謎は謎を呼んだ


隣で"何もなかったかのように"朝食のベーコンにかぶりついているダドリーを、視界の端に入れながらハリーはトーストをかじった。



昨日、この夏休みに出会って友達になったミリアと公園の木陰で座ってヘドウィグの救出作戦を考えていた時だった。

僕を家の外で見つけると大抵嫌な笑みをさせるダドリーが、その日も例外なくその笑みを浮かべながら公園にいる僕らを見つけて寄ってきた。そして僕といるミリアも魔法使いだと勘違いして「バケモノ」と罵り、ミリアはお前と(マグルの意味で)同じなんだと言おうとした後の事。

背後から急にあたりの温度が下がったような気がした。(思っただけで、実際下がったかなんてわかんなかったけどそう感じた。) それがミリアの異変に気がついた瞬間でもあって、けど、僕を守るように前に出たミリアの表情は至って普通だったから通り過ぎた後はわからない。

静かにダドリーに話しかける姿は僕と話しているみたいに落ち着いていた。(ちょっと冷たい感じがあったけどそれは怒ってたからだ。) ダドリーが相手のペースにのって反論するなんて今まで僕は見たことなかったから少し、いやとても面白い光景だった。

凄いやミリア!、と心の中で叫んだ後、身に覚えがある感覚がミリアから伝わってきた。僕はそれを感じとってダドリーとか関係なく一気に頭が冷える。すぐ冷静になれた。

ここじゃありえない、信じられなくてミリアに手を伸ばしたけど(怖かった)、体が拒否して僕は素直におろした。

これ程まで感じた事のない…、冷たい、怖い、これ以上感じたくなかった、思い出すだけども奇跡だと思うのに。

先ほどまで構えて警戒体制とっていたダドリーは、ミリアの目をじっと見つめながら腕を力をなくしたかように動かない。寄っていた眉は元の位置に戻っていて無表情になっていた。



「といっても今日は忠告だけ。…そうね、この事は誰にも話してはいけないわ。忘れなさい、なかった事にして貴方は遊びから真っ直ぐどこも寄らずに帰った事にするの」


うん…、とゆっくり頷いた。ダドリーが。驚いて目を丸くするとミリアがこっちに振り向いた。表情はにっこりしているけど目は笑ってはいない。黒い瞳の奥に吸い込まれそうな錯覚を起こした。


「さあ、ハリーも遅くならないうちに帰った方がいいわ。ダドリーより先に戻りなさい」
「う、ウン」


お礼を言うのも忘れてミリアとダドリーの横を通り過ぎた時、ちょっとだけダドリーの顔を見た。

様子が途中からおかしかったからだ。無表情で僕の事を見向きもしないでミリアの後ろ方を見ている。

公園を出たあたりで一気に空気が軽く感じて家まで走った。足が急に軽くなったようにも感じて、このまま箒に乗って飛んだら今までよりスピードが出るかもしれないと思ったくらいだった。





(不思議だったなあ…)


最後の一口を口に入れて咀嚼する。するとおばさんが何時もより苛々したような口調で庭の掃除をしてこいという。あれ? 今日はイメージ練習しないんだなと思っていると、おじさんやおばさんが新しいスーツや服を買いに行くやら会話が聞こえてそれどころじゃない様子だった。別に僕にとってはどうでもいことだから気にならないけど、今日はミリアと遊ぶ時間がないかもしれないと思うと憂鬱になる。


ああ、ヘドウィグ無事にここから出してあげて早く籠から出してあげたい…。


そう心の中で呟きながらさっさと空いた皿を片付けて、日差しが強くなってきている庭へと嫌々ながら向かう。



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