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給湯室からこないだの不法侵入者、隣町の黒曜中の女子生徒が出て行ったのは俺の中で嵐が過ぎ去って行ったのと似たようなものだった。


(入った時、委員長が不法侵入者と親しげに話していて、頭の中が混乱してしまいその場から少し動けなかった…)


並中で目をあわすことすら恐れられている委員長にあんな親しげに会話出来る人物は初めて見た。委員長だってそんな人、1人はいてもおかしくはないが実際に目の当たりにするとギャップというか……、失礼だが違和感を感じてしまう。

普段1人を好む委員長を見ている俺等にとっての"普通"。



「幼なじみだったんですか。さっきの人…」



委員長の空いたコップに冷蔵庫で冷やしたお茶を注ぐ。委員長は午前中やり残した書類をテーブルの下から取り出して広げた。



「小学校が一緒だっただけさ。今は噂の生徒会長らしいね」



委員長は書類から目を離さず、ペンを動かし続けた。


隣町の"生徒会長"。

噂は数日前に耳に入った。今年の5月に転入してきた女子中学生でまだ1年生なのに、喧嘩を売ってきた相手関わらず買った喧嘩は圧倒的な力を持って必ず勝つ、と。

まるで委員長みたいな人だと思ったが、まさか繋がりがあったとは。その人が強いのも頷ける。



「彼女も委員長と同じトンファーを使うのですか?」



カリ…、


委員長の手が止まった。


嫌な汗が背中を伝う。何やら不穏なオーラが委員長から発せられていて、何か失言をしてしまったのかと思い、トンファーを取り出される前にすぐさま謝罪した。



「すいませ、」



書類から顔をあげて俺を見た委員長は、校舎の窓ガラスを割った男子に向けた時よりも明らかに目を鋭かった。

恐怖で両手の拳は汗をかいて湿っている。



「興味があるの? …沢田に」
「い、いえ!」



まるで蛇に睨まれた蛙状態。

ゴクリと生唾を飲み込み、向けられる恐ろしい視線を耐え、同時にトンファーで殴られる覚悟をした。


が、 委員長は目線を書類に戻して何もなかったかのようにまたサインをし始めた。委員長から(完全ではないが)殺気が消えたとわかると心から安堵する。委員長のトンファーは(当たり前だが)もの凄く痛く、仕事に響くから極力受けたくはない…。



「もし、沢田と戦いたいというなら」



いったん収まった殺気がまた溢れ出す。

空気が重くなって、背中に嫌な汗が流れた。



「僕が許可しないよ」



委員長の黒く光らせた鋭い目に暫くは動けなかった。

・・・、超がつく程に委員長は黒曜の生徒会長に執着心を持っているとみていい。








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