「円堂…」
「何も言わないでくれ…」
放課後、風丸と二人溜息を吐いた。これはもう何度目なのだろうか。放課後の校門前で嬉々として手を振る外国人を前に俺は裸足で逃げたい気分になった。
何でいるのかはもう問い質したところで意味はないのだろう。どうせ顔を見にとか会いたくてとかそんなのだ。ああもう、いい加減にしてくれと思う。その外国人がいるだけで周りの女子から黄色い悲鳴は聞こえるし、いつも翌日は質問攻めにあうのだ。まあ、一週間も続けば質問攻めはなくなり、代わりにあれしろ。こうしろ。なんて欲にまみれた願いを叶えて欲しい女子達に囲まれるというなんともはた迷惑な状況になったが。
それもこれも女子に一々挨拶しつつ俺へと真っ直ぐ外国人の所為である。確かにかっこいい。認めよう。外国人ってのも要素の一つなのだろう。だがいいたい。いくら俺が女になったとしてもこんなはた迷惑なヤツ絶対好きになるなんてことはないと!ついでにいうとお前の所為でじょせいきょうふしょーとかになったらどうしてくれる!
俺の内心を知らないからかにこにこと実に楽しげに微笑む外国人に、どの道意味がないと知っていながらも向きを180度変え、校門裏から帰宅すべく全速力で走り去るのだった。




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「見えない臓器の名前は」
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