「帰り道にな、めっちゃおいしいたこ焼き屋見つけたんやけど一緒に行かん?俺奢るでー!」

「いや、ごめん。いつもエリザと一緒に帰ってるし…」

「そうなん?じゃあ俺も混ぜてや〜!!」

「…」


なんでだ。なんでこの男は私に一目惚れなどしたんだ。どこにでも居そうな平凡な女だっちゅーに。
私の何が彼を惹きつけたというのか教えてくれたまえ不憫で有名なギルベルト・バイルシュミット君

「って俺かよ!?」

「君だよ」

「つか俺お前と喋ったの初めてだよな…?」

「そうだっけ?興味ないから覚えてなかった、ごめんね」

「…」


薄っすら涙を浮かべるギルベルト君を見て少し罪悪感が生まれたが、なんとなくエリザが彼を苛めたがる気持ちが分かった。
だって泣き顔が可愛いというか…うーん、母性本能くすぐられちゃうなぁ!!


「おーい戻ってこーい」

「あ、ゴメン。それでさぁ、アントーニョ君は何で私なの?」

「さぁな。俺もトニーの女の趣味は理解できねーぜ」

「そうですかー。って、どういう意味だコラ」

「ここが足りねぇ」


そう言って少し丸めた両手を自分の胸の前に持っていくギルベルト君の脳天に先日買ったばりの象が踏んでも壊れないペンケースを振り下ろした。


「いってぇえええええ!!!」

「さすが象が踏んでも壊れないペンケース…あなどれないなぁ」

「ってそれ何時の時代の奴だよ!?売ってんのそれ!?」

「大根デパートにに行ったら売ってるよー」

「何処だよ俺も欲しいから教えろ」

「んーっとねぇ。って、そんな事話してたんじゃないよ!!脱線しちゃったじゃん!!」

「俺のせいか!?」


おぉ、ナイスツッコミだねギルベルト君!どっちかって言うと私はいつもつっこむ方だから君みたいな子が居てくれて嬉しいよ。伊達に不憫と名の知れ渡った男じゃないな、ギルベルト君。
エリザの机の上にあった鏡を手にとって頭を見ながら「うわ、こぶできてねぇ?帰ってルッツに冷やしてもらおう…」とブツブツ文句を言っている彼をぼんやり眺めて考えた。
そもそもアントーニョ君って私の何に惚れたんだ?
顔?体系?見た感じの雰囲気?ダメだ、どれを見たってその辺にいる子以下じゃないか。それとも何、B専?まぁ確かに私なんてエリザの美しさをを引き立てる刺身のツマみたいな奴だろうけどさ!…たんま、今のなし。ツマは酷すぎる。せめて喫茶店のコーラに入っているレモン程度は…!!

悶々と瞑想にふけっていると、ふと視界のど真ん中にいたはずのギルベルト君が何かに引っ張られるように椅子から立ち上がったのが見えた。こんな事をするのは彼女ぐらいであろう。

あれ?…でもエリザは今会議中で…


「何抜け駆けしてんねんギル」

「と、トニー…?お、おい違うからな!!ちょっと喋ってただけだからな!!」

「うん、さっきからずっと見てた。そしたら胸がもやもやしてきて居ても立ってもおれんでなぁ」


ギルベルト君の胸元を掴んで薄い笑顔を浮かべたアントーニョ君は私に視線を向けて「じきに終わるさかい待っててな。そしたらたこ焼き食べに行こうー」といつもの笑顔で笑ってギルベルト君を引き摺って行ってしまった。


ダメだ。なんかもう、彼には敵わない気がする。色々と。






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