>> 2011/10/19 05:21 「今さぁ、心臓止まったらきっと笑って死ねるんだろうなって思う」 「なんだ急に」 「だってさ、こうして風丸の隣にいて、触れ合っていられる。大好きな風丸とそうしていられる今が一番幸せだなぁって」 「ふぅん」 「…気のない返事。一番好きだって言ってるのに嬉しくないのかよ」 「ああ」 「…お前な」 「だってお前は満足でも俺は不幸じゃないか」 「なんで」 「目の前で一番好きな奴の死を看取るんだぞ」 「?それって幸せじゃないのか?」 「俺はやだ。それに、好きな奴には出来るだけ長く笑っていてほしいし」 「…………」 「円堂?」 「何でもない。っていうか勝てないなーと」 「はぁ?」 >> 2011/10/05 17:14 ※十二国記パロ 右も左もわからない。そりゃそうだ。だってこの世界は俺の知る世界なんかじゃない。ここは俺のいた世界ですらないのだ。服装も文化も考え方も。全て全て異なるばかりで元いた世界と同じものなんて何一つない。まるで、いきなり外国へと飛ばされたような。そんな気分だ。いや、いっそのこと外国へ飛ばされたほうがマシだったかもしれない。それならば帰る手段なんていくらでもあっただろうし文明だって日本とそう大差ないのだから。この世界に飛ばされた時の唯一の救いといえば、言葉に何一つ不自由しないという部分のみである。 そんな俺を考えてのことなのか。士郎は少し思案した後、ある国の名を出した。 「隣国へ?」 「そうだよ。この国よりは風丸くんみたいな海客にとても寛容だからね」 そうなのか?と首を傾げると荷造りをし始めたアツヤが、元王がたいかであることを告げた。というか、たいかってなんだ?そんな俺の疑問を汲み取ってか、士郎は口を開いた。 「胎果っていうのは、元々こちらで産まれる筈の実が蝕で向こうへ流れ、そこで産まれた人のことをいうんだ」 「へぇ…胎果だとこっちへ戻れるのか?」 なんて羨ましい。もしそうならば俺が向こうへ帰れる方法も。その確率だってぐんと上がるだろう。思わぬ展開に俺は少しの希望を持ち始めた。そんな俺の様子を見てなのか、士郎は表情を柔らかくすると俺と共に拾われた剣を差し出した。その様をどう受け取っていいのかわからず戸惑って剣を受け取れずつい士郎と剣を交互に見た。戸惑う俺を気にするでもなく、士郎は何かを秘めた眼差しを向けたまま口を開いた。 「だからね、行こうと思うんだ」 何処へ、なんてわかりきっている。けれど士郎の言葉はまるで自分達も行くと言っているようで。いや、そんな筈はない。きっとそれは俺の都合よい考えに過ぎないのだろう。何故なら俺と共に向かうということは、危険を伴う。ただでさえ、士郎達の住む国は日が傾けば妖魔が彷徨く程国が傾き始めていると聞く。それなのに妖魔に追われる身の俺と一緒では更にリスクが上がる。そんな俺と行こうだなんて余程の肝が据わった奴か、酔狂な奴だけだろう。 頷くと剣を受け取り、今日まで面倒を見てくれた二人に感謝の意味を込めて頭を下げた。すると二人は互いに顔を見合わせたかと思えば、何故か士郎は笑いを堪えながら。アツヤは呆れたと言わんばかりの溜息を吐いた。そんな二人の様子が理解出来ず眉を寄せる俺に、士郎は手を差し出した。まるで握手を求めんとするその手にどうしたら良いのかと迷っていると士郎が有無を言わさず剣を握らぬ俺を手を取り両の手で握り込んだ。 「一緒に、だよ」 「けど、俺、は」 「何言ってんだ。自分の身くらいお前なんかに頼らなくても俺も兄ちゃんも守れるっての」 寧ろお前こそ大丈夫なのかよ。そう言ってにやりと笑うアツヤに心が震える。酔狂だとか、肝が据わった奴だとか、そんなのどうでもいい。この暖かさが嬉しいんだ。 一般的に見れば二人の選択は愚かなのかもしれない。けれど俺にとっては嬉しいばかりで。二人の暖かいばかりの選択に、ただお礼を述べるのではなく笑って、告げた。 「試してみるか?」 >> 2011/08/10 10:40 ※もしもの話 わかりにくいけど鬼道さんと円堂さんの話 それはある日突然見えた。小指にぶら下がる紐。糸のように赤く、そして長い紐が自分の小指にぶら下がっていた。何かの悪戯かと思い引っ張ろうと試みるも、何故か触れられない其を不思議に思うが、絡まるわけでも引っ掛かるわけでもない其に幻の類いか何かと気にするのを止めた。また、他者の小指にも自らと繋がってはいないがぶら下がる紐に何となく其が何であるか悟るも、しかし、夢か何かと思いそのまま思考を放棄した。だがそれは、逃げていたに過ぎなかったのだと否応なしに知ることになる。 「えん…っ」 言葉が出てこない。まるで喉の奥に何か詰まったように、途中で途切れた。 紐は誰にでも着いていて、時折誰かと繋がっていて。だから、自らでなくとも想いを寄せる相手にだってあるのだと思っていて。だから、会って、少しの希望を持って相手の小指へと視線を向ければそこには、 「ああ、見えるのか」 小指を立てて微笑む相手に、知らず知らず息を飲んだ。だって、小指には。誰からも愛されている相手の小指には。 「何で、笑っていられるんだ…お前は」 ある筈の紐がないのだ。 「知ってたから。見えてたから」 誰からも愛されている筈の相手の小指には、紐などなく。誰とも繋がってはいないことだけを示す証だけが残っていた。 誰からも想いを寄せられているのに、誰とも繋がっていないその事実が信じられない。そして何よりも、その事実を知っていて尚微笑む相手がどこか痛くて、見ていられなくて。表情が歪んだ。 >> 2011/07/30 17:09 ※いつかの不良すずの設定 涼野風介といえば、無表情、無感動の言葉が似合う人間だ。それほど感情を表に出さないし、何を考えているのかわからない。そんな涼野が何故か嬉々とした表情(とは言え、端から見れば変わりない表情にしか見えないのだが。)で雑誌を読んでいた。その珍しい様子に円堂は雑誌のタイトルへと視線を向けた。そこには見慣れた自動二輪が写真で表紙が飾られている。雑誌のタイトルを見るまでもなくそれは所謂バイクの雑誌なのだと知ると思わず一人頷いた。涼野は本当に好きなのだと納得した為である。彼はどうやら自動二輪の免許も取得済みであるし、高則違反ではあるが、自前のバイクを持っている。以前走らせるのが好きだと言っていたくらいなのだし、相当熱を上げているのだろう。まるで幼子が新しい玩具を手にしたような。プレゼントを決めかねているような…そんな様子にサッカーをしている時、自分も同じような表情をしているのだろうかと無意識に笑みを溢した。 そんな円堂の心情など知らない涼野は揶揄されたとでも勘違いしたのか、気まずいような不貞腐れ気味に眉を寄せて円堂を見た。その視線に全てを察した円堂は慌てて首を左右に振って否定する。 「違うって」 「じゃあ何?」 「えっと、その…本当に好きなんだなーって。なんて言うか、サッカーしてる時の俺も今の涼野と一緒なんだろうなぁってさ」 嘘偽りのない返答に涼野は一度目を丸くすると、無表情が常の人物には珍しく頬を緩ませた。 そんな涼野の珍しい表情に円堂は言葉を詰まらせると、鼓動が早くなる自身に一人首を傾げたわけだが。その理由を円堂自身が知るのはまだ先の話である。 >> 2011/07/09 03:55 「風丸ー風丸ー」 「なんだ?」 「ツインテールにしないか?」 「断る」 「えーしよーぜ?世はツインテールがは、はやりなんだぜ!」 「…………それは二次元の女子限定だ」 「にじげ…?でも、風丸はやんでれ?だし、もう色々手遅れ?だからぴったりだってひ」 「ちょっと出てくる」 「え?まだ学校…ってかそのバットなんだ?なんていうかスゲーかわいそうなことになってんだけど。駄目だぞ!物は丁寧に扱ってやんないと」 「大丈夫だ。丁寧とは言い難いがとても大事に使ってる」 「そうなのか?…まあ、ならいいけど。って風丸?」 「とりあえず、風丸はどっか行ったと」 「おう!なんか、早急に苦情しないととかなんか」 「苦情…?ああ、駆除か」 「……………円堂。お前そのまま見送ったのか?」 「や、とめたけど急いでるっぽかったし」 (…………頭痛い) (言うな) ──── ていたい ってかなんだこれorz >> 2011/06/28 06:52 ※一土 部屋で雑誌を読んでいたら突然背中に体重が掛かった。いきなりのことで前屈みになりそうになるも、寸でそれを堪えながら背中にのし掛かる重さが何かを察し土門は苦笑した。 取り敢えず、何を言うでもなく雑誌に目を通してはページを捲っていけば土門に寄りかかっていた何か──一之瀬はいつの間に向きを変えたのか。土門の背中へ頭を擦りつけ始めた。一之瀬の行動に仕方ないとでもいうように息を吐くと読んでいた雑誌を閉じて名前を呼ぶ。 すると一之瀬はピタリと動きを止めたかと思えば今度は土門の腹へ腕を回し抱き着くとその態勢のまま何やら呟いた。その呟きはあまりに小さくて、土門の耳へ届くことはなかったが、そこは長年の付き合いだ。一之瀬の伝えたい何かを察したのかそのまま好きなようにさせて置くことに決めたのか。閉じた雑誌を再び開くと回された手に添えるかのように優しく撫でた。 それに応えるかのように、一之瀬の腕に力が籠った気がした。 ── そういえば、好きなのに書いてないなぁと。 眠くて眠くて…物凄く短編だ >> 2011/06/09 03:41 ※実話 ばら蒔かれた紙を片付けていたら両手に荷物を抱えたヒロトが困った顔で立っていた。 「もしかして通りたい…よな」 「うん…………ねぇ、紙踏んでもいい?」 他に通路はあるが遠いし、時間はかかる。それにばら蒔かれたこの紙は不要なので別にいいだろうと一言「気をつけろよ?」と言って頷いた。するとヒロトはやはり紙を踏むのを躊躇ったのか。はたまた作業が中断しているのを悪いと思ってなのか。勢いよく飛んで避けようとしてくれた。が、しかし。 あまりの勢いのよさと、飛躍力がなかった所為か紙の上に着地。勿論したはつるっつるの床なわけで。何が言いたいかといえば、紙に足をとられたヒロトは勢いよく滑って転んだ。しかも尻から。あまりに見事な着地と、それでも荷物を抱えたまま目を点にしているヒロトにこの日腹筋が割れるかと思った。ちゃんと気をつけろって言ったのに。 しかし尻から着地とは…やるなぁ。 リハビリにならなかったorz >> 2011/06/07 16:12 「だから、大変だと思うんだ」 「でも楽そうじゃないか?動きやすいし、身軽だし。だからなんだろ?あの時のヒロトもさ。風丸達だってほら…」 「けど俺らは違っただろーが。お前らと大差ない格好だったろ」 「そういやそうだな」 「それにアレは必ずしも楽とは限らないよ」 「そうなのか?」 「まず蒸れる。拭おうにも出来ない。汗が張り付いたままだ。わかるか?あのねっとりとしたままが…」 「それにな、困るだろ。便所とか。着るのも面倒だし何より脱ぐのがな。切羽詰まった時どうよ?」 「あーそれやだ。確かにやだ」 「それに身軽とは言いきれないだろう。変に締め付けられるんじゃないか?わからないが」 「兎に角考え直せ」 「うーん、そうする」 「…………何の話をしているんだい?」 「あ、ヒロト」 「げっ」 「ヒロトか」 「で?身軽だとかそうじゃないとか何が?」 「ユニフォームが」 「は?」 「いやさ、たまにはユニフォーム変えてみるのもいいかなって思ったんだよ。で、動きやすそうだからヒロト達がやってた全身タイツなんかどうかって」 「へぇ?」 「それを涼野と南雲に相談したら」 …………… ってとこまで書いて放置したら落ちを忘れたというorz >> 2011/05/02 16:57 ※十二国記パロ 「いらっしゃい」 後ろを振り向かず告げる。すると後ろでは驚いているのか僅かに息を飲む音が聞こえた気がした。 「僕、半獣だから。人より鋭いんだ」 きっと疑問に思っているだろう答えを告げると漸く振り返り、もう一度部屋へやって来た人物に最初と同じ言葉を告げた。 「ごめん、いきなり」 「いいよ。別に困ることはないからね。それで、君が来たってことは風丸くん関係かな?」 そっとお茶を差し出しながら告げると、訪問者は苦笑し、何でも知っているんだな。と告げるとお茶を一口飲んだ。表情からしか情報は読み取れないが、何か言いたげな。それでいて言いにくそうな。そんな様子だ。内心首を捻りながらも向かい合う形で椅子に座り、話すのをじっと待つ。ああ、今ここにいるのが僕だけでよかったかも。今は私用で出掛けているが、片割れであり弟のアツヤがいたらはっきりしろなど喚いてそうだ。暢気にそんなもしもを想像していたら、意を決したのか訪問者が口を開いた。 「助けた時の様子を教えてくれないか?その、風丸、の」 「風丸くんの…?」 そんなことを聞いてどうするのだろうと、疑問をそのままぶつければ訪問者は顔を歪めた。それが凄く辛そうで。何故か僕の心も締め付けられるようで。普段考えて物事を話すのに、気付けば考えるより先に言葉が出ていた。 「君を、恨んではなかったよ」 嘘ではない。あの時風丸くんが言った言葉が訪問者の望む出来事かはわからないが、恨んではいなかった。同時に感謝もしていなかった気がするけれど。何せ右も左も知らない世界に慣れることに風丸くんはいっぱいいっぱいのようだったから。 あの時の風丸くんが実際どう思っていたかはわからないけれど、訪問者は僕の言葉に安堵からか一息吐くと「そっか」とだけ呟いた。 (悲痛な表情と震える握り拳はなぁに?) >> 2011/04/30 18:43 ※円堂さんが酷い?黒いです 後味悪いよ! 怒ってる。凄く、凄く怒ってる。俺を囲う両腕は話すまで逃がさないとでも言っているようだ。そんな眼差しをぼんやりと他人事のように眺めた。当事者なのに他人事って…意外とこういった場面ってのは冷静になるものなんだな、なんて思えるくらいには。 特に大した感情を抱いていないのが表情に出ていたのか、ヒロトは綺麗な顔を歪めた。皺になっちまうぞ、なんて今言ったら更に怒るんだろうな。 「ねぇ、どうしてそんなふうにいられるんだ?」 「そんなふうにって?」 聞き返せば何故か更に皺を濃くした。ああもう、面倒だな。あまりの面倒さに思わず口が開いていた。用事がないなら退いてくれ、と。その言葉にヒロトは酷く傷付いた表情をしたけどそんなの俺には関係ない。さっさと帰ろうと囲う腕を退かせば何故か掴まれてしまった。 「君は、一体何をしたかわかっているのか?」 「さぁ?」 言いたいことをわかっていながらわざと惚けてみせると、苛立ちを表すかのようにヒロトは痛いくらい掴む腕に力を込めると叫ぶかのように叱咤した。 「円堂くん…っ!少しは身体を大事にしなよ!皆がどれだけ心配してると思ってるんだッ」 本当に心配してくれているのだろう。その表情からは悲しみや悔しさや色んなものが見え隠れしている。けれど、そんなヒロトの言葉があまりに滑稽で。本当に馬鹿馬鹿しくて。気付けば俺は笑っていた。それはもう愉快だと言わんばかりに。だって、本当に茶番じゃないか。 笑う俺が異様なのか、腹立たしいのか。ヒロトにしては珍しく据わった目をすると低く呟いた。 「何がそんなにおかしいんだ」 「は、はは!何って、全部だよ。俺を心配してる?皆が?皆って誰だよ。ああ、お前以外は、だな。確かに心配くらいはしてるのかも」 「円堂くん!」 「だってそうだろ?お前は俺を捨てたんだから。まさか心配してる、なんてこと言わないよな?」 俺の言葉に傷付いたのか。悲痛な眼差しを向けるヒロトが馬鹿馬鹿しくて仕方ない。大体何故、捨てたヤツに心配されなきゃならないんだ。あほらしい。捨てたヤツを心配するヒロトも、捨てられた相手に心配される俺も。全て全てバカらしい。はは、なんだっていうんだ。 笑いすぎたのか。あまりの馬鹿らしさに涙が流れた。 (傷付いたのはだあれ?) prev//next |