不良の溜まり場と言えば屋上や体育館裏とかなのだろうが、生憎俺はそんなあからさまな所に留まらない。空き教室だとか、人気の少ない木の上だとかにいることが主だ。何故って簡単。屋上や体育館裏でサボっているとたいして何かするわけでもないクセに、義務かなんだかで一々注意する教員やら風紀委員みたいな奴らがやってくるというのを中学の時嫌でも学んだからだ。大体テストは一部を除いていい点取ってんだからほっとけっての。まあ、過去の出来事から俺は人目を避けるような場所へ身を置くのだが。それなのに何故かどんな所に身を隠しても必ず俺を見つけ出すヤツがいる。教員でもなければ風紀委員関係のヤツでもない。ましてや同じ中学の腐れ縁達でもないのだ。そいつとはこの学校に入って初めて知り合っただけだし、たいして親しいという仲でもない。ただ互いに共通の知り合いがいて、そいつ経由で知り合っただけに過ぎないのだ。けれどそいつは何でかよく俺を探してはサッカーに誘うというはた迷惑な行為を出会ってからずっと続けている。今年なんて同じクラスになったモンだから教員に頼まれ連れ戻す為にやって来ることもあったりする。まあ、そいつも授業へは強制しないし、俺も端から行く気はない為、授業へ戻ったこと等片手で数えるくらいしかないが。
「南雲ー!」
ああ、やっぱりやって来た。懲りないヤツだとつくづく思う。俺は応えるわけでもなく、視線だけを声のする方へ向けた。
「あ!南雲見っけ!」
太い幹を背に木の上にいるのを発見したそいつは只今授業真っ只中というのに、気にすることなく大声を出すと俺のいる所までよじ登ってきた。些か下手くそなのか危なっかしい動きで登りきると断りもなく俺の近くへと腰掛けた。
「先生がさ、探して来いって」
「そーかよ」
「俺が行ったって必ず授業に参加するわけじゃないのにな」
一人笑いながらそう言うと足をぶらぶらと前後に動かしながら空を見た。とはいっても木のてっぺんじゃないから枝葉で空なんか殆んど見えはしないのだが。俺は喋りたい気分でなかったし、そいつも普段なら何かしろ話題を出すのに何も言わない。そんな様子に珍しいと思いながらも俺達は互いに何を言うでもなくただ暫く景色を眺めた。
「おい、いいのかよ」
「何が?」
「授業」
「ああ、いいんだ」
だって俺、授業出たってよくわかんないし。苦笑しながらそう言うとそいつはそれに、と呟いた。
「困ったら南雲に聞けばいいだろ?」
一度だってそいつに教えたことも、教えを乞われたこともないのにそうきっぱりと言い切るそいつに俺は文句をいいながらも教えるのだろうな、と思った。





木の上のロマンス






(お前って変なヤツ)
(そうか?)






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