目の前の人物が可愛らしいなんて俺の頭はどうかしてしまったかもしれない。目の前の人物は女の子でもなければ幼くもない。身長だって俺よりデカイし、見た目だってかっこいい。中身なんて紳士とかいいながら皮肉を言ったりするくらいだ。可愛らしいなどとはかけ離れているだろう。けれど、そんな人物でも今みたいに甘い物を食べる姿は可愛らしい。心なしか嬉しげで黙々と食べる様子なんか小動物を彷彿とさせるのだ。身長のデカイ男に何を、ではあるのだが可愛らしいと思うのだからしょうがない。俺はケーキをそこそこに目の前の人物であるエドガーを何気無く観察していたら俺の視線に気付いたらしくその手を止めた。…あ、可愛くなくなった。 「セバスチャン特製のケーキは口に合わなかったかな?」 「や、おいしいぜ?」 「では何故?」 まさかお前を観察してたので存在忘れてました。なんて言えない。俺は曖昧に誤魔化すと既になくなりつつあるエドガーの皿に目をやると食べ掛けではあるが、自分の皿をエドガーのほうへ押した。 意味が伝わったらしく驚いたように目を丸くすると珍しく、頂きましょう。と口にした。普段なら食べ掛け人に云々とか、貴方のために用意をなんたらって言うのに。けれどまあ、可愛らしい姿がまた見れると思えばいいかと皿を相手へと更に押すと何故か押し戻された。 「……食べないのか?」 「いや、頂きますよ」 「ふーん…?」 「ただ、エンドウの手から頂こうと思ってね」 なにそれ。要は食べさせろってことか。何言ってんだコイツとか思わないでもない。けど、けど。あんな可愛らしい顔を見られるどころか向けられるというのも悪くないと思うのだ。でも素直に従うのは癪なので、一応注意だけはしようと思う。 (はい、あーん) |