これの続編


一体なんなのか。溶けて消えた水晶もそうだがこの目の前の少年。いや、人にしてはおかしい云々はこの際目を瞑ろうと円堂は思った。桜の花弁が集まったと思ったらいきなりそれが人の形をしたとか。まあ、アニメや漫画ではきっとよくある登場に違いないし円堂はサッカー以外元々物事を深く考えない質である為少年が何者であろうと然して気にはしなかった。というよりは一度に常識を覆すことが二度も起こった為脳が追い付かない、というのもあるが。それよりも。何かを落胆したらしい少年はあれから三歩程円堂と距離を置いていた。しかも円堂が一歩でも近付けば少年も一歩下がる。逆もまたしかり。しかし、それだけではない。あからさまな距離の置き方もそうだが、なんというのか円堂は微妙な…複雑な感情を抱いた。何せ距離は置くくせにその場を去ることはせず、じっと円堂を凝視してくるのだ。言いたいことがあるのなら言って欲しい。ただ無言で見つめられるというのは居心地悪いことこの上ないのである。けれど、非があるのは円堂だ。少年の態度に思うところはあれど己の仕出かしたことを思えば態度を咎めるなんてお門違いだろう。取り敢えず、円堂はなんとも言えない微妙な空気から逃れたい一心で、水晶を割ったことを詫びることにした。
「えっと…水晶壊してすみませんでした」
「ああ、いいよ。壊れたもののはしょうがないから」
「はあ…」
謝ってはみたものの、なんとも拍子抜けするような返答に正直困った。何せ触るなと言われたのに触ってしまったのだ。あまつさえ円堂が望んだわけではないにしろ、それを溶かす結果となってしまったのである。けれど少年はそのことについて然して気にしていないのか軽く返してきた。
ああ、どうしよう。本日何度目かわからないがそんな言葉しか浮かばない。会話のない微妙な空気に円堂は内心溜息を吐いた。いっそのことこの場から立ち去って仕舞おうか。そんな考えが過った時、またしても本日三度目となる不可解な現象が起こった。突然水晶を祀ってあった社の前に火柱が立ったのだ。全く火元がないというのに、である。普通なら驚くなり叫ぶなりするのだろうが、生憎円堂は二度に渡る怪奇現象に慣れてしまったのと目の前の少年との微妙な空気で些か減なりていた為、またか。といったなんとも素っ気ない感想しか抱くことが出来なかったが。
円堂や少年を他所にその火柱が収まったかと思えば先程の火柱に似た髪をした少年が現れた。どことなくつり上がった金の目がなんとも生意気そうである。
「よぉ、グラン。遊びに来てやったぜ」
火柱から現れた少年は円堂の目の前の少年をグランと呼び挨拶らしきものをするとそこで円堂の存在に気付いたらしく訝しげに眉を寄せて円堂を見た。円堂は突然現れた人物の視線にたじろぎ(何せ敵意らしきものを向けられたのだ。当然と言えよう。)すがるようにグランという少年へ視線を向けた。円堂の視線に気付いたらしく、グランは肩をすくめると火柱から現れた少年の視線から隠すように前へ出た。
「バーン…睨むのやめなよ。怯えてるじゃないか」
「お前何言ってんだ。人間だぞ?さっさとこんなヤツ追い出せよ。つーか何でここに居るんだよ人間が!」
グランの後ろにいる円堂を尚も睨み付けてくるバーンに内からやってくる恐怖心と言い知れない何かに円堂は思わずグランとの距離を詰めて背中へと隠れた。それが気に入らなかったのか、バーンは二人に詰め寄るとグランの後ろへ逃げた円堂を捕らえようと手を伸ばす。しかし、バーンの手が円堂を捕らえることはなかった。何故ならばそのバーンの腕をグランが掴んだからである。しかも、円堂を守るようにバーンの前へ立ちはだかった。
グランの行動に驚いたのか。バーンは目を見開くとグランを凝視した。バーンの驚愕した表情に円堂を庇ったのは無意識だったのか。今度はグランが驚く。
「……お前、正気か?コイツは人間だぞ?」
バーンの言葉にグランは数回瞬きをした後、現状を理解したらしく息を吐くとその手を離した。
「……バーンもその子に近付けばわかるよ」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ。そんな顔を向けるが、グランは然して気にせずバーンと円堂の間から身を退いて視線で近付くよう促す。未だ信じていないバーンは馬鹿馬鹿しいと鼻で笑うと円堂へ近付いた。一歩、また一歩と距離を詰め円堂を見つめる。見つめる、というよりは睨んでいるに近いが。暫し円堂を見つめた後バーンは何故か顔をまさに茹でたこの如く真っ赤にさせると先程のグランと同じく瞬時に三歩の距離を置いたのだ。何事かと茫然とする円堂を余所に、バーンは肩を震わせるとグランに何やら封印がどうのやら媒体がどうのと喚き出した。なんのことかさっぱりわからないが、なにやら重要な話し合いなのだろうと他人事として捉えていた円堂であったが、グランの一言にその状況が一変するのであった。





赤二つ。






(この子が割っちゃった。)
(お前ぇぇぇええええッ!!!)
(ご、ごめんなさぁぁあああいいいっ)





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