12月の末、寒い夜道を一人歩く。といっても普段なら殆んど人がいない時間帯だというのに、やはり今日という日は特別なのか。まばらだが何人か人が歩いていた。そんな中目的地の神社まで少し足を早めつつ道を歩くヒロトは家に残してきた二匹を思う。賢い二匹は今日会う人物たちを察しているのだろう。そして連れて来なかったことを拗ねているに違いない、と。けれどこんな時期のこんな時間に二匹を外になんて可哀想であったのだ。まあ、連れて行ったらいったで面倒であるというのも無きにしろあらずだが。ただ、今思えば連れて来こればよかったかなとは思う。こんなに寒いのだ。あの二匹なら人間より温かいのでカイロ代わりになるのではないだろうか。
寒さに一人考えていると、前方から聞き慣れた声が聞こえた。顔を上げれば見慣れた人物達が立っていた。ああ、気付かなかっただけでいつの間にか集合場所に辿り着いていたらしい。駆け足で三人に近寄ると、その内の一人である土門がした挨拶に返す。
「ごめん、遅かった?」
「いや、丁度ってとこ。俺らも今着いたとこだし」
「それより行こう。並ばないと混んじゃうよ」
吹雪の提案で四人参拝所へ向かう中ふと思った。去年の自分はこの日をどう過ごしていたのだろうか、と。確か義父や義姉と離れて初めて過ごした冬だった気がする。一人暮らしを始めたのもそれくらいであったし、風介と晴矢の二匹が家にやってきたのも年が明けてからの筈なので多分一人、自宅で過ごしたのだろう。そこまでは想像出来ても、その先が。というよりは詳しくは思い出せなかった。一体去年の自分は一人で何をやっていたのやら。もっと昔、皆で過ごした時のことは鮮明に思い出せても、一人の時は思い出せないなんて。
「そっか、一人って寂しいものなんだね」
思わず口から漏れた呟きに、隣で聞いていたのか吹雪が頷いた。
「うん、一人って寂しいよね」
「何言ってんだ?一人じゃないだろ」
「家に帰ればいるだろ?待っててくれているのが」
ヒロトと吹雪の言葉に何を言っているのだと言わんばかりの発言に思わず笑みが漏れた。土門も風丸もヒロトや吹雪が何を思って言ったかなんてわかっていないだろう。けれど、いや、だからこそ嬉しかった。
俺達がいるだろう。
風介や晴矢がいるだろう。
一人じゃないのだと。それが嬉しくて笑うと、何故笑われるのかわからない二人は首を傾げ不思議なものを見る目でヒロトを見た。けれど何も答えずただ笑うだけのヒロトに疑問は残るも特に気にすることなく足を進める。ただ一人、理解している吹雪は微笑ましげに三人を見て、こっそりと笑った。
(いいな、友達って)
気付いていないところで心を温かくしてくれる。互いに思いやる姿のなんと美しいことか。ああ、願わくはこの関係が来年も。いや、もっともっと続きますように。鳴り響く除夜の鐘にそう願いを込めた。







この温かい関係が続くように。







「…ねぇ、この後さ、集まらない?アツヤ達も一緒に」
吹雪の提案に、皆やはり心配だったのか。はたまたその発言をした吹雪と同じ心情だったのか頷くと各々家で待つ子を想った。




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