突然押し倒されて、頭ぶつけるし痛いしで何するんだと睨み付けてみるも普段の表情の無さはどこへいったのか。綺麗な顔を歪めて俺を見る涼野に何も言えなくなった。何で押し倒したのかとか、どうして泣きそうな顔してるのかとか聞きたいことはあったけど。涼野は俺の手首を掴んで床に縫い付けたまま動くどころか何も言おうとさえしない。ただどこか緊張感の漂う空気の中、黙って互いに見詰め合うだけ。そんなただただ視線を合わせるだけの行為をどれくらいしていたのだろうか。その沈黙を破ったのは涼野だった。
「私だけを想ってくれ」
一体どうしてそういうのか。どう想えばいいのか。何て返せばいいのか。俺は涼野の言いたいことが全くわからない。言葉として理解出来ても意味を理解出来ないのだ。でも、そんな俺でもわかることが二つだけある。一つは涼野がとても弱っていること。それと、これが最後であることだ。何が最後かはわからないけれど、きっと俺が間違えれば全てが終わってしまう。そんな気がした。けれど、意味を認識出来ない俺に答えなんてわかる筈もない。一体どうしたらいいのだろうか。
あまり無い頭で必死に考えていると、焦れたのか。涼野は俺の名前を呼んだ。それがまるで、なんだか迷子の子供のようで。何を答えるでもなく、気付いたら涼野に掴まれていた腕を力任せに持上げて退かすとそのまま腕を伸ばして俺は涼野を抱きしめていた。





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