「あ、ライヴィス君!」

「あっ名前さん!お、お久しぶりです」

「本当に久しぶり〜。元気にしてた?」


制服姿のライヴィス君は少しビクビクしながらも「はい、元気です」とやんわり微笑んでくれた


「その制服ってこの辺りの高校の制服だよね?そっかー、15歳だもんねー。一年生?」

「はい!」

「あれ…でもイヴァンのとこでも働いてるんだよね?」

「はい。僕ずっとイヴァンさんのところでお世話になってるんです。なのでイヴァンさんに高校も通わせてもらってます」

「へぇ〜そうなんだ。あれ…向こうの子はお友達?」

「え…は、はい…」


少し離れた場所でこちらを見ていた眼鏡の青年。
同じ制服着てるし、学校のお友達かなぁ。
目が合ったので、にこりと笑ってみせると笑顔を返された。
うおぉ、よく見るとイケメンだ!


「名前さん、ですよね?」

「えーっと…」

「初めまして。僕はエドァルドと言います。僕もイヴァンさんの所でお世話になっているんですよ」

「そうなんだー。偉いね、エドァルド君も!」

「そんな事ありませんよ」

「そうだ、良ければ二人とも一緒にケーキでも食べに行かない?この近くで行きつけのカフェがあるんだー」

「でも…」

「大丈夫大丈夫、お姉さんが奢ってあげるから!イヴァンにも私から連絡いれておくからさ」

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…ね、ライヴィス」

「そ、そうだね…」


なんだか二人ともぎこちないなぁ。
緊張してる、わけじゃなさそうだけど。



―――



「やっほーエリザ」

「いらっしゃい、名前。今日は素敵なお友達を連れてきてくれたのね〜。ふふふ、制服ブレザーうふふふ」

「ちょっ、エリザ…若い子の前だからね?自重、ね?」

「解ってるわよ。ふふふ、そんなに焦っちゃって可愛いわね…」

「何、なんか変なスイッチ入ってない!?」

「ねぇ、今夜泊まっていかない?一緒にお風呂に入って背中流しっこしましょうよ!」

「いや、明日も仕事なんで遠慮しときます…」


なにやら変なスイッチの入ってるエリザにケーキとコーヒーと紅茶を注文する。
うわー、未成年の前で今のはちょっと…


「愉快な方ですね」

「アハハハー…普段は普通の女の子なんだけどね、なんか今は変なスイッチ入っちゃってるみたい」

「す、ずっごく美人さんですねー」

「でしょでしょ。自慢の親友なんだー」


エリザが褒められると私まで嬉しくなっちゃうなぁー
…あれ?そういえば今日はローデリヒさんのピアノの音が聞えないなぁ…
お休みなのかな


「お待たせいたしました。コーヒーと紅茶になります」

「ありがとーエリザ」

「あとケーキはサービスにしておくわね」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございますっ!」

「ふふふ。どういたしまして」

「すっごく美味しそう!!」

「実はこれ今ローデリヒさんが焼いたものなのよ」

「ローデさんが!?だからピアノの所に居なかったのかー。焼きたてのいい匂いがするね」

「ゆっくり召し上がってね!それじゃあ」

「ローデさんによろしく言っておいてねー」

「えぇ!」


嬉しそうに微笑んだエリザに胸を打たれた。
うっ…やっぱり可愛いなぁ。
あれぐらい文句なしの可愛さだったらギルも何も言わないんだろうなー…
短足とか童顔とかペチャパイとかね


「本当に綺麗な方ですね。あ、もちろん名前さんも素敵ですよ。ね、ライヴィス」

「う、うん。名前さんはなんというか…可愛らしいです」

「あ、アハハハー。ありがとう」


年下に気を使われてしまった…!!



―――




「てな事があったんだよー。若い子にお世辞言わせちゃうなんてなんだかなー…」

「まぁエリザベータの美貌は確かに凄いけどな…」


食事後にアーサーと一緒にお皿洗いをしつつ、今日起こったことを話した。
それにしてもローデリヒさんの手作りケーキすっごく美味しかったなぁ…
今度会った時に創り方教えてもらおうかな


「お前はアレだ、その…綺麗とかそんなんじゃなくてー…いや、悪いとかそんなんじゃ…」

「なにごにょごにょ言ってんの?手止まってるよ、手」

「ばっ…ばかぁ!!」

「なんで!?」


なんで馬鹿扱い!?まぁ確かにアーサーよりは頭悪いけどさ!


「ぶふっ。不憫だぜ」

「んだと!!お前にだけは言われたくねぇ…!!」

「いやいやお前には負けるぜー!一生報われねーな」

「よし、表へ出ろ。土に埋めてやる」

「ギルー逃げた方がいいよー。その人本気でやりかねないからね」

「マジかよ!?ちょっ、こっち来るな!!」

「逃げるなプー太郎!!!」


大の大人が家の中走り回ってるよ…
下の階の人に文句言われても私の責任じゃないかんな


「てめっ!!名前の後に隠れんな卑怯だぞ!!」

「けっ。玉無しの眉毛野郎が。悔しかったらやってみろよバーカ!」

「んだと…!!」


背中に貼り付いているギルと私の後ろに居るギルを睨むアーサーを無視して洗濯物を畳んでいく。
いちいち相手にしてたら疲れるだけだと学習したからね。

私が黙っているのを怒っていると勘違いした奴らは急に静かになった。
そうかと思うと、どちらともなくにらみ合いが始まり「何睨んでんだよ」「そっちが睨んだんだろーが」とどこぞのチンピラみたいな因縁の付け合いを始めた。
いい加減我慢の限界に達した私は近くにあったプラスチックのハンガーで二人の頭を思いっきり殴った。
意外と痛かったのか、二人は頭を抱え込んで蹲った。

ま自業自得だ馬鹿野郎共


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テーマ「人外ファンタジー」
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