何時ものように買い物を済ませ、家に帰ると床の上でギルが、ソファの上で本田さんがすやすやと寝息を立てていた。 「テレビつけっぱなしじゃん…」 アニメのDVDを見ていたのか、テレビはDVDのメニュー画面を映していた。 見ている間に寝ちゃったんだろうな… 二人を起こさないようにそっと自室に入り、部屋着に着替える。 起こした方がいいのかなぁ…。 でも気持ち良さそうに寝てるもんね お腹を出して寝ているギルの上にタオルケットを被せる。 本田さんはソファだし着物着てるから大丈夫だよね。 「それにしても熟睡してるなぁ二人とも」 ギルはともかく、本田さんが人前で無防備な姿を見せるのは珍しい。 疲れてたのかなぁ…。 それにしても、丸まって眠る本田さんはいつもより幼く見える。 それに引き換えギルはお腹出してるし手足伸ばして豪快に寝てるし… 「もう少し上品に寝れんのかね君は…」 寝息をたてているギルの鼻を摘むと「ふぎっ」と顔をゆがめた。 おもしろーい… 「かわいいなぁこの野郎」 ギルがうちに来てもう3ヶ月になるけど、最近になってギルの事ますます大好きになってきた気がする。 今ではもう、ギルの居ない生活なんて考えられないもんなぁ…。 これってギルに依存してるって事なのかなー… 「依存、かぁ」 もしギルが居なくなったらどうなるんだろう。 元の生活に戻る?ギルが来る前の私って、どんなだった? 今と変わらず仕事して、アーサーとご飯食べて、本田さんと挨拶を交わして… トニーさんやフランシスさんはどうだろう。ギルが居なかったら、今みたいに仲良くなれていないかもしれない。 他の皆だってそうだ。 ギルが居なかったら、今とは違っていたかもしれない。 「うわぁ…ギルが居てくれてよかったー」 そんなのやだもんね。今の生活って、私にとっては幸せっていうか… だとしたらギルは幸せを運んできてくれた人って事か… 「ずっと、一緒に居れたらいいんだけど ね…」 ―パシャッパシャッ 「…」 「ハァハァハァ…」 「本田さん…」 「何ですかマイスイート」 「何時から起きてたんですか?」 「えぇ、名前さんが帰ってこられたあたりでしょうか…」 「最初からじゃないですかそれ!!こんの狸ジジイ!!」 「あまりにも美味しい展開になっているものでつい…。あ、どうぞそのまま。なんならそのまま襲っちゃってもいいんじゃないですかね」 「誰が襲うか!!ってゆーか本田さんが襲われたいんですか?沈めますよ太平洋に」 「私を襲う!?そ、そんな名前さん…ギルベルトさんがいらっしゃる前で…」 「おーい何素敵な勘違いしてるのかなー」 はぁはぁと息を荒らす本田さん。 っていうか本当に空気読め。そして自重しろ。 ―――― 「ギルーお風呂あがったよー」 「おーう…って、うぎゃぁあぁあああ!!なななな、なんて格好してんだよお前ぇえええ!!」 「だって暑いんだもん。ギル水一杯入れてー」 温暖化の影響か、ここ数日蒸し暑い日が続いている。 5月でこの気温って…。天気予報も真夏日になるでしょうとか言ってたもんなぁ…。 そんなわけで、お風呂上りにキャミソールとショートパンツという露出の高い格好をして出てきたわけなのだ。 それにしても、暑い… 「せめて上着を着ろよ!」 「無理。暑い。水」 「単語を並べるな!!ったく…眉毛が来たらどーすんだよ…」 「あぁ、流石にアーサーの前でこの格好は恥ずかしいよねー」 「俺はいいのかよ…!!」 「まぁ、ギルだし」 「安心しきってやがるなこいつ…!!」 「なんか言ったー?」 「なんでもねーよ馬鹿!!」 コップをテーブルに叩き付けたギルはボスッと勢いよく私の隣に座った。 あーあ。ちょっと水こぼれちゃってるじゃん。まぁ後で拭いておけばいいか。 乾いた喉に潤いを与えるため、一気にコップの水を飲み干す。 「ぷはー!生き返るー!」 「おっさんか」 「誰がおっさんだ」 「ちょっ、さわんな!!」 ギルのサラサラした髪をうりうりと撫でてみる。おうおう顔赤らめちゃって… 「顔赤いよーギル」 「うっせぇ…」 「ギルの髪撫で心地いいなぁ」 「そーかよ」 「シャンプーとかしてみたいなぁー」 「そーか…って、ちょっ…それはどういう…」 「きっとあれだな。犬洗ってるような気分になれると思うんだよね」 「俺が犬か!?」 こういった他愛のない話をできるのが幸せだ。 あぁ、やっぱり私ギルに依存してる。 「ギルを拾って本当に良かった」 「は、はぁ!?何言ってんだよ馬鹿じゃねーの!!」 「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよバーカ」 「じゃあお前も馬鹿だ!!やーいバカバカバーカ!!」 「んだとコラ。吊るすぞ」 「あ、それだけは勘弁」 「バーカ」 うん。幸せだ。 . ←|→ |