チャイムの聞こえ辛い旧生徒会室の中の十分


酷く澄んだその世界を一生懸命生きる人がいた。

その人の周りは明るくて色も溢れていた。
汚い表現かもしれないけど、絵の具をぐっちゃぐっちゃに混ぜ合わせたパレットのような。でも決して黒や白は混ざっていない。


そんな彼の世界観──


「よぉーっすなずー!」

「あ オハヨ」

教室に入るや否や数名の人にバレてしまった。

まぁ、バレたって特に悪い事も良い事も無いけれども。
昔から透明人間に憧れていたんだよな。
誰にも気づかれない空気な存在に。

俺の隣の席の女は俺の夢とは真逆の存在だった

──樹々瀬 花宮(きぎせ かぐ)。成績はそこそこの普通で顔も普通だし特にこれと言ってと失礼だが外見にあまり特徴がない。

ただ特徴があるのはその口調──…

「えっへへ〜すこいでしょォ」

鼻にかかったような声、人をおちょくってるかのような口調。

はっきりいって【どうしてこんな奴がモテるのかがよく解らない】俺としてはこいつと隣の席なんか傍迷惑だった

人それぞれ良い特徴と悪い特徴がある。

残念だが、樹々瀬には悪い特徴しか思い浮かばない。
もしあまり話さないけれど授業中の私語がうるさい人の特徴を挙げろ、なんて言われたら「うるさい」位しかないだろう

周りの人の多さ故にチラチラと見ていたら、

「んん? なぁにィ?」

と言ってきた。迷惑、この上無く迷惑。
一層の事「んん? こっちこそなぁにィィ?」と返してやりたいところ。こちらの都合による。

「…別に、なんでもないし」
素っ気ない返事。それか此方側の都合というもの。
良い方に返せば話しかけられる可能性がこの先出てくる。
しかし出来れば関わりたくない俺にとっては一番この態度、返事がちょうど良いのだ。

人気者が凡人の自分に話しかけられると嬉しい、そんな事は無い。

「あははッ確かにィ」

耳触りな声、もうこの声は聞き飽きた




俺は教師が教室に入ってきたのに関わらず教室を出て行った。




一時間目。只今授業中


「ねぇねェ、なんでここに居るの?」

「……」

……ッなんでこいつがここまで来て居るんだ!?俺はこいつの声が聞きたく無くて授業をサボって屋上に来たというのに!?

「ンーまぁいいや」

聞きたく無くても耳に入ってくるその言葉に良いのかよと内心ツッコミをいれる

「でも、授業は受けた方がいいと思うよォ」

「るっせえな、お前だって今受けてねぇじゃねえか」
そういうと「あやっと返事してくれたァ」と言うかのように笑って、

「まぁまぁ、見てなさいって! 次のテスト国語、百点とって見せるから! ほーら、嘘ついたら針千本のーます、ってね。ゆーびきーりげーんまー…」

と言った

俺はこいつに何をしたというのだ
思い当たる節はたくさんある。
それは幼少期の頃から──

「ねェ〜聞いてる?」

「……ああ」

指切りをして「頑張ろォ〜」なんて言ってる樹々瀬サンを眺める


たかが幼馴染だからってここまでし無くてもいいんじゃないか……

「ン、あの先生の事だから授業終わる15分前には自習になってるはずだからさァ! 戻ろッ」

うん、と言ってもないのにそいつは俺の手を引き教室まで連れていかれる事となった










「良かったね〜怒られなくて」
そう言う樹々瀬は笑っていた。まるで先生に気に入られている自分のお陰で済んだという様に。まあそうだが。

別に俺は留年しても補習だろうが廊下に立ってなさいとか言われても別に興味も無いし別に良いのだが。

ただその樹々瀬の笑みは全ての事が解ってそうやってるかの様に思えてとても気持ち悪くなった















うん。

「キャアアアアアアアア!!!!」

う…ん

「落ちたぞ!!?」

……ん


「救急車だ早く呼べ!!」

………





「………ハァッ!?」

待ってなんでお前が飛び降りたんだ!? お前が飛び降りても損する事ばかりなのに!?

「…い なず…まさか、おま──」

「……」

クラスメイトが俺に声をかけようと──するのをかわし俺はその場から逃げた。教室から出て遠くに行った。

とりあえず、人の声が聞こえない場所へ


ピ…ポーン♪


「…さつがはいりま…ので……」

もう倉庫と化した旧生徒会室のガラクタの下に俺は居た。


膝を抱え校内放送を聞いていた
ふらつく頭をあげると、

「う、ウワァァァッ!!!?」

血塗れの樹々瀬が立っていた

血塗れで見えない表情のまま俺に血で塗れた封筒を差し出した

もしこのまま受け取らなければ──
そんな考えもよぎったが俺は樹々瀬から封筒をひったくる様にしてとった

その行動に驚いた樹々瀬は少し笑った様に旧生徒会室から、

この世から消えた




はっとしひったくった封筒を見る

「開けて……みる……か……?」

血塗れな彼女が持っていたには不思議な程封筒は真っ白だった

それが俺にはかえって恐ろしさの微塵も感じていなかった

びり、ビリビリビリッ。

「……な、んだ……ヨッ…」




旧生徒会室から人が消えた。男子生徒が行方不明。

警察もそんな事気づいちゃいない


ただ血塗れの紙が落ちているだけ

でも倉庫と化した旧生徒会室は誰も使わない誰も入らない、入れない





だって、三重にも錠が掛かっているから──



届かないラブレターと思い。

消える事は許されないそこに居た証


「待っててね、今ズタズタにするから」


fin.

   

  
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