薬師と白百合

普段授業で使っている鍋より2まわり大きい黒い鍋を火にかけながら、どろりとした液体をレードルでゆっくりかき回す。オレンジ色の液体からボコボコと気泡が出て割れる度に中から白い煙があがった。

もう見慣れたものでも心の隅の方では、蛍光色のオレンジなんて材料から考えてもならない色なのにどうして気味悪い色になるんだろう。とマグル視点で思っていたりする。

床に座り込み(制服であるのにも関わらず)胡座をかきながら、壁掛け時計の針を見る。もうお客が来る時間を指していた。あの子の性格では時間通りに来るのはわかっているのでそろそろ来るだろうと思ってドアを見たら予想通りノックが聞こえた。どうぞ、と言って履物は入り口のマットの上で脱いでね、と入ってきた子に注意する。



「お邪魔するわ。へぇー、ここが莢佳の部屋なのね。1人部屋なの?」
「1人の方が落ち着くよ」


赤茶色の長い髪をふわっとさせたエバンズが鍋を挟んで(ちゃんとスカートを抑えながら足を曲げて)座った。そして眉寄せて私のスカートを見る。エバンズはいい子だから言われることはわかっているので、レードルを持っていない左手でスカートの胡座をかいてできる真ん中のくぼみあたりを抑えた。


「もうちょっとで出来るから待ってて」
「…スカート履いてるのよ」
「大丈夫。パンツの上に黒いやつ履いてるから」
「そういう問題じゃないわ」


やっぱり言われた。
私は話を切るように「小瓶、小瓶」と立ち上がる。戸棚から手の中に収まるくらいに小さな小瓶を数個取り出して、ついでに窓際の花瓶から花を抜き取ってもとの位置に(胡座で)座る。


「あら?私以外にも使う人がいるの?」
「全く…、エバンズとスネイプしかこの薬の効果知らないのに」


独り言のようにぶつぶつ言いながら花弁だけをそのまま鍋の上で細かくちぎって入れ、茎の部分も細かくナイフで切って入れていく。

エバンズは莢佳の話を聞いて、困ったように頬を人差し指でかいた後ぽつりと謝罪の言葉をこぼした。


「だって、あの、私、生理で辛いって話したことがあったわよね…?」
「あったね」
「それで腰に塗ったら幾らか楽になるって教えてくれたでしょ…?」


頷きながらレードルでさっき入れた仕上げの材料を溶かすようにかき混ぜる。自分で聞きながらも、何故薬が欲しいと言われる人が急に増えたのか、何故薬を秘密で作っているのに知っているのかなんとなくだけどわかっていた。


「私の予想してたより凄く効いたから、思わず…喋ってしまったの…」
「まあ、エバンズがこの薬で楽になったのならそれは嬉しいことだよ。スネイプは?手首の捻挫治りそう?」


苦笑いで言葉の裏に大丈夫だと言えば、エバンズは安心したように笑って、だいぶ良くなったわと答えた。


「じゃあ今回は2つ渡すね、このまま悪化しなければこの2つで完治するはずだから。で、後2つ渡すからそれはそのままスネイプに渡しておいて」


小瓶のコルクを抜いてそこにレードルですくったオレンジ色の液体を丁寧にこぼさないように注ぎいれる。するとふわっとあたりに花の香りが漂った。自然と莢佳の頬が緩む。


「いい香りね…、なんだか落ち着くわ」


鍋の前にいたエバンズも胸両手をあてて微笑んでいる。


「ところで、セブルスに渡すのはいいけれどそれをセブルスはどうするのか知っているのかしら?」
「うん。スリザリンにも必要な人がいるからね」
「まあ! スリザリンにも?!」


スリザリンが認める程貴方凄いのよ! スリザリンが褒めるなんて珍しいわ! とエバンズが興奮して赤茶色の髪を大きく揺らした。


「たまたま似たような性格の人達が集まっただけであっていい人達だよスリザリンも。ただ、…ちょっと素直じゃないというか、ね?」


苦笑いでエバンズに言えば、すぐ思い浮かぶのはレギュラスやベラ。それにスネイプ。

エバンズも苦笑いで返してくれた。
コルクをはめて小瓶4つ渡すと、それはエバンズのスカートのポケットに入れられた。

「お返しは何がいいかしら?」
「なんでもいいよ」
「知ってるでしょ?なんでもいいっていうのが一番困ること」


プクッと頬を膨らませたエバンズを私は密かに可愛いと思った。スネイプはこんな可愛い子に治してもらえるなんて嬉しいだろうね。惚れるのも無理ないと思うしそれに幼馴染みとかおいしい。


「薬のこと、バラした罰ってやつだね」
「う、…わかったわ」


笑顔でお礼を言うと、今一番キラキラしてるわよ、とつっこまれた。だって何くれるのか楽しみなんだもの、仕方ないじゃないか。










 
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