「意外だよなぁ」 円堂の呟きに首を傾げた。意外も何も、中学からそう通っているのだから私の名前を聞けばそういうものだと皆思うのだが。けれども尚もサッカーボールを蹴り上げリフティングする円堂は意外だと口にした。 「だってさ、涼野って不良とか暴走族とかに見えないからさ」 「そうか?」 中学から悪で通り、高校だってその肩書きは消えることなく存在する。例え高校時に一般生徒として過ごしたところで他者からは悪だと思われ、陰口を叩かれ続けるのだろう。まあ、今だって生徒としての態度は昔程ではないにしろ良くはないし、今みたく単車を転がすことだってある。見た目こそ制服を着崩していたりするわけではないにしろ、けして一般生徒と同じとは言えないだろう。 「涼野ってかっこいいし、物静かっていうのかな。なんか優等生って感じだから。あ、でも実際頭良いよな」 俺なんか見た目も中身もただのサッカーバカだけどさ!なんて元気よく言う円堂に何を言ってよいかわからなかった。胸の中がもやもやするような。擽ったいような。何なのだろうか、これは。 「なぁ、バイクもいいけどさ、たまには一緒にサッカーしようぜ?」 「…なぜ」 「だってお前上手いじゃん!授業の時凄かったし」 一人ぐるぐると考えているといきなりサッカーに誘われた。確かに一度気紛れに出た授業でサッカーはやった。同じクラスである円堂がそのことを知っていておかしくはないけれど。でもあの時はいかにも邪魔者扱いする教師が気に入らず、試合開始10分足らずでサボったのに。シュートだって一回きりで。そのシュートも普段より加減して蹴ったもので、円堂が言うほど凄くはなかった筈だ。なのに何で覚えているのだろうか。円堂は味方チームだったから己のシュートを受けたわけではないのに。そんなこと、どうして覚えているのだろう。 「気が向いたら、な」 ふわふわと不思議な感覚に戸惑い、それしか言えなかった。そんな自分が恥ずかしく、照れ臭く。けれどもけして嫌な感覚ではなくて。己の気持ちを持て余した私は円堂から逃げるように愛車である単車に跨がるとその場を離れた。 (この気持ちは、) |