髪のセットが崩れるからという理由でディランは人に髪を触れられるというのは好まないようだ。いつだったかカズヤが悪戯半分でディランの髪に触れようとしたら嫌がっていたのを見たことがある。俺の感想としては、普段あんなにスキンシップを好むのに髪を撫でられるのが嫌なんてセットするのが大変なのだな。であった。 なのに、あのカズヤにでさえ触れられるのを嫌がっていたのに俺はいいのだろうかと思う。確かにカズヤみたく悪戯で触れたのではない。練習を頑張っていたようだったのでよくやったと誉める意味合いで撫でたのだ。撫でた後でディランは髪を他人に触れられるのが嫌であるということを思い出し、慌てて手を引っ込めようとしたのだが。ディランはその手を掴み、あろうことかもっと。と言ったのだ。何だか特別視されているようで嬉しくて。俺はつい、言われるままディランの髪を透くように撫でた。すると嬉しそうに、子が親にされたかのような安心感を漂わせた表情に俺は手を止めることが出来ず今も尚ゆっくりと撫で続けている。髪に触れてわかったことだが、ディランの髪は俺と違って細くて柔らかい。触っていて気持ちよい髪がさらさらと流れていく。きっと女性ならば羨む髪なのだろう。 「マークの手って安心するね」 暫く撫でながら髪を堪能しているとディランが聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。安心。自分が勝手にそう解釈していた時よりも本人からそう言われるほうが嬉しいものなのだなと思った。 (もっと、君の特別で在りたい。) |