**
あれはいつだっただろうか。
数年前に何回か見た、不思議な夢。
当時は鮮明に覚えていたのに今ではあやふやにしか思い出せないけど、とても楽しかったような気がする。
まず、私は汽車の中から豊かな外の自然風景を眺めているところから始まる。
そこは電車のように窓側に座席が並んでいるわけではなく、小部屋になっていて向かい合うように座れるつくりになっている。よくテレビで見る旅行列車みたいな感じ。
そしてある風景にさしかかると、小部屋と通路を隔てているドアをノックする音が聞こえるんだ。
―コンコン
(ほら聞こえた)
私は振り返ってどうぞ、と返す。
入ってくるのは男の子。
ここから霧がかかったようにわからなくなる。
男の子は私の向かい側に腰を下ろして、私に話しかけてきた。
私は最初男の子の言ってることがわからなくて首を傾げていたんだけど、男の子が何かした途端に理解出来るようになって2人で楽しく話していた と思う。
その間汽車は停まることなくずっと走り続けていたけど、ようやく徐々に速度が落ちていく。目的地に着くみたいだった。
(その間一回も駅に着かないのは急行なのかもしれない)
いつの間にか私と男の子は同じローブを纏っていて、汽車が停まると男の子は立ち上がった。
「さあ、行こうか!」
もやがかかった男の子の顔を見て、私は頷いて差し出された手を握る。
そして男の子が開けてくれた通路に続くドアを通った。
―そこで夢は途切れる。
(こえも、おもいだせないんだ)
(きみは)
(あなたは)
((だれ?))
prev next