※一人称そのままですが、二人とも女の子。 下駄箱から落ちる手紙。何の手紙かなんて読まなくてもわかるけど、俺には何の意味もないものだ。だって、いくら想いを綴られたって俺は応えることなんて出来ないのだから。俺の想いは、一人だけに向いているのだから。けれど、きっと今の俺みたいに本気の想いが綴られた手紙を無闇に棄てることは出来なくて。でも、だからって最初から応えることの出来ない手紙を読むことも出来なくて。俺は拾った手紙たちを鞄に押し込むことしか出来ないのだ。 「…読まないのか?」 「円堂、くん…」 鞄へ押し込む俺を見て、何か言いたげな想い人に苦笑することしか出来ない。きっと優しい彼女のことだ。せめて読んでやれ、とか思っているのだろう。けれど、無理なんだよ。俺には読むことなんて。いや、読む資格がないんだ。だって、本気の気持ちに応えることが出来ないのだから。それに、こんな手紙、読んだらどうにかなりそうなんだよ。 相手が異性であること。想いを素直に伝えれること。出来ないことだらけの俺と違う顔も知らぬ男子が妬ましくて。羨ましくて。苦しく、て。この手紙を読んだらそんな負の感情に飲み込まれそうなんだ。立っていられないんだ。君と今のような関係でいられないんだよ、円堂くん。ああ、ああ。嫌だ嫌だ。君といる時くらい綺麗な俺で居たいのに。この手紙を貰う度、君にこの瞬間を見られる度、俺の中のどす黒いものが溢れそうになる。 ねぇ、円堂くん。好き。好きなんだ。君が好き。好き過ぎてどうにかなってしまいそうな程に。だから、ねぇ。そんな目で俺を見ないで。お願いだから綺麗な俺のままでいさせてよ、円堂くん。 (側に居られるだけで幸せだと思える俺でいさせてよ。) |