6.永久就職


「アーサーさんアーサーさん、結局私アーサーさんが居ないと何も出来ないみたいなんですよ。だからもう一生アーサーさんの元で働きますから。私がよぼよぼのお婆ちゃんになって”あーしゃーしゃぶっ!!あぁ入れ歯がふぁぁああ!!”ってな感じでいつもアーサーさんの傍に居ます。まぁアーサーさんは祖国様でありますし私より長生きしますよね。だからこれからの数十年の時を私にください。私が死ぬまでアーサーさんは私の所有物ですよ。分かったらとっとと靴をお舐め!!!」

「いっぺん死んでこい」


はぁいグッドモーニン!!
今日も今日とて我が国イギリスは雨、雨、雨。
鬱陶しいメイド服は脱ぎ捨てていつものラフな格好に着替えた私はアーサーさんの隣にピッタリくっつきながらアーサーさんのわき腹を人差し指で突付いた。


「そういえばアーサーさんが帰ってきた日いきなりフランシスさんが消えたんですけど、あれどうなったんですか?」

「あぁ、あれは、だな…」

「ほんとまいっちゃうよなぁ〜。ちょーっと名ちゃんに障っただけでお兄さん部屋の端っこまでぶっ飛ばされたんだよ?しかも蹴り一つで。あー男の嫉妬って本当に醜い!」

「HAHAHA!!バカだなぁフランシスは!!アーサーは変態で人一倍独占欲が強いんだぞ!」

「テメェらいつからそこに居たんだよ!?」

「ちょっと前から」

「俺は昨日からなんだぞー!!!DDD」

「はぁああ!?」

「あ、すみませんアーサーさんに言うの忘れてました。昨夜遅くにアルフレッドさんが私の部屋の窓を体当たりで割って進入してきたんです。そのまま二人で人生ゲームやって朝までフィーバァアア!!」

「HooOO!!フィーバァアアア!!」

「イエェエエイ!!」

「うるせぇええ!!黙れよお前ら!!そして帰れ!!」

「名ってば何度も何度もツーケー星人に連れてかれるんだよなあぁ〜!!」

「ちょっ、アルフレッドさんだってチアガールっぽい女の子にプレゼントしまくって結局ふられてたじゃないっすか!!」

「なんだとっ!!あの子は俺の好みの子だったんだから仕方が無いだろう!!」

「ボンキュッボンな金髪チアガールっていい趣味してますよアルフレッドさん!!私はアーサーさん一筋だから他の男からの告白も断ったもんね!!」

「だけど眉毛の太いキャラ相手に心揺らいでたじゃないか〜。君こそ趣味どうかしてるぞ!!」

「べ、別に眉毛が好きだからときめいたとかそんなんじゃないんだからね!!」

「ワオ!!いますっごく君を殴ってやりたくなったぞ!!」

「どういう意味ですかアルフレッド・メタボ・メガマックバーガーさん」

「なんだと!!まだ俺はダブルバーガーさっ!!」

「お前らいい加減黙れよ…」


わなわなと震えるアーサーさんの顔を下から覗くと背筋が凍った。うん、怒った顔のアーサーさんもかっこいい。
私達晴れて両思いだもん!!人前でもいっちゃいちゃしてやるんだからな!!


「名ちゃーん」

「何がですかオッサン2」

「それいい加減やめような。しかもオッサン1が誰だか気になるから」

「じゃあHIGE」

「泣いて良い?この間も俺の存在わすれていちゃつくしさぁ…」

「完全に空気でしたよねフランシスさん。空気乙」

「ちょっとアーサーっ!!お前の躾どうなってんの!?」

「知るかよ!!ああもう煩いんだよお前らは!!少しはゆっくりさせろよ!?」

「あ、私が肩(とetc)でも揉んであげましょうか!?」

「(etc)ってなんだよ!?」

「野暮な事聞かないでくださいよ〜」

「うげぇ。俺達の前でいちゃつかないでくれよ!!寒気がするんだぞ!!」

「じゃあ帰れ」

「言われなくても。帰るぞーフランシス」

「oui〜」

「あ、お見送りします」

「しなくていいんだよ。お前はここに居ろ」

「え…あ、はい」

「そうだ名、一つ聞き忘れてた事があったよ」

「何ですか?」


いかにも高そうなコートを羽織ったフランシスさんが手招きをした。
フランシスさんの元に行こうとソファーから立ち上がろうとすると腕を強く捕まれて動けなくなってしまった。
もちろん、隣に居るアーサーさんに捕まって。
呆れたように笑ったフランシスさんは私の傍まで近づき、ポンと私の頭にその大きくてお父さんみたいな手を乗せた。


「なぁ名、本当にアーサーでいいのか?」

「…どうして?」

「そりゃ俺らは国だしさ…。お前はただの人じゃねーか。お前にとっては長い人生でも俺達にとっては一瞬のような事なんだよ。これって分かる?」

「分かります。だけどそんなこと最初から気にしてなんていませんよ」

「どうして?」

「案外お馬鹿なんですね、フランシスさんって」

「は?」


鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしたフランシスさんを見上げて、今までにした事のないような得意げな表情を浮かべて見せた。


「私はアーサーさんが大好きなんです!それでいいじゃないですか!!」

「…バカはお前だろ。…ったくこのニート娘は!!」

「って何!?なんでわしゃわしゃにすんの!?アーサーさん以外の人にわしゃわしゃされるなんて汚らわしい!!」

「やっぱお前一度病院行ってこいな」

「そしたら目が覚めてアーサーの元から離れるかもしれないぞ!!DDD」

「あーもー、さっさと帰れお前ら!!」

「はいはい。それじゃあね〜名」

「今度はマリオパーティーしような!!BYE!」


ひらひら手を振って帰っていった二人。
ほっと溜息をついてアーサーさんの顔を見上げると、なんとも不機嫌そうな表情でそっぽを向いていた。


「どーしたんですかアーサーさん。あ、もしかしてあれですか?私があの二人とばかりお喋りしてたからやきもちやいちゃったとか〜。もう私はアーサーさん一筋ですよ!!なんなら誰にも会えないように監禁しちゃっても大丈夫ですから!!」

「どんな趣味だよ!!ったく…いいからあいつらとは関わるなよ」

「ふぁーい」

「間抜けた返事すんな」


うはぁ、なんだか幸せだなぁ。
こうやってアーサーさんと一緒に居れて、両思いになれるなんて夢のようだよね!!もう私アーサーさん以外の何も要らないや。
お腹一杯ではちきれちゃいそうだもんね!!
これからもずっとずっと、アーサーさんの隣でアーサーさんと同じ時間を過ごそう。
だって私アーサーさんの事大好きだし、アーサーさんも私の事大好きなんでもんね!!


「で、お前メイドはどうすんだよ」

「あぁ、メイドはもうダメですね。だってアーサーさんと一緒に居られないじゃないですか〜。もう家に置いてけぼりにされるのは嫌ですもん!!」

「じゃあまたニートに逆戻りかよ!?ちょっとは俺の事も考えて働いてやろうとか思わないのかお前は…!!」

「思いますよ!!だから私決めました。ずっとアーサーさんと一緒に居られる新しいお仕事みつけたんです!!」

「はぁ?なんだよそれ…」

「アーサーさん、私アーサーさんのところに永久就職させていただきますね」

「それってお前…」

「アーサーさんの事はダーリンと呼んだほうがいいですか?それともハニー?あぁ、アーサーさんならハニーって呼ばれるのもお似合いですよねぇええ!!ほんともう、アーサーさん大好き!!」

「バカ!!ったくお前は何考えてんだよ!!」

「アーサーさんのことしか考えてませんが!?」

「本物の馬鹿だなお前!!」


アーサーさんの手が伸びてきて、頭を小突かれるのだろうと反射的に目を閉じた。
途端にふわりと香るアーサーさんのバラの匂いと背中に当たるふかふかのソファーの感触に閉じていた目をそっと開くと、わずか数センチの距離にアーサーさんの顔と視界の端に見える天井。


「アーサーさん、私のことこの先もずっと面倒みてくれますか?」


アーサーさんはいつものような心底呆れたような顔をしてから、「最初からそのつもりだよ、バカ」と優しく微笑んで私の唇にキスの雨を降らせた。



永久就職



(アーサーさんアーサーさん)
(んだよ)
(私とっても幸せです!!)
(…俺も)





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ここまで読んでくださりありがとうございました。
突然の思いつきで始まったシリーズ物ではありましたが、最後まで書くことができてとても幸せに思います。
応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!


2009.8.6

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