22 『雲雀、オレンジ味のパウンドケーキと、えっとこっちは…紅茶クッキー、どっちがいい?』 「どっちも」 『え、どっちもなの?』 (片方はリーゼントさんに渡そうと思ってたのに。) 雲雀に連れられて来た部屋は給湯室の中(奥)にある喫煙室だった。ただ、最近使われなくなったのか、微かに煙草の臭いがするだけ。 喫煙室といっても10畳の和室で、その部屋だけ少し高く作られている。部屋の真ん中にテーブルが置いてあって、座椅子もある。(あれ、なんか雲雀の部屋みたいだ。) とりあえずリーゼントさん用にクッキーを確保して、給湯室にあったラップで包む。ラップでごめんなさい。 給湯室で包丁借りて切ったパウンドケーキとクッキーを皿に盛って持っていくと、不機嫌オーラを纏った幼なじみがいた。 これは、やばい。 (何がって思い当たる節があり過ぎて困るくらい。) 『…、何から話した方が、いい?』 「自分で考えなよ」 怒っている?久しぶりに会った幼なじみに親近感わく事に疑問に思いつつ、言いたい事を頭の中であげていく。 約1年間音信不通だった事、手紙(最後の連絡)でいつみぃにお墓参り出来るか分からないからって桜の木を植えてもらった事、地元に帰ってきてから電話の1本くらい入れれば良かったなぁ、とか。 『…とりあえずごめんなさい、ありがとう御座いますっ』 向かい側に座ってる雲雀に深ーく頭を下げた。 下げた頭にトンファーの先でグリグリやられようが、立場上はやり返せないので黙ってやられた。身長縮んじゃう!! 「この僕が桜、わざわざ埋めたんだからね」 『…はい』 そこは"植えた"の間違いでは…? 気が済んだのかトンファーをどけてくれて、私は頭をさすった。微妙にへこんでいる気がしなくもない…。これ絶対身長縮んでいるよ!!今伸び盛りなんだからね!! 『ところでさ、雲雀』 「何」 『なんか親近感わくなぁ、て思っててさ』 「…」 大分痛みも引いてきて、じぃーーー、と雲雀を見る。 そしてそれはすぐに解決した。 『雲雀、風紀委員なんだ?』 あえてこの学校の制服じゃない事には突っ込まないでおいて、(肩に羽織るだけの上着の)腕に付いてる"風紀"の赤い腕章が目につく。 私の今(通常)のスタイルは、黒中の制服を着ているがボタンは全開。中にキャミを着て、下は私服のズボンやスカートだったり色々だけど基本は制服のスカート。 親近感がわいたのは上のスタイルが似ていたからだ。私だって色は違うが生徒会の腕章を付けているし。 「風紀委員長をね」 私も、と苦笑いしながら腕章をつまんで雲雀に見せる。 『会長なんだよ』 「黒曜中の会長って沢田だったの。へぇ」 雲雀は何か面白い事を思いついた感じな表情をした。 かなり雲雀の言い方が気になるが、もしかしたら雲雀も同じ1年なのに私と同じように先生に押し付けられたのだろうか…? 同世代は勿論、その上の代よりも雲雀は結構強い。私みたいに偶々先生に見られてて風紀委員長になって欲しいとかだったりして。 『色々大変だけどお互い頑張ろ』 「色々大変って何」 『んー、先生に委員長の役を押し付けられたとか?、痛ッッ!!!』 馬鹿じゃないの、て言われながらトンファーで殴られた。 ぐわんぐわん、するんだけど。私の頭大丈夫? |