円堂は馬鹿ではない。ついでにいうと、鈍くもない。幼馴染みだからこそ知っているが、円堂は頭の回転は速く、鋭い。特に人の気持ちが。だからこそなのか、円堂は馬鹿で鈍いふりをする。知っているくせに知らない振りをする。そして作られた馬鹿で鈍い円堂を誰も疑わず、そういうヤツなんだと思い込む。それが俺にはよくわからない。何がって、思い込む他人も思い込ませる円堂も、だ。一体そんな回りくどいことをして何になるというのか。
円堂にそれとなく聞けば、「周囲に溶け込みやすいから」と返ってきた。
「溶け込みやすい?」
「疑わない、無駄に敵意は持たれない、安全だと思われる…他にもあるけどそんな感じ」
「…それって楽しいのか?」
「楽しくはないかな」
でも楽なんだ。円堂はそう言うと手にしていたサッカーボールをポンポンとリズムよくリフティングし始めた。よくわからない俺は首を傾げながら楽とは何かを聞いた。
「楽しくはないけど、何事も問題なく過ごせること。人間関係を円満にとか」
「十分できてるじゃないか」
「雷門中サッカー部の円堂守は、な。風丸の知ってる円堂守は出来ないんだ。皆がどう思ってるか知ってるし、それに対してきっと柔らかい言い方なんて出来ない。それに、俺はサッカー部の守と違って出ちゃうから」
「出る?その立ち回りというか、人格というか…そういうのを作れるお前が?」
「…風丸はさ、どうして風丸の前だとサッカー部分の守じゃなくて俺として接するかわかるか?」
円堂はポンポンと尚もリフティングを続けたまま聞いてきた。その問いに全くもってわからない俺は首を左右に振って答える。と円堂はあからさまに溜息を吐くとリフティングを止め、無言でボールを小脇に抱えるとスタスタ歩き出してしまった。突然の行動にわけがわからず教えろとの意味を込めて名前を呼ぶと円堂は一度だけ振り返り、「風丸のばか。にぶちん」と真顔で言うと再び歩み出した。そんな円堂に俺はただ疑問符を頭に浮かべて必死に理由を考えた。









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