貰い物 | ナノ





例えば、クラス替えをして、面識のない子達と話したとする

その時彼氏がいるかときかれて私が恋人の名前を挙げようものなら、羨望の眼差しを向けられるか妬ましいと不服そうに嫌味のこもった眼差しを向けられるか…そのニ択しかないような人が私の彼氏だ

だけど、本当は彼女達は誤解…いや、騙されているのだ

優しい優しいともっぱら有名なあいつは、実際はそんなんじゃない

むしろ

真っ黒ドSなのだから












『皆、騙されてる…』



目の前の真っ黒ドSを見ながら呟く



「は?」

『猫かぶり』

「はっ、騙される方が悪いんだよ」

『詐欺師か』



目の前で人を小馬鹿にするような視線を向けてくる綱吉にイラッとする

放課後の教室でひとつの席に向かい合ってこんなふうに過ごすのが日課になっているのだけど、皆がいるときとの態度の違いが本当に凄い

はぁと溜め息をつくと綱吉が首を軽く傾げた



「本当なまえってズバズバものを言うよな」

『じゃなきゃ綱吉となんてやってけないでしょ』

「そうかもね」



綱吉のことだから黒く切り返してくるかと思ったら同意するものだからついつい驚いて見返してしまった



『…変なものでも食べた?』

「どういう意味かな?」



黒い笑顔の綱吉

これでこそ綱吉だ

と、その時ガラリと音がなって扉が開いた



「ツナく〜ん」



猫なで声で入ってきた女

うわあ…


彼女はチラリと私を見るとすぐに視線を綱吉に戻してしまう



「急にごめんねぇ?」

「どうかした?」



彼女は確か隣の隣のクラス…?だっけ?の人だったと思う

委員会が一緒になったとかで、最近やたらと綱吉にちょっかい出してるらしい

ぶっちゃけ綱吉はああいう部類の女は好きじゃないからどうもならないと思うけど、こうも私を無視して、彼氏に色目を使われるといい気はしない



「ちょっと今から話せないかなぁ?」



え、私が綱吉と話してたんだけど…



「委員会の話?急用?」



さっきまでとはガラリと態度を変える綱吉は人好きのする笑みを浮かべている

ああ苛々する



「ううん。あたしがツナくんに大事な話があってぇ」



そう言ってからわざとらしく私を見る

さっきまで無視してたくせに、私が邪魔だから出てけって?

ふざけんなよコノヤロー



『…いいよ綱吉。行ってくれば?


私、今日は帰ってるから』



なんだか馬鹿馬鹿しくなって彼女ににっこり(勿論嫌味をこめて)笑いかけてからさっさと教室を後にした

何を思ったのかしらないけど、彼女はニヤリと私にだけ見えるように笑っていた

一人で歩いているとなんだかもの寂しいものだ

いつもは綱吉と一緒に馬鹿みたいに騒いで帰ってたから余計寂しいのかもしれない

まっすぐ家に帰る気も湧かなくて、自然と足は家とは違う方向に向いていた

道を歩きながら、私は後悔していた

何で私はみすみす自分の彼氏に告白させているんだろう

後からこんなに気にするくらいなら、見栄なんてはらずに綱吉と一緒に帰ってくればよかった

だって、綱吉がもし、あの娘と…

あああもうもやもやする!

はあと大きく息を吐いた時



「なまえー!」



突然聞こえた声にびくっと肩が跳ねた振り向くとそこにいたのは猛ダッシュの綱吉



『つ、綱吉?え?何でいるの?』



目の前まで走ってくると荒く呼吸している

どんだけ走ったんだ



「何でって…一緒に帰ろうと思って。
つうか何でこんなとこにいんだよ?
追い付こうと思って走ってもなまえがいないから一回家まで行ったのに、まだ帰ってないって言うから違う方を探してみたらこんなとこにいるし…。
こんな時間にどこに行くつもりだよ、この馬鹿」



ビシッと頭にチョップを落とされた



『ちょ、痛いんですけど!
フツー彼女にこんなことする!?』

「それはこっちのセリフだ!!」



凄い剣幕で怒鳴られて、またびくっとしてしまった

あれ?何で私が怒られてんの?

叩かれたの私なのに!



「意味わかんないって顔してる」



私の顔を指して綱吉は眉を寄せた

そんなこと言われても、わからないものはわからないのだからしょうがない

わざとらしい溜め息をついて綱吉は続けた「フツー彼女だったら、彼氏が告白されんのわかってて他の女と二人きりにしなくない?」

『だって、』

「俺は断ると思った?
それとも結果なんてどうでも良かった?」



どうでもよくなんてない

あんなもやもやしてたのに



『…………んだもん』

「え?」

『嫌だったんだもん!』



突然大声をあげたからか綱吉が後ずさった



『綱吉が他の女と一緒にいると苛々するんだもん!
別に、綱吉はああいうのタイプじゃないと思うし、浮気とかはしないと思うけど、だからって私が綱吉のタイプかっていうとそうでもないかなとか思うし!
あんなふうに見え見えに言い寄られても、綱吉は紳士で温厚な綱吉を演じるから、演技ってわかってても私は心中穏やかじゃないの!
でも彼女は私だし、余裕ないみたいに思われんのも癪だし…、
見てても苛々するから先帰ったのに、余計もやもやして……もうどうしろっていうの!?』



悲しいというより悔しくて視界がぼやけた



『綱吉はあんまり好きとか言ってくんないし、私のどこが好きなのかもわかんないし…っ』

「ちょ、『大体、綱吉が悪いんだよ!』…お、俺?」

『綱吉、私には意地悪なんだもんっ』



とうとう涙が流れた



「なまえ…」

『不安に、なる、じゃん…っ』

「それは、さ…」



歯切れの悪い綱吉は目を泳がせた

「なまえが特別だからだよ」

『はい?』

「…だってさ、俺かっこいいじゃん」

『自分で言うなよ』

「いいから聞けって。
俺、モテるけどさ、それって本当の俺じゃないじゃん。
皆が好きになるのは……演技してる好青年の俺なんだよ。
大体俺に言い寄る女は素の俺に幻滅するんだ。
こんなの俺じゃないとか言って。こっちが本当の俺なのに。
……なまえだけ、だったんだよ」

『何が…?』



はじめてみるような情けない微笑みをのせて綱吉は言った



「素の俺を知ってても、好きだって言ってくれたの。
だから、なまえの前では気を使わないでいられるって思ったらつい意地悪してたんだ。…ごめんな」

『そう、なの?』

「俺みたいな性格悪い男好きになるの、なまえくらいだって。
現に、さっきも告白されたけど素の俺見せたら秒速で手のひら返したし」

『…知らなかった』

「言ってなかったし、本当は言いたくなかったんだけど、俺だって必死なんだよ」

『必死?』

「そりゃそうだろ。好きな娘に泣かれたら焦る」

『焦ってたんだ。ふふ、ダサい』

「うるせー」

『でも、好きだよ』

「なっ」



不意打ちが効いたのか綱吉が頬を染めた



『情けなーい』

「うるせえ。…お前にだけだ、こんなの」



そう言ってそっぽ向く綱吉が可愛かった
現金だけど、さっきまでのもやもやは、もう見る影もなくなっていた



君しかしらない




az様1周年おめでとう御座います!!
そしてありがとう御座います!!^^

腹黒Sな綱吉はもうたまりませんっ!(^O^)←

2011,03,14


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