02
お邪魔します、と家に上がったクシナさんの後にぴったりとくっついていく女の子の姿は、まるで金魚のなんたらのようだった。
居間に入る前に無理やりクシナさんに引き剥がされた女の子は襖の前に突っ立っている。話が済むまでそこで待っている気だろうか。母さん達の話は長いのに。
ぴったりくっついていたのを、(女の子は何やらクシナさんに耳元で囁かれながら)引き離されて泣き出すんじゃないかと思ったが、鼻をすする音は聞こえてこない。
それに表情は長い前髪の所為で良くわからない。
「そこにいてもクシナさんは来ないぞ。…縁側に来ないか?」
サスケをあやしながら声をかける。女の子は返事もしなければ体ひとつも動かさない。聞こえていないのか、もう一度声をかけてみると肩が僅かにはねたが反応はそれだけ。
連れて行こうにも両手が塞がっていて出来そうにないので、すぐそこの角を曲がった先に縁側が見えるからそこにいる、と言ってその場を後にした。