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彼女、沢田はあれからもらってきた子犬にリードを付けて学校に連れてきているらしい。

らしい、というのは実際に見たわけじゃなく噂で聞いた話だからだ。それは不良の間で流れている噂であり、一般的には厳しいけど不良から守ってくれるとかなんとか。



「委員長、隣町の生徒会長から差し入れです」



隣町の報告書と一緒に僕のデスクに置かれた市販のチョコレート菓子。それ食べて程々に頑張ってね、との事です、と副委員長が言った。


(自分で届けに来なよ)


沢田がこうして差し入れをしてこれる、という事は金銭的に困ってはいないんだろう。副委員長がお茶を淹れに向かう姿を見ながら思う。


子犬をもらってきた時に忠告はとりあえずした。

只の同情で飼うのであればあの子猫と同じ道を辿ってしまうかもしれない。そうなると辛いのはお互いだ。それに沢田はこっちに帰ってきてから1人暮らしらしい。なのに子犬を飼うなんて余裕があるのか?

父親は外国で石油掘り、母親は専業主婦。儲かっている(給料が良い)んだろう。



「委員長、どうぞ」



コップに付いた水滴が書類に付いて濡れないように紙ナプキンを敷かれ、その上に透明なコップ(冷蔵庫で冷やされたお茶)を草壁が置いた。

それを手に取り、乾いた喉を潤す。冷たいお茶が喉を通っていく感覚がわかる。



「それで調査の結果なんですが特に異常はありませんでした」



提出された調査書を一通り目を通す。

大抵の男はまともに真っ直ぐ書けず、字のバランスも最悪だが副委員長の字は綺麗に読みやすく、達筆。



「引き続き調査しておいて」
「はい」



そして校内の見回りを任せて副委員長は部屋を出た。



「異常なし、ね…」



"家に居るとき変な目線を感じるんだよ…"


前に隣町との境まで巡回しに行った時に会った沢田が言っていた言葉だ。

普通なら沢田の学校の奴ら(男子黒曜生)が恨みを持って沢田の隙を狙ったなどの類いだろう、と思うがそんな事は日常茶飯事であり、僕だってそうだ。襲いかかってくる奴らを倒すくらいの力は沢田はすでに持っている。でも僕に直接言ってくるということは学生じゃない…?


……



「ストーカー…?」



声に出してみて首を振った。

考え過ぎだ。沢田にストーカーなんて。黒曜町で沢田は強いって有名な筈…、


まさかね。



嫌な予想が頭を掠めるがそんな筈はない、例えストーカーがいようと僕と同じトンファーを使って咬み殺せるから心配ない、とそう言い聞かせた。




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