「なぁ。一目惚れって信じる?」


一目惚れ。生まれてこのかた17年、一目惚れをした数は数え切れる程度だろうか。
CMに出ている若手俳優に一目惚れ。道行くお兄さんに一目惚れ。新米教師に一目惚れ。
それはあくまで”恋”に発展するものではなく、ただ「かっこいいなぁ〜」なんて思う程度のものであるからして…

本気の一目惚れなんてした事がないしされた事がない。


なら、今私の目の前で起こっているのはなんなんだ。




「えっと…あの」

「あかんわーめっちゃドキドキしとる!こんなん初めてやで〜」

「はぁ、そうですか…」

「自分名前なんていうん?俺はアントーニョって言うんよー。あ、スペイン人やで!」


太陽のような笑顔で笑った青年の三歩後ろ辺りで柄の悪そうな赤目の男とどうみても学生には見えない金髪(いや、私と同じ学校の制服着てるし高校生なんだろうけど)が口をポカーンと開けて固まっていた。
私のすぐ横で親友であるエリザも硬直している状態だ。
いや、私だって同じなんだけど。


「ギルベルトォオ!!!あんたの友達私の親友に何してくれてるのよ!!」

「俺に振るなよ!?ちょっ、トニー!!急に何言い出すんだよ!!」

「いや〜お兄さんビックリ。その子俺も目つけてたんだけど…やるなぁトニー」

「ギルベルトォオオオ!!」

「だからなんで俺!?い、イヤァアアア!!!」



叫び声が木霊する放課後の廊下。


ただ強く握られた右手が、熱かった。






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