出来るって言ってたよね。
時間かかるだろうし、今から行ってもダメかなぁ…。
よし、ダメ元で行ってみよう!



―――


「すみませーん」

「いらっしゃいませ!」

「あの、テイクアウトさせていただきたいんですけど…」

「分かりました!ご注文はどちらにされますか?」


良かったー!
お店が混むにはまだ早いのかな。店内にはお客さんが居なかった。


「じゃあエビチリと餃子と…から揚げと肉団子の甘酢あんかけお願いします」

「畏まりました。そちらに掛けてしばらくお待ちください」


以前と同じウエイトレスの女の子はニッコリ笑ってお辞儀をした。
可愛いなぁ


「耀さーん!テイクアウトのオーダーっす!」

「我は休憩中あるよ!香にやらせろある」

「チッ。香ー、頼んだわよー」

「ウイッシュ」

「その返事やめなさいって」


なんだかアットホームなお店だなぁ。


「あぁあああ!!この間のお客なんだぜ!!」


店内に大きな声が響いた。
声の発せられたであろう方を向くと、学生服を着た青年が私を指差している
え、何!?


「え?私!?」

「ウリナラマンセェエエエエエ!!」

「うおっ!?」


後ろから抱きつかれた。
なっなんなのこの子ぉおお!!
え、ちょっなんか手があらぬ所を触っていませんか!?
っておいおいおい!!


「アイヤァアア!!何してるかテメェエエ!!」

「兄貴!こいつなんだぜ!!この間言ってたお客!!」

「何やってるのよヨンスーッ!!!」

「いでっ!!湾がぶったんだぜぇええ!!あいごぁああ!!」


む、胸触られた…。
確かこの子この間ウエイターやってた子だよね…


「すまねぇある、うちの餓鬼が…」

「あ、あはははー…。いえ、大丈夫です」

「本当に申し訳ありません!!よく言い聞かせておきますので!」

「大丈夫ですよ」

「お前テイクアウト注文したお客あるね?もう少しでできるからまってるあるよ」

「はい、ありがとうございます」


誰だろうこの人。年下に見えるけどどこかどっしり構えてると言うか…


「それにしても、よく似てるあるね…」

「え?」

「なんでもねーあるよ。それよりお前前にもうちに来てたあるな?我はここの店長兼料理人の王耀ある。これからも贔屓にしてくれある」


ん?今、なんと?


「えっと…ぱ、パードン?」

「何で英語あるか!?」

「いや、すみません…」


て、店長…?こんなに若そうなのに頑張ってるんだなぁ…。
周りの人達も若い人たちばっかだし。


「お前名前はなんて言うんだぜ?」

「え?あ、名前です」

「俺はヨンスって言うんだぜ!!」

「ヨンス君かぁ」


なんだろうこの口調は。でもなんだか可愛いなぁ…。
でもこの子さっき胸触ってきたよね…。偶然、だろうか


「名前のおっぱいの起源は俺なんだぜ!」

「バカヨンス!!何抜け駆けしてんのよ!!私が先に目ぇつけてたんだからね!!」

「お前の目つき厭らしいんだぜ!!」

「いいじゃない好みのタイプだったんだもん!」


な、なんだかエリザのような空気を感じる女の子だなぁ…。


「あいやー。喧嘩してると追い出すあるよ。ほい、テイクアウトの料理お待たせしたある」

「ありがとうございます。お幾らですか?」

「いらねーある。うちのが迷惑かけたし今回はサービスしとくあるよ!その代わりまた食べに来いある!」

「え、そんな悪いですよ!!」

「金持ってそうなオッサンを連れてくればチャラにしてやるある」

「はぁ…」


商売上手と言うか…
今度デンさんとノルさんでも連れてこよう。あの人たち金銭感覚皆無だから食べれるだけ食べるに決まってるからなぁ


「ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えて…」

「名前!!今度来た時はいっぱいお喋りするんだぜ!」

「ヨンス!!すみません、煩い奴で…」

「アハハ。それじゃあ本当にありがとうございました。ご馳走様です」

「また来るヨロシ」


王耀さんはにっこり笑って私の頭に手を乗せた。
こ、子供扱いですか…!!
あれ?なんだかこの手、誰かに似てるような気が…
気のせい、だよね


―――




「うんめぇええええ!!この餃子うますぎだぜーー!!」

「でしょ!?カリッとジューシーだよねぇ〜。店長さんもいい人だったし店員さん達もいい人でさぁ。また今度一緒に食べに行こうね」

「行く、絶対行く!」


―ピンポーン


「あれ、お客さんかな…。はいはーい、どなたですかぁ〜」

「こんばんわ、名前さん」

「本田さん」

「ネタ徴収にやってまいりました」

「帰れ」

「そんないけずな…」

「いけずじゃありません。ったく…」


一眼レフを首から下げメモ用紙とペンを持った本田さんは相変わらずの笑顔を浮かべた。


「あれ?この匂いは…」

「あ、本田さんも食べます?今日は中華なんです」

「そうでしたか。それじゃあいただきましょうか…」


本田さんの分のお箸とお皿を用意し食卓に並べる。
なにやらまじまじと料理を見つめる本田さんを不思議に思ったギルが首をかしげた


「中華料理がそんなに珍しいのか?」

「え!?あ、いえ…そんなわけでは…」

「どうぞ遠慮なく食べてください。ここの料理すっごく美味しいんですよ!」

「ありがとうございます」


遠慮がちに餃子を口に入れた本田さんは、少し停止し小さくため息をつく


「あれ、美味しくありませんでしたか?」

「いえ、美味しいですよ。とっても」

「ならもっと食べてくださいねー。沢山ありますから」

「ありがとうございます」


なんだか複雑そうに笑った本田さんがとっても気になる。
何かあったのかなぁ…
まぁ聞いたって本田さんは何も教えてくれないだろうけどね。


「相変わらずニラが多い餃子です…」

「え?何か言いましたかー本田さん」

「いえ、なんでもありませんよ。それより餃子にかぶりつく名前さんも素敵ですね。記念に一枚」

「なんの記念だよ」

「餃子記念です」


やっぱり本田さんは本田さんだった。
だけどあの王耀さんの手、なんとなく本田さんの手に似てた気がしたんだよね…
あったかくて大きくて…
雰囲気もなんとなく似てるし

まぁ、気のせい…だよね


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