05



病院、病院、びょういん…。


わたしお母さんにナイショで飼ってるし、家に持ち帰ったら綱吉がうるさいだろうし、病院って事はお金かかるんでしょ?



『…いくら?』
「1万円札が見えたかもしれん…」
『……』



1万円札という単語を聞いて少しクラッとした。

そんな大きなお金、持ってない…。



『ノミって手で取れるよね?』
「いや、しっかり毛についているらしいからな。薬じゃないととれないらしい」
『う…』



笹川はダンボール箱にみぃを戻した。ノミが笹川んちのネコにうつるからだって。

ダンボール箱の中で、みぃはあお向けになって背中をこすりつけ始めた。……かゆいのかな。



「なるべく早めにつれていってあげた方がいいぞ!」
『…うん』



お互いにサヨナラをしてわたしはいったん家に戻った。その日の夕飯でお母さんに思いきって話してみようと思って、



『お、お母さん』
「なぁに?」



箸をにぎりしめてお母さんの目を見た。視界のはしっこにお母さんのとなりで幸せそうな顔で肉炒めを食べてる綱吉が入る。

……ダメ、だよね。

綱吉がネコ、ダメならぜったいにお金出してくれないもん…。しかも今までナイショでネコかってた事で怒られる、かも。



『…今日のお肉、ちょっとちがう?』
「わかった? 少し奮発してみたのよ!そのお肉美味しい?」
『うん』



言えなかった。


いつもとビミョーにちがう肉の食感がさっきまでわかっていたのに、今は全くわからないし味もうすくなったような気がした。


みぃ……。




(、ごめんね…)



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