3.時給戦争
「アーサーさんアーサーさん、先日お会いしたオッサン2…えー、あー、…あぁ!!そうそうフランシスさん!!あの人面白かったですねー。そうそう、面白いと言えばアーサーさんよく何もない場所に向かって喋ってるじゃないですか〜。あれってもしかして私を笑わせる為のギャグだったんですか?てっきりもう歳だからキちゃってるのかと思ってましたよ〜。すみません、私すっごいKYでしたよね!!こんどからは気をつけますよ〜。手を叩いて笑えば良いですか?」
紅茶を飲みながら新聞を読んでいるアーサーさんに振り向いて欲しくて、ひたすら話題をふってみるものの相変わらず返事は返ってこない。
立ち上がってキッチンから何かを持って来たかと思うとそれは一口では収まらないようなサイズのスコーンで、無言のまま私の口の中に押しつぶすように食べさせるとまた元の位置に戻って新聞を読み始めた。
「んー!!んんんもぉおお!!もぁーふぁーふぁあああん!!!」
「HAHAHA!!!これで少しは静かになるな!!俺の休日の優雅な午後を邪魔するやつは誰であろうと許さないぜ」
「ほがががうううう!!ふぅうううう!!ふぅうううう!!!」
「やっぱり煩い…。ったくその元気はいったいどこから来るんだよお前」
「ふふふもぁーふぁーふぁんは」
「分かった、分かったからそれ飲み込んでから喋れ!!」
自分の飲んでいた紅茶を私に差し出したアーサーさん。
うわぁ、これって間接キッスですか。
ありがたくいただきまーす!!
紅茶でスコーンを流し込みホッと一息。
「ちょっと何するんですかアーサーさん。こんなスコーン食べさせられて、私じゃなかったら死んでますよ」
「そ、そんなに不味いか…?」
「不味くないですよ。アーサーさんの作ったものは生ゴミの味がしても食べられますから。これなんてまだ普通な方ですよ!」
「普通な方ってなんだよ馬鹿ぁああ!!もうお前なんて知るか!!出て行け!!俺のティータイムを邪魔すんな!!」
「えぇー今日はデートしてくれるんじゃなかったんですか!?」
「何がデートだ働きもしないで!!稼げ!!それが俺への一番の感謝の気持ちってもんだろーが!!」
「そこまで言うなら働いてやりますよ!!!」
「言ったな!!やってみろよ!!」
「分かりました!!えーっと、とりあえず家の周りの芝刈ってきます!!」
「それ働くんじゃなくて家のお手伝いだろが!!そんなんで金もらえると思ったら大間違いだ馬鹿!!」
「えーだってパパはお金くれますよ!?」
「お前のパパどんな奴か顔拝みてぇよ…!!」
「呼びましょうか?ムッキムキのレスラーですが」
「いや、呼ばなくていい…」
あ、また大きなため息。
イラつくように髪をぐしゃぐしゃにする姿もなんとも素敵だ。
アーサーさんが困ってるの見るのって好きだからつい我が侭言っちゃうんだよねぇ…
「じゃあ適当にカフェとかマーケットのバイトするとか…ともかくなるべく時給のいい所で働けよ!!だけど危ない仕事はやめろ!!パブなんて持っての他だからな!!」
「働けって言うわりに注文多いっすね」
「ばぁか、これはお前の為とかそんなんじゃなくてだな…」
「はいはい自分の為でしたねー。とにかくアーサーさんがそこまで言うならいいバイト先でも探してみますよ。成せば成る、成さねばならぬなんとかもって言いますよね!!」
「なんだよそれ」
「さぁ」
「だったら俺のとこでバイトするかい?ちょうど今手が足りてなくてさー!!俺の家の掃除と家の掃除と、あと芝を刈ってくれたらそれなりにいい時給で払っちゃうんだぞぉお!!もごごご」
「って、アルフレッドぉおお!?お、お前いつからそこに居たんだよ!?」
「いやー暇だったから数年ぶりに君の家に遊びに来てやろうと思ってさ!!ハハハ、やっぱり胸糞悪いから来るんじゃなかったって後悔してるんだぞ!!」
「んだとこのバーガー野郎!!」
「アーサーさん、この眼鏡知り合いっすか?」
「OH!!代名詞で呼ぶ時はヒーローって呼んでくれなきゃダメなんだぞ!!」
「うわぁ、うざいっすねこの眼鏡!!帰れ!!私とアーサーさんの優雅な午後を邪魔すんな!!」
「お前も帰れ。もうお前ら纏めて帰っちまえよ!!」
「俺はもう帰るんだぞ。それでそこの君、バイトしたいんだろう?俺のとこに来てくれよ」
「眼鏡の家はどこですか」
「アメーリカさっ!!」
「アメリカァアア!?それって出稼ぎ!?なんかかっけぇえええ!!」
「OH!!だったらすぐにでも来てくれよ!!自給はこれぐらいでどうだい?」
「ってぶっほぉおおお!!なにこの眼鏡セレブ!?まさか厭らしいお世話もさせようって気じゃないでしょうねぇええ!!」
「HAHAHA!!俺だって相手は選ぶよ!!」
「あぁ?どういう意味だ!!いけすかない眼鏡ですねーアーサーさん!!だけどこの時給って凄いんですよね?普通より高いですよね?アメリカにも行って見たかったし悪くないなぁ…」
「ダメだダメだダメだ!!ぜってー許さないからな!!」
「だけどこの辺りでこんな良い時給のとこなんて無いですよアーサーさん」
「アーサーの甲斐性がないからな!プププッ」
「んだとコラァアア!!ともかくアメリカに行くなんてダメだからな!!」
「でもできるだけ自給の良い場所で働けって言ったのアーサーさんじゃないですか」
「それは、そうだけど…」
「俺のところに来れば部屋がいくつか余ってるし寝る場所には困らないぞ!!あとくじらとトニーって友達も居るしそれから何時でもハンバーガー食べ放題さ!!仕事内容は俺のご飯を作って家の掃除やら選択やらをしてくれればそれで良いんだぞ!!細かい事は気にしない、それがヒーローさっ!!」
「うおおお!!良い!!すっごく良い!!うわぁ、なんかヒーローとニートって響きが似てるよね」
「なんだって!!NEETと同じにしないでくれよもう!!」
「ちょっ、ニート嘗めんなよ?履歴書の職業暦に”家事手伝い”って書く勇気の持ち主なんだぞコノヤロォオオ!!」
「そ、それは凄いな…!!あ、そうだ君ホラー番組って大丈夫かい?見たいホラー映画が沢山あるんだけど菊も一緒に見てくれないから一人で見られなくって困ってるんだよー!!」
「あ、私ホラー好き!!」
「OH!!なんだか気があいそうだな!!それじゃあ時給はこれでOKだね!!仕事内容はさっき言ったとおり!!ホラーも最後まで付き合ってくれよ!!それからゲームの発売日なんかがあったら俺の代わりに並んでくれよ!!よーし、今から荷物を纏めて直ぐに出発d「分かった!!ここで雇ってやる!!だからそいつの家だけはやめろぉおおおおおお!!!!」
時給戦争!!
(え、良いんですか!?良いんですかアーサーさぁあん!!!)
(もうなんだよ君は!!横取りしないでくれよ!!せっかく一緒にホラーを見てくれる子が見つかったのに!!)
(ピーター貸してやるからガキはガキと一緒に遊んでろバーカ!!)
(OH!!酷いよアーサー!!)
2009.8.2
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