だって私たち、

「やあ、今日も美しいねリリー!」
「やめて頂戴、それ」


朝、大広間のグリフィンドールの席で離れてても聞こえてくる会話にため息をつきそうになった。朝から煩い静かに出来ないの? 頬杖つきながら右手のフォークは口元に行くことはないままサラダをグサグサと刺す。


「おはよう。眉間に皺が寄ってるけれど」
「おはようリーマス。私は至って普通よ」
「トマトぐしゃぐしゃになってる」
「トマトソース美味しそうじゃない?」
「潰したってソースにはならないから。行儀が悪いよ莢佳」


皺が更に寄る。視界の端でリーマスが向かい側に腰を降ろしたのがわかった。早くあっち行けってば。私はフォークを置いて熱々なカボチャスープに手をのばしてスプーンでかき回して飲みやすいように少し冷ます。リーマスはくすくす笑ってるんだろうな。


「ああ、莢佳の機嫌が治ったら行くよ」
「機嫌良くなった。どうぞ行って下さい」
「なんだ今日も拗ねてんのか?」
「……」


どいつもこいつも…!

かき回すスピードが自然と上がってちょっと淵からスープが飛び出た。背後から聞こえてきた声はブラックで、彼もあっち行けばいいのにわざわざ私の隣に腰かけた。なんで。いつもこのメンバーは長テーブルん真ん中のところ座るのに今日限っては出入り口に近いところに座る。つまり私が今座ってる場所あたり。


「ミスターブラック、おはよう」
「ブラックじゃねえ」
「じゃあ誰」
「やめろって言ったはずだ」
「知らん」
「口悪いな」


…あんたら私の保護者かッ!!

と、思わず口から出そうになるがぬるめのスープを口に流し込んで、出かかった言葉と一緒に飲み込んだ。口が悪いって何?! 初めて言われたけど! 知らんって口悪いの?! 確かにここの女子はみんなオホホなのは認めよう、特にスリザリンはね。ああ今日もカボチャスープ美味しいこれ大好き。ジュースは個人的に無理、あんな甘ったるいジュースがあってたまるか。果物の100%果汁は
好き。

リーマスとブラック(こいつの名前が思い出せなかったりしたりする。…下の名前なんだったっけな)はそれぞれ朝食に手を伸ばし始める。リーマス完璧立ち去ろうとは思ってないよね居座る気満々だよねそれ。


「おはようシリウス、リーマス、それに珍しいね莢佳」
「この人たちを早く連れていってくれるかしらポッター」


さっきまでエバンズに話しかけていたポッターが後ろにペティグリューを連れてやってきた。悪戯仕掛け人リーダーとも言える彼が来ればこの2人をいつもの席に連れて行ってくれると思った。が。


「リーマス、どうしていつもリリーは綺麗で美しいんだろう」
「僕は普通に見えるけどね」


あろうことかリーマスの隣に座った。ペティグリューは私の隣にそろそろと腰を降ろした。今日は最悪だ厄日だ何が楽しくて悪戯仕掛け人達に囲まれて朝食を取らなきゃいけないの? 落ち着いて朝食を食べる事すら出来ないしシリウスが隣にいるからか背中に突き刺さる無数の視線を感じる。…今日は背後に気をつけよう。


「莢佳」
「何?」


ふいにポッターに呼ばれると。ポッターが自分の眉間指を指して笑った。私は訳がわからず首を傾げる。


「眉間が寄ってて怖いよ」
「!、余計なお世話…!」


ついに耐えきれなくなった私は大きな音を立てて席を立った。もう色々といっぱいだ。静かに食事をしたい私には無理耐え切れない。今日はきっと昼前にはお腹空くと思うから部屋にあるおやつ持って行かないと。

自分で使った食器を綺麗に纏めて立ち去る前にポッターに言ってやった。


「眉間なんか寄ってない! デリカシーない人はモテないんだから!」


朝からついてない。信じらんない。このイライラどこに向ければいいの。

ぶつぶつ呟きながら大股で立ち去る私の後ろで微かに笑い声が聞こえると、更に眉間にシワが寄ったが先程ポッターに指摘された言葉が過ぎって眉間を親指と人差し指で挟んだ。いけない、また言われる。



「今日は随分攻めたね」
「だって反応が面白いんだ」
「莢佳怒ってたけど…」
「気にすんなピーター。早く飯食って教室行くぞ」




…それにしてもいつの間にか名前で呼ばれてたな。別にファミリーネームで呼ぼうが私はどっちでもいいけどちょっと馴れ馴れしい、と思う。





だって私たち、
まだ"友達"すら始まってない。




 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -