31



エレベーターの前で下に下がるボタンを連打するが、なかなか上がって来ない。これじゃあ間に合わない、とイライラしながらコハチを抱き上げて肩にもたれかかせるように抱きながら階段を走るように下っていく。この時ばかりは最上階に近いところに住んでしまった自分を憎んだ。フロントを走り抜け(管理人さんに走らない!って注意の声を流しつつ)、ベランダで見た位置を中心に辺りを探したが誰もいなかった。


何でイタリアで仕事してるお父さんがいたんだろう…。


もやもやとする疑問を振り払うことがで出来ず、頬を擦り寄せてコハチの小さな頭を撫でながらお父さんが消えて行った方向を眺める。


別にただスーツを着たお父さんが見えただけだった。

普段ならふーん、で終わってしまいそうなことなのにあの時私の勘が追えって言っていたから。



なんだか嫌な予感が、する。



***

世間はもう夏休みだというのに、私の幼馴染みは学校の給湯室でエアコン聞かせながら書類整理をしている。

ま、私も人の事言える立場じゃないけども。

私は雲雀みたいに並盛全体を仕切っているわけでもないので大分仕事量が違う。それでも私は1人でやっているもんだから誰か褒めて欲しいくらいだ。あー草壁さんマジ欲しい。…あれ?前にも同じ事言ったような気がするな…。


炎天下の中(自転車の、日傘をセットした籠の中にいれて)移動していた所為か、お疲れのようで私の隣に背をくっ付けて寝ている愛犬-コハチ-の気持ちいい白いお腹を撫でながら、雲雀の書類整理をぼーっと見る。

手際いいな…。
雲雀の事だから信頼している草壁さんにでも任せちゃいそうなのに変なところで真面目さが発揮されてる。雑なところは…、後始末?(言ったらこれから先、雲雀の後始末係に任命されそうだから口には出さない)



「邪魔」
『なんも邪魔してない喋ってない』
「密度が高い」
『遠回しに群れるなって?』



そう言った私をちら見して、書類に目を戻す雲雀。

……。

いいじゃない!
そこまで人工密度高くないし、たかが1人と1匹増えただけなのに…!



「視線が邪魔くさい」
『あー。はいはい』







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -